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デンジャラスランデブー

 

 ちょっと想像してみて欲しい


 人よりたぶんなんでも出来て、周りにはさんざん持ち上げられて、どんなことでも少しの労力と努力で容易くすべてが手に入る


 つまんないよな?飽きちまうよな?


 対等に話せる人なんて自分の祖父しかいなくて、それを父親に嫉妬されて、やってられないよな。

 顔色伺われて媚び諂われるのもいい加減うんざりして、毎日をなんとなくぼんやり遣り過ごしていた或る日、運命の相手に出会ったんだ。


 真っ直ぐと楽し気に輝く好奇心に満ちた揺れる碧玉の瞳で見つめられながら、話し始めれば機知に富んでいて機転が利いて発想も斬新で、ずっといつ迄も面白おかしく過ごしていられる。しかも、すこぶる美少女だ、一生この子の傍で、全ての災厄から守って共に生きて行こうと思っていたらば、なんという事でしょう。

 彼女は彼だったのです。

 あんなに可愛くて綺麗なのに男だなんて詐欺だよね。

 この衝撃で、己れの繊細な心は木っ端微塵、生まれて初めての挫折を味わい反動でちょっとしつこく虐めちゃっても、これもうしょうがないでしょう?




 ーー夜の帳が降りてくる。逃走劇の幕が上がる。


 絡まれるのはいつもの事だ、けれどもそれが上品に加工された貴族の子弟と貧困の底辺で辛酸を舐め暮らす庶民とだったら勝手が違い過ぎる。

 いつもいつでも自分が弱くて、その現実に涙も出ない。


「うう、城門の近くまで送ってもらえば良かった」


 王都は教会の守護魔法の結界で魔物や魔獣の進入を常時防いでいる。南の魔女からすれば児戯に等しいが、其れでも徒らに干渉すれば少なく無い影響が出るのを畏れた。


 お土産に持ったバスケットの中身を、潰さないように走る余裕も無くなって、路地裏に引き摺り込まれれば一巻の終わり、跡形も残らないくらいぐちゃぐちゃのボロボロにされるのは明白。

 逃げ足は日常の苦境でピカピカに磨かれているが、当社10倍比の襲われる恐怖に膝が笑い出せば全力は尽くせない。


「ーーだれか」


 上がる呼吸で助けを呼ぼうにも、誰を呼べばいい?誰を呼んだらいい?どうしよう。

 闇雲に走り続けて、今となっては現在地もわからない、見回し逡巡すればその隙に距離を詰められ、服の裾を掴まれ倒され、そのまま乗し掛かられた。


「やっ」


 他人の重さで骨が軋めば、聞き覚えのある声で怒号が響き、その瞬間体の上から重さは消えた。


「私以外に触らすなと、何回言えばわかるのだ?」

「ーーヴィンセント⁈」


 驚愕の余り今起こっている現状に全く現実味がない。


「鈍臭いのが標準装備か?」


 盛大に苦虫を噛み潰した顔で手を引かれ起こされれば、条件反射的に振り解き脱走した所を、先程排除された暴漢に再び絡め取られる。


「それにさわるなっ!」


 直ぐ様踏み込みアンリの腕を引き、鞘付きの短刀で男の喉仏を潰し蹴り離す、躊躇なく振るわれる彼の本気の暴力に茫然とし腕を取られたままに屈んで見上げる。


「極刑を喰らって露と消えるか?」


 ゆっくり立ち上がった暴漢とお溢れの機会を窺い遠巻きしていた破落戸どもに紋章入りの短刀を掲げば、蜘蛛の子を散らす勢いでその場から離脱して行った。


「ーーなんで」

「向かえに来たに決まっている」

「なんで?」


 激情に煌めく鳶色の瞳を負けないように真っ直ぐ見つめて問い正す。

 尋ねたい事は山ほど有るけど、どうしてもこれだけは、はっきりさせなければならない。


「それでこのまま僕の敵なの?またいじめ続けるの?それともこれからは味方になって守ってくれるの?」

「どっちもだ」

「どっどっちも⁈」

「ーー君の泣き顔も笑い顔も、怒った顔さえもすべて全部私のものだ」

「は?」


「やり方はまだよくわからないがなんとかなるだろう」

「なに言ってるのか、もうちょっとわかんないよ」


 年相応の悪戯小僧全開で微笑んだ彼に、そう呆れて嘆く姿もまた殊の外可愛らしかった。





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