居場所
「こっちにもいない」
俺は首を横に振り、汗を拭う。
「ソラナーー!!」
「あいつどこ行ったんだ」
銀猫が部屋を出て行ってから俺たちが追いかけるまで時間はそんなに経っていなかったはずだ。
それなのになかなか見つからない。
あいつが言った通り朝になればふらっと戻ってくるのか?
それとも何かトラブルに巻き込まれているのか。
「こんなに探してもいないなんて、心配だよ」
「だな。んー行きそうなところ、行きそうなところ」
何か手がかりはないかと、俺は銀猫と初めて会った交差点を思い出す。
あれ? そういやあいつ、なんで道路に飛び出したんだ?
やり直していいよって言った2回目も飛び出してた。
しかも、今は使えないみたいだけどあのときは魔法が使えたはずだろ。
魔法の力でどうとでもできたはず。
魔法の力……
「あ! もしかして俺探せるかも」
「どうやって!?」
「遠くの人に思いを馳せるシーンとかでよく使われる編集があるんだ」
「あれかな? 一つの映像の上にもう一つの映像が重なって徐々にシーンが入れ替わっていく感じの」
「そう!」
俺は目を閉じ、銀猫に思いを馳せて言葉を発する。
「オーバーラップ」
ぼんやり銀猫の姿が見える。
よかった、成功だ。
ここは屋外だな。
銀猫が星降る夜空を見上げて歩いている。
どこだ? 森に向かってるのか?
顔ばっかじゃなくてもうちょっと下、あ!
「屋根!」
俺が叫ぶと同時に屋根のふちに銀猫の姿が見えた。
「ソラナ!」
美月が叫ぶ。
銀猫はこちらに気づくと慌てて逃げようとした。
「みゃ!」
足を踏み外す銀猫。
ガラララッ
「きゃあ」
「銀猫!」
ギギッ
「み、みっ」
銀猫はかろうじて片手で屋根につかまる。
体がぷらぷらと揺れて今にも落ちそうだ。
「ソラナ!」
「銀猫待ってろ!」
俺と美月は急いで銀猫のもとに駆けつけ、両手を広げながら呼びかける。
「こい!」
「や、だっ!!」
「ソラナ! おいで!」
「み、み、たとえ、美月のお願いで、も」
「ソラナ!」
「ふたりが、みっ、不幸になるのは、やだっ!」
「「いいから!!」」
「こい!」「おいで!」
次の瞬間屋根から片手が外れ、銀猫は落下した。
「みゃあああーーーー!」
ドササッ
「うっ」
ガシッと受け止めた感触。
ぼわんっ
そうだった、こいつ変身するんだった。