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繋がり

「さて、覚えたかな?」

「えーっと……こっちの赤いのが体力を回復するポーションで、こっちの薄い赤いのが解毒薬……かな?」

「うん、正解。この2つは暗い所だと色が似てるから間違えやすいんだ。明るい所で透かして透明度をしっかり確認すること」

「ん、わかった」


 いーちゃんの指導の下、少しずつ知識を得ていく。

 世の中にはアイテムの鑑定が出来る『鑑定鏡』というものもあるらしいのだけど、それが無くてもそれなりに商品を覚えておく方がいい、といーちゃんに言われて毎日勉強しているのです。

 手のひらサイズのメモ帳に特徴とかを色々書き記しているから、ちょっと手が疲れてきた。


「はー、菜摘ちゃんは物覚えがいいね」

「え、そう?……でもメモ書いてるけどすぐ忘れちゃいそう……」


 自分の手の上にあるメモ帳を見下ろし苦く笑う。

 別に記憶力がいいわけでもないし、興味があるわけでもない。

 ……不思議だなぁ、って思いはするけれどね。

 だってこのポーションってやつを飲んだら体力が回復するとか、傷に振りかけると塞がるとか……現代社会じゃあちょっと考えられないよね。

 いーちゃんが言ってたマジックポーションもよくわからないし、魔力とかっていうのもわからない。

 いーちゃん曰く、わたしにも魔力があるらしいけれど……。


 いーちゃんにお店の話を聞いたわたしは、出来ることなら再開させたいと考えるようになった。

 祖父との繋がりを1つでも遺しておきたかったのだ。

 それにいーちゃんが向こう――異世界――でこれからも生活していくつもりで、それはいーちゃんが死ぬまで変わらないらしい。

 ごめんね、って悲しそうに、申し訳なさそうに謝られたけど、それはいーちゃんの人生でわたしがとやかく言うことではないからいいのだ。

 異世界に繋がる扉が、今は繋がっているけれど将来どうなるかもわからない。

 異世界に繋がずに閉め切っていて、いーちゃんとの関わりが気づくことなく無くなってしまったりしたら……わたしは再び後悔することになるだろう。

 異世界に興味があるとか、そういうことじゃない。

 家族との繋がりをもう無くしたくない。

 ただ、それだけだ。

 繋がりだけならば道具屋を再開させる必要はないのかもしれない。

 けれど、この道具屋は『異世界でも祖父が生きていた証』になるのだ。


 いーちゃんと話し合った翌日、わたしは道具屋を再開させるために教えてくれるようにいーちゃんに頼んだ。

 いーちゃんは一瞬目を丸くして驚いていたけれど、嬉しそうに笑ったのだ。


「菜摘ちゃんとの繋がりが、もう1つ出来るね」


『家族』という繋がりだけでも、なんら問題はない。

 だけどわたしが道具屋、ひいては異世界のことを少しでも知っておけば『現代社会と異世界の両方を知る人間』という繋がりも出来る。

 そしていーちゃんが言っていたように、もし何かあっても連絡をお願い出来る人脈を築けるのだ。

 わたしに異世界の知り合いはいない。

 それは『わたし』を知る人間がいないということに繋がる。

 そんな知られていないわたしが、もしいーちゃんに言伝を異世界の人に頼んだとして、誰が信用してくれるだろうか。

 わたしがいーちゃんの家族だと、異世界の人は誰も証明出来ないのだ。

 向こうでは科学が発展していないという。

 DNA検査とか……いや、もし仮にあったとしても時間がかかるだろう。

 遠くにいるいーちゃんに言伝を頼み、届くまでに時間がかかるのに、更に時間をロスしてしまうことになる。

 それならば、今からわたしがいーちゃんの家族である、と周囲の人達に認識してもらう方がいい。

 そんな思いもあって、わたしは今、頑張って異世界のアイテムというものを覚えている最中だ。

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