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第7話 周辺地域の邪族退治開始

「さて、明日から本格的にこの町を拠点として周辺の邪族退治を始める訳ですが王道さんには申し訳無いですが新種の邪族を発見した場合はまず鑑定をお願いしたいと思います」


夕食の席で奈央がそう提案した。


「我々は邪族を食料にする事は出来ませんが、王道さんは変換で食料に変える力をお持ちです。また分解も他にも使えるやり方が見つかるかもしれませんので、機会が有ればどんどん試してください」


「お、おう分かった」


「奈央~最初、王道の事良く思っていなかったのに何で急に態度変えちゃっているの?♪」


華憐が奈央を茶化す様に話しかける。


「別に・・・財布の件もそうですが、我々だけだと食料やこちらの世界の通貨を手に入れられず困っていたかもしれないのでその点については感謝しているだけです」


「ふ~ん、感謝ねぇ?」


華憐が不思議そうな顔で奈央を見つめていた。


「それで、王道に分解を試させる理由は何?私達と違って王道は戦闘力は無いのと同じなのよ。わざわざ危険に近づける必要がどこに有るの?」


喧嘩腰になりかけている華憐を落ち着かせようと俺が声を掛けようとすると、奈央が自分の考えを皆に言い聞かせた。


「華憐さんのお陰で当面の資金は用意出来たかもしれません、しかし王道さんがその前後で懸念された様にカードを止められてしまった場合資金源を断たれてしまいます。ですから不測の事態に備え我々だけで自活出来る様に商売をするべきだと思ったんです」


「何を商売にするつもりなの、奈央?」


「売り物になりそうな物なら何でもよ、華憐。動物型の邪族の死骸から毛皮を分解で手に入れられれば防寒着の材料として売れるし私達でも使えます。幸い王道さんのリュックには多くの品を入れられるみたいですから、行商しながら邪族を倒していく旅でもライアから文句は言われない筈」


「奈央さんの言っている事も一理有るわね、華憐さんのカードに頼りきりだといざという時に何も出来なくなってしまうかもしれない。そうなる前に自分達の手で収入を得る方法を見つけておくのは大切だわ」


みどり先生は奈央の提案に賛成した。


「私も王道さんに同行して貰うのに賛成!」


美雷が元気良く答える。


「美雷、一応聞いておくけど何で賛成なの?」


「だって動き回って汗をかくと服が肌に密着して気持ち悪いし、その場で分解して貰える王道さんには近くに居て貰った方が便利だから」


「あっ!?」


美雷の言が決定打となり、俺の同行が女性陣の全会一致で決まった。もしかして、俺これから毎日下着を見る回数が増えるの!?精神衛生的に自分が何時まで耐えられるか不安になってきた。


翌日、宿を出るとまず俺達は町の北側へ向かった。30分ほど歩くと小さな川が見えてきて橋を渡り終えるとそこは長出と呼ばれる村のエリアとなっていた。そこでまず遭遇したのがスライムだったのだが、身体の色が青では無く赤色をしていた。




鑑定結果


邪族 レッドスライム 


スライムと同様に獲物を体内に取り込み溶かして食べる生き物、ただしこちらのスライムの方が凶暴。この邪族も変換を用いれば食べる事が出来ます。




「鑑定結果出た、最初に出会ったスライムよりも凶暴らしいから気をつけろ。あと、これも変換すれば食料に変わるみたいだ」


「了解!」


「ここ数日、お稽古が出来ていなかったので私に攻撃させてください」


薫がそう言いながら前に出ると、両手にチャクラムを持って舞い始めた。光り輝くチャクラムがまるで扇の様にも見え円を描く様に動きながら徐々にレッドスライムに近付いていく。レッドスライムはその不規則な動きに攻撃を躊躇っていたがしびれを切らせたのか残り5m位の距離になった所で薫に襲い掛かる。


「動きが遅いですわ」


薫は拳1つ分の短い距離で攻撃を避けるとレッドスライムの周囲を回りながら舞う様にチャクラムで切り刻む。レッドスライムも抵抗してゲル状の腕を伸ばしたりするものの、簡単に避けられるばかりかその伸ばした腕の根元から切られるのだった。薫が舞い終えるとその場にはレッドスライムの死骸が残っていた。


