なくしもの
かくして俺たちはいなくなったソラナを見つけ出し、異世界で3人仲良く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
……ん?
違和感とともに、茂みを両手でかき分けた感覚が手に戻る。
「あーーーーーー!!」
「な、なに!?」
「どうしたの空大」
「めでたし、めでたし。っじゃねーよ!」
「はあ?」
「めでたし?」
「ああそうだよ! ソラナのことはよかったよ! でもさ、大事なこと忘れてないか! 忘れてるよ!」
「一人で慌ててどうしたのよ」
「俺、思い出したんだ」
「何を?」
「美月にはまだ言えない」
俺は美月から顔をそらす。
「え、なんで?」
「なんでも!」
「じゃあ、私に言ってみなさいよ」
「ごにょごにょごにょ」
「え? こんぐらいの箱無くした?」
「ばっか! 声大きい!」
「手のひらに収まるくらいの箱?」
「おーいおいおい。美月さんに聞こえてるじゃないのさ!! どーしてくれんだ!」
俺は泣きそうになりながらソラナに詰め寄る。
「ごめん、ごめん」
「何で私に言えないの?」
「え!? そ、それは」
うう、美月が俺を見つめてくる。かわいい。その首傾げてる感じかわいい。
「コホン。俺、美月に伝えたいことがあるんだ」
「なあに?」
「んーー。今すぐに伝えたいんだけど今じゃないっていうか、こうパカっとやって」
「ああ!」
「あーーバレてもいいような今はまだバレたくないような」
「お財布?」
「は?」
「こう、パカっと、がま口的な?」
「美月さん」
「美月」
「「かわいい」」
おいソラナにやけて顔溶けそうだぞ。まあ、人のこと言える俺ではない。
「え、え」
「もーー美月さんのこういうとこ大好き」
「そうそう、空大が落としたのはがま口だよ」
ソラナは尻尾を真上にピンと立てている。
「てかなんでソラナはわかんだよ」
「映画に出てくる定番だもん。プロポ」
「ストーーップ!! それはさすがに、な」
「はいはい」
「じゃあ、そのなくしものを見つけたらめでたし?」
「おっと、美月さんそうくる?」
「違うの?」
「違うでしょ。だってここ異世界だよ」
「あ」
「とりあえず、なくしもの見つけて、もといた人間界、っていうのか? その世界に戻らないと」
「そうだね。そのときはソラナも」
「うん! 一緒についてく!」
「よしっ! そうと決まればとりあえず寝よう」
「そうだね、月や星で明るいとはいえ夜じゃ見つけにくいもんね」
「ああ」
「りょーかい!」
そうして俺たちは102号室へ戻り
「「「おやすみーー」」」
そっこー寝た。




