拾ったら責任を持ちましょう
むしむしコロコロ虫ころす〜
殺して見るだけ食べちゃダメ〜
光の射さぬ暗黒の森を調子っ外れに歌いながら、くるりとふたつに耳の後ろで結われた真っ白に輝く髪をふわりと揺らして、飛ぶように歩く少女の横を
王様がえる〜
青がえる〜
かえるは色々あるけれど〜
この世〜でいっぴき〜
天神かえるのお通りだー
虹色に光る丸っこい体をぽよんぽよんと弾ませて、林檎大よりはふた回り程の姿をひと息プクッと入れればぽわりと浮いて少女の頭上に着地した。
「ハラヘッター、なぁにかっくれ〜でっきればぁうんまいものがぁいい〜」
そう好き勝手騒ぐ相棒に、また始まったかと眉根を寄せる。
「貴公が食べ尽くすから、魔物どもが慄いて逃亡しこの辺りはスッカラカンであるのよう」
「吾輩の所為だけではあるまいに、其方の連日連夜の魔導実験大暴走でうるさくてかなわんと、然しものフェンリル殿も鉄の森へと里帰りしてもうたぞ。吾輩、少ない友だちが減ってさびしんぼうなのだぞ。寂しいと〜腹が減るのだ〜」
「ケロケロケロリンとやかましいのう、仕方のない何か出してやるからちょいとお待ちよ」
そう告げて白くスラリとした両腕をくるくる回しちちんぷいぷいと唱えると、深い紫紺の瞳が妖しく光れば、森の闇より暗い染みが点々と広がりその中からボトリと何かが落ちた。
「何やらえっらいキランキランしておるの?噛んだらギャリンとならんか?」
「歯が無ければギャリンとはならぬよ?」
「吾輩、歯ならばたくさん生えておるぞ」
虹色カエルがかぱりと大きく口をあければ上下三列連なる刺々しい歯山が見えた。
「呆れるほどに長い付き合いであるが、新発見じゃのう」
「常は丸飲み故にあんまり使用はせんからな」
ひとりといっぴきでフムフム話し合っていれば、豪華な布に包まれたモノがモコモコと起きて綺麗な幼い顔を向けた。
「おや、ヒトの子か?しくじったようだの。人が消えれば色々と面倒ごとが生じるからのう、すまんなこれでは食事にならぬよ」
「しっくじってはいないですよ、偉大なる魔女さま。僕が貴女を望んだのです」
「さて面妖な、まだ生まれたばかりであろうが、死にたがりか?」
「もう10歳は過ぎています。お願いです、僕はアンリ・トゥールーズ、この国を統べる賢王ゲイリー・レナード・カングランテの曾孫になります。どうかひいおじいさまをお助け下さい」
そう高い声で叫ぶように話せば小さな体を五体投地した。賢王の名に魔女は片眉を吊り上げ腕を組み睥睨する。
「妾のコトを聞き及んだのか?」
「貴女が南の魔女さまですよね、不思議なカエルをお連れしていると、貴女しかもう何も救うことが出来ないのです」
「フム、南の魔女は確かに妾だが其方は勘違いをしている」
「何を間違えているのでしょうか?」
そう恐る恐る顔を上げた金髪碧眼の少年を見据え魔女はこの森すべてに響くよう朗々と歌い告げる。
我が眼前に立つ者は一切の望みを捨てよ
我が名はホープレス・ゲート
神の胃の腑を喰らう者也




