教会の仕事って、こんなことまでするのですか?
「まずどういう作業をするか説明しよう」
ディアス様は網のトレーの上に薄く切られた人参を並べていった。
そして大きな道具の中に網のトレーをいくつか入れて蓋を閉じた。
「次にこの装置を使う。この装置に炎や熱の魔法を使い、足下のペダルを踏む。すると庫内に置いた野菜などが熱風によって乾燥する」
ディアス様はトレーを庫内に入れ、飛び出した筒状のパーツに手を入れる。筒の中には取っ手のようなでっぱりがあった。そして写し取った私の魔法を使う。するとその取っ手から熱が空気に伝わるらしい。さらに足元のペダルを踏むと熱風が庫内に吹き込むようだ。構造的には髪を乾かすときに使う温熱扇風機の魔道具に似ている。
しばらく熱風を送り続けていると、網の上の人参は水分が飛び、小さくなっていた。ディアス様は網を取り出し、水分のなくなった人参の干物をひとつとり、私の手に置く。
「このように野菜を乾かし、保存食のための乾燥野菜を作っていく。使用用途は主にスープだ」
「乾燥野菜の、スープ……」
「ああ。この乾燥野菜は辺境でも教会でも重宝されている。教会ではこの乾燥野菜のスープを始め、災害時用の非常食を作っている」
ディアス様が「災害時用非常食」といってハッと思い出す。
――二年に一回やる非常食の交換のとき、聖女印の堅焼き塩ビスケットと一緒に出される乾燥野菜を使ったスープってこれか!
幸い、ニューベリーの領地が災害に見舞われることはなく、非常食が活躍することがない。
しかし不作や災害時のために、各農村でも非常食を常備させている。
両親も、使用人たちも困らないよう、屋敷に多く非常食を常備している。
お父様の話では教会から購入しているという話だったが、こういう風に作っていたのか……
「教会の収入源のひとつだ。今回は辺境用に作る」
「もしかしてセレナ様とディアス様が辺境にいらしたのは、塩作りと非常食を作るためだったのですか?」
ディアス様は「そうだ」と肯く。
てっきり聖女様というのは祈りを捧げたり慰問活動をしているとばかり思っていた。こういった保存食作りや魔獣退治をしていたというのは目から鱗だ。
「それで、この乾燥野菜を作ることが私の訓練、ですか?」
「その通り」
ディアス様は指を二本立ててみせた。
「安定して魔法を出力できるようにすること、そして体力をつけること。今回はこれが目的だ」
なるほど。体調や精神状態にかかわらず、魔法を安定して出力できることは大事だ。魔獣と戦っているときに腹が痛い、熱がある、疲れたなんて言い訳はできない。そんなことをしている間に魔獣に返り討ちに遭うだろう。
「これは毎日してもらう。基礎の基礎だ。他にも耐熱・耐冷の上限を上げる訓練をするが、今日はこれだけだ」
「……」
カットされた野菜が大量にある。ディアス様は網を作業台に並べ、野菜を綺麗に並べた。
「数は多い。いくらでも練習できるぞ」
その量の多さに、私は気合いを入れた。拳を作り、例の装置の前に立つ。
深呼吸して魔法を発動させようとしたちょうどその時、作業室の扉が開かれた。
「兄上、お持ちしました!」
皮むきをしていたはずのオズウィン様が現れたのだ。オズウィン様の登場で集中が解けてしまい、オズウィン様のほうを見る。
オズウィン様の手にはボウルがあり、大量の薄切り人参が入れられていた。
どうやらオズウィン様が持ってきた薄切り人参も私の訓練用らしい。
「おぅ……」
「次の分ができたら持ってくる。頑張ってくれ、キャロル嬢!」
こんもりとした明るい色の小山は、まだ追加で増えるらしい。
私はその山盛りの人参に思わず声をもらすのだった。
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王国でなぜ金的への攻撃が罰せられるかわかります!




