3時のおやつはカステラですか
こっの世っでいーちばーんすっきなのはー
いったずらすることー食べることー
陽気に歌いながら、林檎大のカエルさんが器用にボールのヘリに立ちゆるりと粉をふるえばキラキラと小山状に降り積もって行く。その隣りで、別のボールに卵を割り入れ、お砂糖を加えて白っぽくなるまでよく泡立てている魔女さんはちらっと僕を見た。
「そろそろそれをこちらへ入れよ」
暖炉の側でミルクとバターを温めていた僕は、そろりと移動してこぼさないように加える、そしてかき混ぜたものに、カエルさんに振るわれて煌めく粉をさっくりと合わせればぐるぐると虹色に輝きを増し、ちちんぷいぷいと彼女が唱えるとぽふんとひとつ破裂音が響いた。
「わぁ」
「くふうっ完ぺきじゃあ」
「むっふうー」
部屋中に満ちる芳しい香りにそれぞれ喜びの声をあげる。出来たておやつの粗熱を取っている間に魔女さんはシャカシャカとお茶を点てて僕の前にそれを置いた。
「召し上がれ」
「ありがとうございます」
茶碗には毒毒しい色の泥沼みたいなお茶?があったが、僕は丁寧にそれを飲み干しながら朝方の遣り取りを思い返していた。
「平伏しているので、希望を持ってもいいですよね」
僕が顔だけ上げてニコッと笑いしらっとそう告げると、南の魔女さんは苦虫を噛み砕くかの顔をして、両方の拳を握りしめ。
「レナードめぇっ」
何故か賢王に対してぐぬぬと怒りを表した。
「ともかくも、こんなに可愛らしい曾孫までいるとは、月日は百代の過客とよういったものだのう。あれは幸せになったのか?」
可憐に睫毛を震わせて流し目で見遣る魔女さんに、可愛いと言われて物凄い複雑な気持ちになる。
「厳密に言えば、彼は曾お祖母様の弟君なので僕は曾孫ではないのですが、また従兄弟とでも云うのでしょうか?」
「レナードに子は居ないのか?国の王で在ろうに」
「…ただひとり愛した方を喪って、どうしてもそのひと以外考えられなかったそうです」
瞠目して言葉を無くした魔女さんの頭上で「真面目かっ」と、茶化してカエルさんは飛び跳ねる。
「常に悪ふざけしている態度は多過ぎる敵を煙に巻く為で、心根は誰よりも立派なお方です。でなければ、この国はとうの昔に滅んでいますよ」
「フム、よく見ておるのう。まだ年端もいかないのに賢いのもあれの血縁だからか」
「僕は誰にも相手にされず暇なので、本を読んだりする時間がたくさんあるだけです。別に賢い訳ではありません」
自虐する僕にカエルさんは驚き地面に降り跳ねる。
「なぬっ、友はおらんのか?では吾輩と友だちにならんか?」
「よろしいのですか?」
「吾輩も友が少なくてさみしんぼうなのだ、よろしく頼むぞ、アンリ殿」
「ありがとうございます。とても、とても嬉しいです。お名前を教えて頂けますか?」
「おお、失念していた。吾輩はロキと申す」
「ロキ殿ですね、よろしくお願いします」
そうやって僕には初めての友だちが出来て、それにましてお家にまでお呼ばれされたのだった。




