本音
俺は急いでドアの方へ走る。
「銀猫!」
「ソラナ!」
ゴチッ
「いっ」
「きゃあ」
「美月!」
同時にドアを開けようとしてぶつかった。
倒れていく美月を咄嗟に受け止める。
大人二人が倒れドタドタッと無垢材でできた床が音を立てる。
「いたた」
涙目でおでこを押さえる美月のかわいさたるや。
眼鏡がずれてるところがたまらない。
その美月が今俺の上に乗っている。
「ごめんな、痛かったな」
俺は美月のおでこに手を伸ばす。
「わっ!空大ごめん」
状況に気づいた美月が降りようとする。
「いいから」
俺は美月の首の後ろに右腕をまわし彼女を抱き寄せる。
「あっ」
声を漏らす美月を捕らえるように俺は彼女の右手を握る。
首を傾ければ、すぐ触れる距離。
「美月」
「ん」
唇やらけー。
もっとほしくなる。
『追いかけてくるような根性なしとはこれ以上一緒に行動していられないから。ちゃんと決めなさいよ』
銀猫の言葉が頭をよぎる。
あれじゃあ、これからも一緒に行動したいって言っているようなものだ。
「美月」
「空大?」
「ごめん」
「うん」
「「迎えに行こう」」
ぷっ
俺と美月は同時に吹き出す。
はははははっ!
くっそー銀猫、いい雰囲気をじゃましやがって。
もうお前がいない方が調子狂うんだよ。
「私は最初っからそのつもりだよ」
「ちょっとはドキドキした?」
立ち上がりながら聞いてみる。
……美月さんは無言だ。
「俺だけか〜」
いたたまれなくなった俺が音を上げてしゃべると、服の袖を掴まれた。
「内緒」
その声の微かな震えが胸に響く。
顔を見せてくれない彼女の本音は俺だけが知っていればいい。
「行くか」
「うん」
バタンッ