目印
「ねぇ、私の体の色変えられる?」
前を歩く黒猫が振り返り俺を見た。
「え? ああ、さっき少し回復したからできると思うよ」
「お願い」
「何色?」
「何でもいいわ」
「じゃあこれで」
俺は指の準備をする。
「カットイン」
パチンッ
黒猫は手を持ち上げて自分の姿を確認する。
「銀色?」
「うん。お前の髪の色」
「あ! あんな醜い」
「そーかなー」
「そうよ」
「似合ってるよ!」
美月が言う。
黒猫はキョトン顔で美月を見たあと俺に言う。
「似合ってるみたい」
「それはよかった」
この二人見てるの面白いな。
森を抜けたとき美月が驚いた声を出す。
「わーー! 綺麗!」
水色にピンクのグラデーションがかかった空はいつのまにか夜空に変わっていた。
星の軌跡が大空に描かれている。
「すげーー!」
一眼レフでISOとシャッタースピードと絞り値を設定すると撮れるあの美しい星景写真みたいだ。
星降る光景に目を奪われる。
夜空を見上げながら歩いていると黒猫の声がした。
「着いたわ」
看板が出てるけど読めない。
「アンタウン。小さな村ね」
「アンタウン」
暗くてあまり見えないが、看板はかわいらしい花で囲まれていて緊張が少し和らぐ。
「宿屋を探しましょ。ベッドの看板が目印よ」