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正体
「がるるるっ」
黒いフードの下から垂れた顎が見える。
「わん!」
「あっぶね」
噛みつかれるところだった。
腕っぷしじゃ勝てないし、想像力も足りない。どうする、どうする。
白い毛、垂れた顎、わん!
ということは……。
俺は一縷の望みをかけて追っ手をわしゃわしゃと撫でた。
「よーしよしよし」
「わふ」
「お〜よーしよしよし」
「くーん」
追っ手は急激に態度を変えてもっとやってと顎を突き出してくる。
「よしよしよしよしよし」
「へっへっへ」
追っ手はここもというように俺の手に顔を擦り付ける。
「お! つぎはここな〜!」
「わん!」
「よーしよし」
追っ手はもっともっとと自らフードを取って耳の後ろを示す。
「「あ」」
フードを取ったことで正気に戻ったのか追っ手が慌てて立ち上がる。
「うわあ」
転がる俺。
「今日はこのぐらいにしといてやる! 覚えとけよ!!」
追っ手はドスのきいた声を残し、去っていった。
「助かった〜〜」
俺はその場に倒れ込む。
「ふーー」
目を閉じるとさっき見た黒マントの追っ手の正体が浮かんだ。
「ブルドックの、獣人……」