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第2夜 「異世界の家族」

第2話を公開します。



20150929公開

前回までのあらすじ

 気が付けば、異世界に居たよ、ボク・・・

 旦那も子供たちも居る女性になって・・・

 取敢えず、うん、かわいいよはっきゅんかわいいよ・・・




 ボクが今、最優先ですべきは現状の把握だ。

 幸いな事に、この身体の持ち主のチリさんの記憶は有る。

 室内を見渡す。

 ふむ、壁に掛かっている片手剣のシリーズが幾つかと両手剣の何本かが記憶と違っているが、その他はほぼ記憶通りだった。

 ここで、初めて自分自身の感覚というか、身体に違和感を感じた。


 うん、裸だね、ボク・・・・・


「チイちゃん、悪いがボクの着るものを持って来てもらっていいかな?」

「え、あ、はい」


 彼女は初めて僕が裸だという事に気付いたのか、慌てて立ち上がると奥の方に向かって去って行った。


「ケトさん、申し訳ないが、少々の間、こっちを見るのを止めて貰ってもいいかな? 奥さんの裸など見飽きていると思うけど、ボクは結構恥ずかしい気分なんだ」

「あ、ああ」


 まあ、正直に言うと、本当は恥ずかしくは無い。 

 ただ単に、視線が痛かっただけだ。 

 

 この時、ボクは先ほどの身体的な違和感に続き、もっと大きな違和感を感じた。

 自分自身の存在に関する違和感だった。

 いや、意識がボクだという事自体も問題だが、チリさんの存在自体がおかしい・・・


「ケトさん、正直に答えて欲しいのだけど、チリさんは死んだ筈じゃないのかな?」


 その言葉に、家族全員が反応した。

 子供たちは悲しみが混じった恐れを露わにした表情になっている。

 ケトさんは恐れを滲ませながらもなんとか理性で抑えている表情だった。


「ボクの、いや、チリさんの最後の記憶は、『ネピロ・ウガンシス』の右腕に身体を切り裂かれた直後で途絶えている。どう考えても生きていられるようなダメージでは無い。となれば、その時点でボクは死んだ筈だ」


 甥っ子のホニの身体が『ネピロ・ウガンシス』という災獣の名前が出た時にピクリと反応した。

 ああ、そうだった・・・ チリさんの妹のチトさんもあの災獣に殺されていた。

 姉妹揃って、幼い子供たちを残して1匹の災獣に殺されていたんだ。


「ああ、チトの言う通りだ。確かに3年前の防衛戦の時に君は死んだ。不幸中の幸いだったのが、遺体を回収出来た事だ」


 やはり、記憶の通りにボクの身体は一度死んでいた。

 道理で、子供たちが記憶よりも大きくなっている訳だ。


「どうして、ボクは生きているんだろう? 『再逢の奇跡』か? いや、あれは肉体が復活する訳では無いから、今のボクの状態とは違う」


 その時、ボクの服を取りに行っていたチイが戻って来た。

 手には普段着と下着まで持っていた。


「お母さんが好きだった服を持って来たよ・・・」


 ボクは、ありがとうと言いながら彼女から下着を受け取り、身に着けて行く。

 40年間生きて来て初めて女性の下着を身に付けたが、特に何の感慨も湧かない。

 まあ、チリさんの記憶が有るのだから当然と言えば当然なのだが・・・

 普段着を着た時に、ふとこの服が死ぬ前年の結婚記念日に貰ったプレゼントだった事を思い出した。


「ケトさん、チリさんとは仲が良かったんだね」

「いや、まあ、その、なんだ・・・」


 返事というには余りにも曖昧な言葉にクスッと笑いが浮かんだ。

 ボクも日本で同じことを言われたら、同じ様な反応を返す気がしたからだ。

 

「そういえば、今は何時くらいなのだろう? 死んだ身ながら、お腹が空いている」


 その言葉に反応したのはチイだった。


「あ、お鍋を掛けっぱなしだった!」 


 そう叫んだ後、彼女は慌てて奥の方に消えた。


「小さい頃から料理に興味を持っていたけど、今ではボクの代わりに食事を作ってくれているのか・・・」

「うん、お姉ちゃんの料理はおいしいよ」


 妹のチハがどこか嬉しそうに言った。

 隣でホニが頷いている。


「それは楽しみだ」


 きっと、ボクは笑顔を浮かべたのだろう。2人は顔いっぱいに笑顔を浮かべて、ボクの手を引っ張り始めた。


「お母さんも一緒にお昼を食べよ!」


 

 決して、豪勢な食事では無かったが、昼食で出された料理は心のこもった美味しいものだった。




 ボクが日本で夢見た家族団欒がここに有った・・・・・

 

如何でしたでしょうか?


 予定ではもう少し描写する筈でしたが、キリが良いのでここまでとします。

 次回公開は未定ですが、来月の前半にでも公開出来ればヨシとします(^^)

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