代償
「教えてくれ。代償ってなんだ」
俺と美月は黒猫の言葉を待つ。
「映画でも小説でもよくあるでしょ?」
黒猫は舌を出し右の前足を舐める。
「魔法が使える私でも使っちゃいけない魔法がある」
俺は黒猫の言葉から推測する。
「……人を生き返らせる魔法?」
「そう」
風が吹く。
「人を生き返らせることは禁忌」
黒猫が美月を見る。
「だから生き返った者は命を狙われる」
木々がざわめく。
「生き返った事実をなかったことにするために」
「そうか」
俺は黒猫の言葉を受け止める。
風が落ち着く。
「禁忌を犯してくれたお前は大丈夫なのか?」
「私は大丈夫」
「よかっ」
「よかった!」
俺が言い終わる前に美月が勢いよく黒猫に抱きつく。
「あんたすぐ抱きつくのどうにかしなさいよ!」
「あっごめん。苦手だった?」
「苦手っていうか、慣れてない」
「そっか」
美月は黒猫を抱き上げ、えへへと笑顔を浮かべながら撫でる。
「みゃ〜〜っじゃない!」
「あははっ! 気持ちよかった? うりゃ〜!」
「みゃ〜〜っやめなさーい!!」
「猫ちゃん、助けてくれてありがとう」
「別に。私じゃなくてこいつに言ったら」
「えへへ。空大、ありがとう」
「美月。俺の方こそありがとう」
命を狙われるって言われて不安じゃないわけないだろうに。俺は美月が抱っこする黒猫ごと正面から美月を抱きしめた。
「あ! ダメダメ! 男はダメ!」
なんだなんだ。急に黒猫が暴れ出し、美月の腕から抜け出そうとする。
「きゃっ」
黒猫は美月の腕を蹴り勢いよくジャンプした。
落ちてきたところを俺がキャッチする。
「おっと」
「あ」
ぼわんっ