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どんなに冷静な人でもそれを崩されることはあるようです。

オズウィン様の発言の容赦なさ……いや、自分の手札を効率的に切る様が人道的なものを排しているように思えて若干引いてしまう。

引きつってしまった顔をこねて戻していると、オズウィン様はコキコキと首を動かして私に視線を向けてきた。

「さて、気を失っているし今のうちにできることをしてしまおうか」

「お手伝いいたします」

気を取り直して姿勢を正す。

オズウィン様は人なつこい笑顔を浮かべ、ツールバッグに手を伸ばした。


「ありがとう。筋をくっつける前に『魔法封じ』してしまおう」

改めて巨大化直前に取り付けようとしていた手枷を取り出すオズウィン様。この手枷は魔法の力を封じる「魔封の枷」らしい。

手枷を気絶するナイジェル様に取り付ける。

ナイジェル様は痛みからかすかにうめき声を上げた。

「安静にしていれば問題ない程度くっつけておこう」

要するに抵抗するようならすぐに切れる程度の接着しかしないぞ、言うことか。

中途半端にくっついたであろう筋を想像するとぞわぞわする。無意識に足の甲で反対の脚の腱を摩っていた。


オズウィン様は筋の接着を済ませ、ナイジェル様の体を担ぎ上げる。あの激しい戦いのあとで細身とはいえ大の男を軽々と持ち上げる体力に驚嘆する。

私の視線に何か勘違いしたらしく、オズウィン様は頬をかいた。

「俺の魔法は生物にしか効かないんだ。しかも直接手で触れないといけないから、キャロル嬢ほど使い勝手が良くないんだ」

はにかむオズウィン様に、なんと答えればいいかわからない。

武器屋で「ガチガチに防具で固めた人間が苦手」だと言っていた理由もわかった。生物であれば有効なのだ。強力すぎる。

どんな巨大な魔獣でも触れることさえできれば勝利が確定するのだ。


――辺境ってやっぱり戦闘民族ばっかりなんだ……


辺境には人間兵器のような人々ばかりだから、ニューベリーの領地にはたまにしか魔獣が出ないのだろう。思わず遠い目になった。


「さて、イザベラ・ペッパーデーにも『魔封』をしてしまおう」

私が氷の檻に閉じ込めた、イザベラ様の元へ向かう。

イザベラ様は自分の兄が気絶したままオズウィン様に担がれていることで状況を理解したらしい。

力なく顔を伏せていた。その傾けられた顔が妙に色気がある。

「オズウィン様、気をつけてください」

「距離はとっておこう」

オズウィン様は十分な距離をとり、はっきりとした声でイザベラ様に状況を告げた。

「イザベラ・ペッパーデー。ナイジェル・ペッパーデーは捕縛した。抵抗しなければ攻撃等はしない」

イザベラ様は「捕縛」という言葉に辛そうな表情をしている。

家が罪に問われるのだ。暗い顔にもなる。

「抵抗も逃亡もいたしません。どうぞ、裁きの場へお連れください……」

イザベラ様はか細い声でうなだれる。そんな力ない憐れな姿は儚く美しいものだから、ここにいるのが頭辺境のオズウィン様じゃなかったらほだされていたかもしれない。


「では『魔封の枷』をかけさせてもらう」

「魔封の枷」と聞き、顔を上げたイザベラ様の顔は真っ青になっていた。

「そっ、それだけは……!」

イザベラ様の魔法を考えれば、魔法を封じるのは当然である。ナイジェル様より連行途中で発動されてまずいことになるのはイザベラ様だ。

氷の檻の中で逃げ回るイザベラ様は抵抗をしていると言うより枷そのものに恐怖しているように見える。

「いやっ! やめて! お願い、それだけは……! 逃げたりしません! 抵抗もしません! だから枷だけは……!」

私は氷の檻に手を触れ、熱を加えて水に戻した。当然ながらイザベラ様は全身を濡らすことになる。

「きゃっ!」

二の腕を掴み、イザベラ様の濡れた服を凍らせて体の自由を奪う。酷いことをしていると思うが、仕方が無い。

「すまない。こうしておかねば示しが付かないんだ」

「いやあぁっ!」

身動きが取れ無いにもかかわらず、必死に抵抗する。もう無意味としか言いようが無い抵抗をするイザベラ様にあきれつつ、保った。

オズウィン様が枷を付けたと同時に着衣を乾かして風邪を引かないように配慮する。

熱くなりすぎない程度に乾かしたつもりだが、周囲の水分も飛ばしたようで、湯気が生じて一瞬視界が遮られた。

しまった、うっかり……そう思ったのもつかの間だった。

「……?」

掴んだ二の腕に違和感があった。先程までやわく、私より細い腕を掴んでいたはずだった。それが今、私の手は細いが筋肉の堅さを感じ取っている。

「え?」

湯気が消えると、そこには男性がいた。

髪型と服装はイザベラ様だが、細身ながら肩幅のある彼は――

「いやぁ……ッ」

ハラハラと涙をこぼし、顔を覆っている。声はどう聞いても声変わりを経験した男のそれである。

「うっ、うぅ……この姿、晒したくなかった……」

「い、イザベラ、様……?」

「……え、おと、こ?」

私とオズウィン様は互いに顔を見合わせ、そしてイザベラ様と思われる男性を見る……それを数度繰り返して口をつぐんだ。


ドレスを着た男が泣き崩れている状況に、私たちは思考が迷走したのは言うまでもない。


イザベラの正体、初期から気づいてくださっていたらしいTttaさん、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯

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