「はぁ~良い稽古になりました」


薫が満足そうに笑顔で戻ってくる、練習相手として扱われたこのスライムに同情し掛けたが周囲に人の骨らしき物が散乱しているのを見て相手は人を襲う化け物なのだと改めて思い知らされた。


「今度のスライムさんは何味になるのかな?♪」


レッドスライムの死骸を前に美雷が楽しそうに見ている、最初のスライムは3種類の味のゼリーに変換出来たのだから今回も同じなのだろう。しかし、このスライムは何かの罰ゲーム向けの味しか存在しなかった・・・。





[このアイテムは以下の物に変換可能です。]



1、スライムinゼリー トマトジュース味5個


2、スライムinゼリー ナポリタン味5個


3、スライムinゼリー 赤まむしドリンク味5個



[どれに変換しますか?]





「ねえねえ、王道。赤まむしドリンクって何?」


「何と言って良い物やら。男性向けの栄養飲料っとでも言えば良いかもしれん」


「男性向け?」


華憐が怪訝そうな顔を浮かべると次の瞬間はっと何かに気付くと右手から炎を生み出しレッドスライムの死骸を焼いてしまった。


「あ~折角のゼリーの元が・・・・勿体無い」


残念そうに美雷が呟くが、華憐は顔を赤くしながら


「あんな物を王道に食べさせでもしたら、私達の身が危ないわ。処分よ処分」


そう言いながら、周囲の警戒に戻っていった。


(男性向けと言っても疲労回復と筋肉増強などの効果が有るだけなんだが、華憐の奴はどんな効果が有ると思い込んだんだ?)


それを聞いてしまうと逆ギレされそうだから、聞くのは止めた。以後、レッドスライムは食料に変換される事も無く華憐によって焼却処理される様になった。


昼時になり木陰に入ると昼食としてスライムinゼリーを食べながら王道達は午後の予定を打ち合わせする事にした。


「午前中の成果だが、レッドスライムを8匹程倒せたな。8匹目を倒した後は姿を見つけられなかったから、長出のエリアは大部分を倒せたかもしれない」


「そうですね、1つのエリアだけに集中していると他のエリアの住人がその間襲われてしまいますから午後はここから移動して別のエリアを回りながら宿に戻りませんか?」


「賛成~!」


「じゃあ、午後は西の臼束のエリアに行き適当な時間になったら宿に戻るとするか!」


1時間ほど休憩を取ると、王道達は西の臼束に向け歩き始めた。臼束に続く道は日陰となる様な木々が少なく直接当たる日の光で汗をかき始めた。


「う~暑い~!ねえ、きみ兄ちゃん。次、木陰を見つけたら身体の汗を分解して貰えないかな?」


「出来たら、私もお願いしたいです」


「私も~!」


冗談じゃない!こんな真っ昼間から女性の下着姿を見ていたら、興奮してしまうだろうが!?


「済まないが午後の予定が一段落するまでは我慢してくれ。鑑定にせよ変換にせよ、それなりに疲れるからいざという時に使えないと皆を危険な目に晒しかねないからな」


「そう言われちゃうと我慢するしか無いか、それじゃあ宿に戻ったらお願いするね。きみ兄ちゃん」


それらしい言い逃れをして、進もうとした時に奈央が1つの提案をした。


「どうせこの陽射しだとすぐ服も乾くし、私が水魔法でシャワーを作るから浴びていかない?」


「そうか、直接浴びれば汗も流せるし身体の熱も下がるから一石二鳥だね」


「身体が冷えて風邪をひきそうになった場合は、済みませんが王道さん。分解をお願いします」


どうやら、みどり先生も暑さを我慢していた様だ。


「それじゃあ、シャワーを作るわよ」


奈央が頭上から小雨を降らせ始めると門音や美雷がはしゃぎながら、そのシャワーの下に飛び込んだ。


「あ~冷たくて気持ちいい!みんなも早く入りなよ」


美雷の声を合図に女性陣がシャワーを楽しみ始める中、俺はというと遠巻きに見ながら周囲にモンスターが近寄ってきていないか警戒していた。15分ほどシャワーで汗を流した女性陣が戻ってきた時、俺は思わず顔を背けてしまった。何故なら服が身体に密着して全員の身体の線が強調されていたからだ。


