追っ手
「美月、大丈夫か?」
俺の上で気を失っている美月の背中を軽めに叩く。
「んっ」
目が覚めるやいなやガバッと上半身を起こし周囲を見渡す。
「空大! 空大ぁ!!」
「ちょ、美月」
半ばパニックの美月を落ち着かせようと肩を掴もうとする俺。するとタイミングよく美月がこちらを見た。
むにっ
「「あ」」
「キャーー!! どこ触って!」
美月が顔を真っ赤にして俺をぽかすか叩く。うわーかっわい。
「美月」
俺はたまらず彼女を抱きしめた。
「美月が生きててくれて嬉しい」
存在を確かめるようにキスをする。
「んっ」
そのまま雨に濡れて透けた白いブラウスのボタンを一つ外す。
「んー!?」
二つ目も外し三つ目に手をかける。
「んっはぁ、だ、ダメ」
「ん?」
「結婚するまでこういうことしちゃダメ……」
潤んだ瞳で見つめてくる美月。
「っん」
俺は美月の口を塞ぐ。
ペシッ
「いてっ」
「何してんのよ!」
黒猫がパンチしてくる。
「私がいるってこと忘れないでもらえます!?」
ペシペシペシペシペシッ
「わりっわかった、わるかったって!」
「猫ちゃんありがとう」
美月が黒猫を抱きしめる。
黒猫はビクッとなりながらも美月をたしなめる。
「あんたも流されてんじゃないわよ! ほらボタン留めて!」
「ちっ余計なことを」
「なんか言った!?」
黒猫は右手の爪を光らせる。
「何にも言ってません」
「よろしい」
黒猫はそう言うと1、2歩進んで草むらの向こうを見つめる。
「はぁ、あんたたちよくのんびりしてられるわね」
「「え?」」
「追っ手。来てるわよ」
「「えええ!?」」
俺と美月の叫び声と同時に全身黒色のマントに身を包んだ何者かが飛び出してきた。
「きゃあ!」
そいつは俺の上にいる美月を狙って掴みかかる。
「美月っ!」
俺は咄嗟に美月を抱きしめ、そいつの攻撃から美月を守る。彼女の手を引いて急いで立ち上がり草むらの中に逃げる。
「美月ジャンプだ!」
タイミングを合わせて俺と美月と黒猫は走りながら跳んだ。
「マッチカット!」