そのまま
ぼわんっ
「うお!」
「ひゃあ」
「みゃ〜〜」
ソラナは猫の姿に戻った。
ついでに色も戻った。
黒猫の姿で前足をぐーっと伸ばす。
「ふーー。やっと戻った」
「なんか黒猫姿久しぶりだな」
「あ、色変えてくれる?」
「なんで?」
「え、だって不吉だから」
「それはさっきへし折った気がするけど」
「あんなもんで変わるとは到底思えないんだけど」
「そうかもな」
「ほら」
「本当はあんなもん関係ないかもしれないし」
「え」
「決めた! もう色を変える魔法は使いませーん」
「なっ! いじわる!」
「そのまま」
「え?」
「そのままがいいよ」
俺はソラナを両手で持ち上げる。
ポカーンとした顔にぶらーんとした後ろ足と尻尾。
「お前といて不吉なら不吉でいいよ」
「はぁ!? 意味わかんない! 美月もなんか言ってやってよ」
「私も空大にさーんせい!」
「なんで!?」
「銀色ももちろん素敵だけど、黒色似合ってるから。それだけだよ」
「似合ってるからって……そのせいで美月も空大も変な目で見られるよ。きっとみんなに避けられる。二人はこの世界を知らないからそんなこと言うんだよ」
「俺想像力ないからよくわかんね」
「都合いいなぁもう! その想像力のなさは身を滅ぼすよ! 周りに合わせればいいじゃん! それでみんな丸く収まるんだから」
「俺たちが収まらない」
「はあ?」
「俺たちが騒ぐ。本当のソラナはこんなにきれいなんですよーー! って」
「ばかじゃないの」
「騒ぐ騒ぐ!」
「美月まで」
「俺たちめんどいだろ。だからそのままでいろよ」
ソラナは黙った。
そして下を向いてぽつりとこぼす。
「そのままでいても、嫌わない?」
「「嫌うわけない!」」
「なんでそんな言い切れるのかもわかんないし、黒色にこだわるのかもわかんない」
「「似合うから」」
「このバカップルが」
「「いや〜〜それほどでも〜」」
「褒めてない」
ソラナは再度黙る。
そして何か吹っ切れたように上を見上げて話し出した。
「でもそっか。もういいや」
「うん」
「うん」
「一度死んだつもりで生まれ変わって生きてみる」
ソラナは体をくねらせて俺の手からスポッと抜け、地面に華麗に着地した。
「魔法が使えないって不便ね」
「返すよ」
ソラナは首を横に振る。
「いいの。不便なままやってみる」
俺と美月はソラナを見る。
「きっと黒猫でいることで不便なこといっぱいある」
ソラナの瞳は降り注ぐ星が映り込んだように輝き出す。
「でもさ、案外悪くないかも。一緒に楽しんでくれる?」
「「うん!」」




