『痛いの』の処理方法
あれは私が夫と2歳になる子どもの3人で新しい町に引っ越してきたときの話だ。
その日は町内会の会議があり、ゴミの出し方についてのお知らせがあった。
「最近、ゴミの出し方についてマナーを守っていただけない方がいるようです」
「みんなの町なのだからルールは守ってほしいよな」
「特に『痛いの』の処分方法を把握されていない方がいるようです」
「『痛いの』なんて燃えるゴミなんじゃないの?」
「はい、燃えるゴミです。小さい袋に入れて『痛いの』が漏れないように口をしっかり縛って出してくれればいいだけです」
「風で誰かのところにとんでいっては大変ですからね」
「そういえばこの前、道に『痛いの』が転がっていたっけな」
話を聞いていて私はギクリとした。
先日、子どもとお散歩をしていたとき、子どもが転んで膝を擦りむき『痛いの痛いのとんでいけ』をしたことを思い出したのだ。
前に住んでいた地域では『痛いの』は分別していなかったし、小さいものなら土にかえるから大丈夫だと言われていた。
そう考えると庭で遊んでいたときも何度かとばしてしまったなぁ、これから気を付けなくては。
「ちなみに『痒いの』は燃えないゴミで統一をお願いします」
組長さんがそこまで言うと入り口の扉がカララと開きお隣の川口さんが入ってきた。
「誰ですか!?最近『痛いの』を不法投棄する人は!」
川口さんは全身包帯で、袋に見覚えのある『痛いの』を詰めていた。