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孤独は嗤う  作者: 譜久山 希
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-第2章- 事件の裏側

私は、堀北通りの小さなお家に生まれたの。華やかに幸せな人生を送ることができるように、梨華、と名付けられた。希望通り、特にお金に困らず、幸せな家庭で育ったと思う。私は、4歳の誕生日にリカちゃん人形を買ってもらったの。いろんなバージョンがあるなかで、シンデレラスタイルのリカちゃん人形を買ってもらい、嬉しくて毎日肌身離さず持ち歩いていた。私のバッグの中には、シンデレラリカちゃんと、リカちゃんの頭につけるティアラとガラスの靴が入っていた。そんなに嬉しいならと、着替えも買ってくれた。着替えは、普段着になりそうな服でドレスではなかったけれど、それでも嬉しかった。ある日、着替えをさせようとしていたら、頭部がぽろりと落ちた。壊れたのかと思い泣きながら、父に言うと、「ちゃんと治るからね」と頭部を再び肉体に戻してくれた。その時に、とても不思議に思ったの。人間の頭は取れないのかしらって。頭が取れた人を見たことがなかったから、とても興味ひかれたわ。

 その後、祖父母の介護はとても大変になっていった。二人とも寝たきりだったから、2階の一室に二人とも寝てもらって、両親がひっきりなしに出入りして世話をしていた。私も、毎日様子を見に行っていたけど、おばあちゃんの方は認知症で私のことなんて忘れてて毎日同じことの繰り返し。「どなた。」「おばあちゃん、りかよ。」「そうかい。大きくなっねぇ。」。おじいちゃんは脳梗塞で体が言うことを聞かない。自分で動ける部分もあるけれど、起き上がったりすることはできなかった。今思えば、リハビリをちゃんとしていれば寝たきりにはならなかったのかもしれないわね。二人は、生きている価値がとてつもなく無いように思えた。こうして、寝たきりになっても、誰も訪ねて来ないし、両親も疲れ切っていた。そのときに、試してみようと思いついたの。頭がとれる人間を。

 私は小学校1年生で、人間の頭は取れないことを知っていた。でも、骨が一本しかないなら、腕や足を同じで簡単に取れると思った。小学生の知識だから、許してね。小学校の理科の教科書には載ってなかったから、図書館に行って、人間の解剖図鑑を借りて、勉強した。人間には心臓から血が通っていること、首は頸椎という幾つかの骨の集合体であること。でも、どの本には頭がとれることについては書いてなかった。だから、ある日、包丁を持って、2階に向かったわ。おばあちゃんはすやすや寝ていて、動かなかった。だから、思いっきり首に包丁を刺した。とてつもない量の血が出てきて、心臓って凄いなあと感じたものよ。しかし、1回では頭は取れなかった。何回も刺しても小学一年生女子の力では刺すことに限界があった。そこで、料理する時のように、横に引き始めた。でも、脂肪が切れ味に邪魔をして、時間がかかった。20分ほどして、ようやく頭が床に落ちたの。この時の感動は今でも忘れない。おじいちゃんも同じように刺殺したの。でもね、刺す前におじいちゃんは声を出してしまったの。その声のせいで、階下にいた父親と母親が飛んでやってきて,部屋の中の惨状を目の当たりにした。数十秒か、もしかした数十分はそのままだったわ。無言で、何が起きたのか、頭の中を整理中ってところね。そして、おもむろに父が私か包丁を取り上げると、着ていた服で握っていた部分を拭いて、おじいちゃんを刺したの。首だけじゃない。お腹も腕もいろんなところにたくさん。

 両親は私に質問もしなかった。怒ったり、叩いたり、おおよそしつけにあたることさえしなかった。でも、私を犯人にならない方法を模索してくれたみたいだった。子供を犯人にしたくないっていう、親心かしらね。

そして事件の裏側っていうのは、私が1997年6月13日に祖父母を包丁で首を刺して殺害。当初は、遺体を両親が隠す方向でいたため、数週間放置されてしまったが、隠し切れないと分かり、父親が罪をかぶって自首。包丁は自宅のものだが、いったん指紋を父親が拭き取り、普段料理をしている母親と、罪を被った父親が指紋を改めて付けた。大門家はこれで解散ということになり、逮捕後、両親は離婚。母親が私を育てるのを嫌い、親戚の家に預けられて過ごした。苗字は母親の旧姓である、斎藤を名乗ることにしたってこと。


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