「どうしたの、王道。急に顔を背けたりして?」


華憐は王道の様子を不思議に思うと、自分の身体を見てようやく原因に気が付いた。


「きゃあ!王道のスケベ、全員の服が乾くまであっちを向いていなさい!!」


「それよりも華憐、王道さんに分解して貰いましょう。その方が早いわ」


奈央が王道に近寄ると、ある頼み事をしてきた。


「王道さん、私達の服と身体の表面に付いた水を分解して頂けませんか?」


ここで変に断ると下着姿が見えている事もバレそうだったので、引き受けるしかなかった。


「じゃあ、分解するよ」


「お願いします」


言われた通り奈央の服と身体の表面に付いた水を対象に選ぶと分解を始めた、光の中の光景を見た王道は思わずこう思ってしまう。


(・・・何て透き通る様な肌、まるで女神そのものだ)


神々しい光の中、奈央は王道の目にその美しい裸身を晒していたのだった。時間も忘れて見惚れていた王道だが、ふいに目の前が暗くなり始めるとそのまま倒れ込んでしまった。


「王道さん!?」


「王道!?」


「きみ兄ちゃん!?」


華憐達の声が遠くに聞こえながら、王道は意識を失った。






肌に冷たい風を感じて、王道が目を覚ますとみどり先生が風魔法で身体を冷ましてくれていた。


「ああ、良かった。目を覚まされた様ですね、みんな~!王道さんが目を覚まされたわよ」


少し離れた所で休んでいた華憐達は、みどり先生の呼び声に反応すると大慌てで詰め寄ってきた。


「王道、あんた大丈夫なの!?急に倒れたから心配しちゃったわよ」


「きみ兄ちゃん、私どうしたら良いか分からなくて思わず泣きそうになっちゃったよ」


「済まなかったな、華憐に門音。俺、一体どうしたんだ?」


王道は何が起きたのか聞くと奈央が教えてくれた。


「王道さんは軽い熱中症を起こされたんです。この強い陽射しの中、私達がシャワーを浴びている間も周囲を見ていて下さったので思った以上に汗をかいていたみたいですね」


「そうだったのか、心配を掛けてしまった様で申し訳無い」


「あまり心配を掛けさせないでください。私達全員揃って元の世界に戻らないといけないのですから」


「そうだな、これからは少し多目に水分を補給したりする様にするよ」


「お願いします、あと少しだけこの場で休まれたら今日は早目に宿に引き上げましょう。それからみんな、王道さんがこんな体調なのですから下着を綺麗にして貰うのは明日以降にしましょう」


門音達から不満の声が上がるが、奈央が根気良く説得を続け今日の下着の清掃は免除された。宿に帰る途中、珍しく先頭を歩く奈央の後ろを進んでいると華憐が声を掛けてきた。


「ねえ、王道。奈央と何か仲良くなる機会でも有った?」


「特に無かったと思うが、どうかしたのか?」


「奈央ね、王道が熱中症だと気付くと口移しで水を飲ませていたのよ。躊躇い無く」


「何だって!?」


思わず叫ぶと前に居た奈央の背中が微かに震えた様に見えた。


「今まで軽い男達ばかり近寄っていて、あの子男の人に対してマイナスのイメージしか持っていなかったから今日の奈央の行動を見て流石にびっくりしちゃった」


「そ、そうなんだ」


よく見ると奈央は後ろの俺をちらちらと見ながら、頬を赤く染めていた。


「どうやら王道、あなた何時の間にか奈央にも気に入られちゃったみたいね。ライバルがまた1人増えたみたいだし私もうかうかしていられないわ。あなたの心を鷲掴みにする方法を独自に考えさせて貰うわね」


新たな闘志に芽生える華憐だったが、俺は呆然とした。


(華憐・門音・みどり先生に続いて今度は奈央か。このテンプレ・王道の流れは何時まで続くんだ!?)


その問いに答えられる者がこの場に居る筈も無く、王道のハーレム化の道がまた1歩進んだのだった・・・。

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