浮気現場
「あら」
「マ、マリア」
「ごめんなさいね。お楽しみのところ」
隠しもせずこちらに向けてくる気持ちの悪い視線にもずいぶん慣れたけど、気分がいいものではない。そんな視線を避けるようにパーティー会場を抜け出し、少し離れた休憩室を避けて、外につながる廊下から、うっかり足を踏み入れてしまった中庭の隅のガゼボ。
そこにはベンチに座り、体を寄せあって恋人つなぎで指を絡ませている男女のカップル。男性の腕にしがみつき、たわわな胸を男性の腕に押し当てている令嬢は、その熱っぽく濡れた瞳で相手の唇を見つめながら顔を寄せていた。そこにタイミング悪く現れたマリア。男性はマリアを見てギョッとした。マリアはもちろんその男性を知っている。なぜなら婚約者だから。
「マリア、あの」
イーサンは慌てて相手の令嬢から体を離したが、いまさらそんなことをしてどうなる。
「いいのよ、気にしないでイーサン。でも、場所は選んでほしいわ」
「イヤ、その」
「今回は私だったからいいけど、ほかの方に見られたりでもしたら大変な醜聞になるのよ」
「マリア?」
マリアはそう言ってチラッと相手の令嬢を見た。
豊満で魅力的な体に真っ赤なドレスは刺激的。なるほど、令嬢は自分の美しさをよくわかっているし、上手に使うことができるようだ。
それにとても気が強い。悪びれる様子も恥ずかしがる様子もなくマリアを見て嗤う目が、十分にそれを物語っている。
「火遊びはほどほどにね」
真っ青な顔をしたイーサンとは反対に、マリアは表情のない顔でそう言ってその場を後にした。
「嘘だろ……」
いくらなんでも、こんな所を見られるなんて。
「まずい、今回は本当にまずい」
読んでくださりありがとうございます。