私の彼氏はトンキニーズ?
短いです。
ワイは5歳。トンキニーズの雄猫や。
トンキニーズって何やて?そんな事も知らんのかいな。
しゃーないから教えたるわ。
シャムとバーミーズのあいの子で猫の種類の名前や。
ワイの場合外見はシャム寄りやけどな。
何?ワイの名前?
しゃーないから教えたるわ。特別やで。
ワイはチョコ言うねん。
イカしてるやろ?
これはワイ最愛の茉里奈がつけてくれてん。
某小説のように名前はまだ無いことはないんや。
ん?茉里奈っちゅうのはワイの飼い主や。
生後5ヶ月で売れ残ってたワイを一目惚れして買うてくれたっちゅう訳や。
ま、ワイも茉里奈に一目惚れやけどなっ。
茉里奈はなぁ、それは可愛いて可愛いてあれやな。
あの~外見はちと派手やけど、心根の優しいええ娘なんや。
その茉里奈が最近しょーもない男に引っかかってなあ。
コレがホンマにくだらん男でな。
所謂ヒモっちゅうやつやな。
それだけちゃうねん。茉里奈の留守に別の女を引きずり込みよった。
茉里奈の部屋にも関わらずやで!
ワイは猫やからぜ〜んぶ知っとんねん。
茉里奈に「こんな男やめとけ!」って伝えよ思たけど
口から出るのはニャーニャーばかり。
なんで伝わらんのか……ワイとしたことが最近まで気が付かんかったわ。
そうや、ワイは猫やねん。
茉里奈には言葉が通じひん……。
ワイが人間やったら……茉里奈を幸せにしたれるのに。
普段は信じてへんけどこの時ばかりは願ってまうわ。
神さん。神さん。どうかワイを人間にしてください。
何でもしますさかいに…。
どうかお願いします。
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「このネコいつも鬱陶しいな」
「こんな時間に大丈夫なのぉ〜?」
「ああ。何か飲み会とか言ってたからな。今日はタップリできるぞ」
「いや〜ん。康平のえっちぃ〜」
ニャーニャーニャー(イチャイチャせんと早よメシよこせ。茉里奈から言われてるやろ!)。
「チッ。うるせぇな。分かったよ」
康平と呼ばれた茉里奈の彼氏でもあるヒモ男は、いつもの場所にあるカリカリの餌を皿にざらざらと盛った。
「ほらよ。俺たちの邪魔すんなよ」
カリカリカリカリウニャッ(うん。茉里奈の買うてくれたメシはウマい。それにしてもまた女連れ込みよって。今度と言う今度は許さんど!ワイ得意のニャン斗水鳥拳をお見舞したる!)。
しかし結局どうする事もできず、ニャーニャー言いながらウロウロするチョコ。
(う〜ん。茉里奈にあの男の悪行を伝えるにはどないしたらええんや……)
するとチョコの願いが通じたのか、カツカツとヒールの音がしたと思ったら鍵を差し込む音がして玄関のドアが開いた。
「ただいま〜。やっぱりチョコが心配で早めに帰ってき……」
男と浮気女がいるのを目の当たりにして固まる茉里奈。
恐らくその一瞬で全てを理解し、表情が歪む。
(あ、茉里奈にコレがバレたんは良かったけどあの悲しそうな顔。そんな顔をさせたかった訳や無いんや……)
少しでも慰めようとチョコは茉里奈の足に体を擦り付け始めた。
「チョコ……」
すると茉里奈はしゃがんでチョコを抱き上げ、そっと呟いた。
「出てって……」
「茉里奈、これは」
「出てって!」
男は浮気女の手を引いて静かに出て行った。
後ろでカチャンとドアの閉まる音がした。
「チョコ。ごめん。大きな声出して……」
ニャ〜(そんなんかまへん。それより茉里奈大丈夫か?)。
「あんな男でも好きだったんだよね……」
茉里奈はキュッとチョコを抱きしめ静かに泣きはじめた。
ニャニャニャニャ〜(茉里奈、茉里奈。あんなヤツの為に泣くことあらへん。くそ〜。ワイが人間やったら茉里奈の事抱きしめたるのに)。
「チョコ。チョコはずっと私の傍にいてね…」
ニャニャ〜(あたり前田のクラッカーじゃあ!)。
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