‐最終章‐ 血
あれから半年が経った。当然のごとく、斎藤は警察に死体が床下から出てきたことを通報し、事件は明るみに出て、母は逮捕された。この事件は、10年前の惨殺事件の娘が今回の事件の実の娘であり、双子であったことが、メディアはこぞって報道し世間の知るところとなった。どこからか、両家の不倫関係も漏れており、一気に報道は過熱していった。そして、長い長い事情聴取では、僕は10年も前に起きた父のことを話したが、斎藤の祖父母の事件については話さなかった。もちろん、斎藤との関係も10年前の大門家祖父母惨殺事件についても嫌というほど聞かれた。しかし、知らないを通して、斎藤をかばった。今回の事件に関しては、犬が吠えるので僕の家の床下を掘ることになった、という話で通すことにした。警察は、母が自供したので犯人を捜すというような行為は端からなく犯人探しのような事情聴取はなかった。本当は母には自首してほしかった。それをする暇もなく、斎藤が警察に通報してしまい、僕が母を説得する暇を与えてはくれなかった。斎藤が母に恨みがあったのは分かった。そして、母ではなく、斎藤をかばった自分がいた。
警察関係が落ち着くと、僕たちは斎藤の育ての母親に親権が移った。実をいうと、斎藤の母親は親権を拒否したため、施設に入るべきなのではないかという話もあり、揉めに揉めたのだが、結局、斎藤の育ての母親は親権を得ることとなった。しかし、斎藤の母親に会った日、祖父母を殺した娘と愛人を殺した女の息子とは一緒に住みたくない、ときっぱり断られ、生活費は出してやるからどこか遠くで住んでほしい、私と関わって欲しくないと言われてしまった。斎藤は承諾し、僕も承諾した。
僕たちは、高校にも行けなくなった。みんなの好奇の目で見られる学校で、過ごすわけにはいかない。退学し、引っ越すことになった。僕の住んでいた家は、売られることになった。買い手はなさそうだが。
引っ越し先は、斎藤の希望により「海の見えるところ」と「少しでも遠いところがいい」ということで、新居は10分ほど歩いたところに海岸が見える場所に引っ越した。ここでは、誰も僕たちを知らない。あっけなく家族が崩壊した僕たちは、引っ越し荷物を置いて、海岸まで歩いてきた。
「僕たち、これからどうなるんだろう。」僕は呟いた。
「そうね、私たちの家族は、みんなお互いの家族を信用しなかった。」
「孤独だったのかもな。」
「私たちも孤独よ?」
「いや、君には僕がいるし、僕には君がいる。」
「君、じゃなくて梨華よ。同じ斎藤って名字なんだから。」
「梨華……。」
「そう。梨華と智幸という唯一の双子。同じ親を持つ血を分けた絶対的な双子。」
僕はポケットに入っている写真を指でなぞった。不自然に斜めに切り取られた写真は、もう、完成している。
昨年より進めていた「孤独は嗤う」が完結いたしました。これを読んでくださった方、ありがとうございます。最終章のタイトルを血としましたのは、やはり、育ちではないものが人間の奥底には眠っており、それが血なのではないかと考えた次第でございます。
もっとギャグでも入れればよかったものを、ギャグセンスないので面白い作品には仕上がりませんでした。しかし、この、梨華&智幸はシリーズでやっていこうと考えています。まだ、高校1年生ですからね!まだまだお話書けますよ!!