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第1夜 「初めての異世界」

超不定期連載第1夜です。




20150921公開

 ボクは軽い落下感を感じた直後に、右半身が堅い床に触れている事に気付いた。

 折角の休みだし、昨日呑み過ぎたので、まだ寝ていたい気分だけど、身体が起きろと言っている。

 まあ、目を開けるくらいはしてもいいだろう、と軽く考えていた時代がボクにもありました・・・


 視界に入って来た光景の右半分を占めていたのは使い込まれた木の床だった。

 傷も多く、塗料も塗られていない床・・・


 ・・・・ ?


 ボクの家にもフローリングの部屋は有るが、こんなに手入れがされていない床など無い筈・・・ 

 少なくともボクはここまで床が傷だらけになる事を放置する様なズボラな性格では無い。

 そんな事をぼんやりと考えていると、誰かがすぐ近くを歩く音がした・・・。


 ?!?


 ボク以外には家には誰も居ない筈だ・・・ 

 靴と認識するには手作り感が有り過ぎる革製の靴を履いた、スカートから伸びる足が視界に入って来た。

 もう、眠気は吹き飛んでいた。

 飛び起きたボクの視界に、驚いた顔をして、両手を口元に持って行って悲鳴を抑えている少女の姿が飛び込んで来た。

 いや、悲鳴を上げたいのはコッチの方なんだけど・・・

 白髪と云うには艶が有り過ぎる輝く様なプラチナブロンドが流れる様に左右に分けられている。

 白人の様なというよりも、ズバリ北欧系の整った顔で、瞳は透き通ったグリーンだ。

 3年前に死別した妻が5月生まれだったので、一度エメラルドの指輪を贈った事が有る。

 その宝石のエメラルドよりも綺麗なグリーンの瞳が潤んでいた。

 彼女は誰かに訴えるかの様に叫んだ。


「お父さん! 早く! お母さんが・・・・・」


 そう叫んで、抱き付いて来た少女に関する記憶がボクの思考を占拠した・・・

 勝手に蘇る記憶によると、ボクに飛び付いて来た少女はこの家族の長女で、名前はチイだ。

 目の前の少女は記憶よりも数歳は年上に見えた。


「お母さん、会いたかった・・・・・」


 ボクは何と言っていいのか分からない。

 何故ならば、この少女に関する記憶は彼女を産む前から有るのに、その記憶に自分の感情が伴っていないからだ。

 少女が示す態度に対してどうすれば良いのか分からないので、取敢えず頭を撫でる事にした。

 頭を撫でられた少女は、更にボクを抱き締めた。

 肩も震えている。

 嗚咽も聞こえて来た。

 でも、相変わらず、ボクはこの子に対して他人と言う感情しか抱けなかった。

 新たな気配を感じたので視線をそちらに向けた。

 ボクと大して年齢が変わらない男性が、呆然とした表情で開け放たれたドアの前でこちらを見ていた。

 持っていた金槌のような形をした道具が彼の右手からこぼれた。

 重みを持った音が響く中、更に新たな人物がドアから2人登場した。

 小学生の低学年くらいの同じくらいの女の子と男の子だった。

 2人はボクの姿を見ると、同時に走り出した。

 抱き付いて来た2人の頭を撫でてやる。

 男の子の頭を撫でた左手に違和感を感じた。

 よく見ると、頭に(側頭部では無く)耳が生えていた・・・


「猫耳?」


 その声に、我に返ったのか、先ほどから呆然としていた男性が初めて声を出した。


「チリなのか?」


 ボクは質問をして来た男性の質問に答えた。


「ボクの名前は中島知平ナカジマトモヒラ。あなたの名前はケトでいいのかな?」


 何故か記憶だけは思い出せるので、彼の名前も“知っている”。

 そう言えば、抱き付いているこの子たちの名前も〝知っている”。

 最初に抱き付いて来たのが長女のチイだ。その妹のチハ、甥っ子のホニ・・・

 何かの法則というか、繋がりが有るというか、何かが頭に引っ掛かる・・・

 しばらく考えたが、これって、旧日本軍の戦車の名前と一緒の様な気がする。

 “チイ”は八九式中戦車甲型だ。


 うん、かわいいよはっきゅんかわいいよ・・・


 “チハ”はチハたんだし、“ケト”は多分軽戦車だろう。

 “ホニ”はなんだろう? 

 あ、砲戦車だった様な気がする。


 ボク、いや、今はボクが身体を借りているのだろう、この女性の名は“チリ”で合っている筈だ。五式中戦車とはまた渋いチョイスだ。チトは何処に行った? 記憶をまさぐると出て来た。甥っ子の死んだ母親の名がチトだった。


「今はボクも混乱しているので、少し落ち着くまで待って欲しい」

「チリと同じ口調で話すのに、違う人間?」


 ケトが呟くのを無視して、ボクは現状の把握に努めようとした。

 だが、その時間は与えられなかった。


「お母さんじゃないの?」


 3人の子供の視線が、見上げる様にボクの顔に注がれていた・・・

 特に長女の視線が痛い。

 幼いながらも端正な顔に悲しみが拡がって行く。 

 相変わらず、他人という認識が残る。

 でも先程よりは親近感が湧いた。


 うん、かわいいよはっきゅんかわいいよ・・・


 現実逃避に走ろうとする意識を無理やりに目の前の現実に向けた。

 いや、この場合は自分の身に起きている状況自体が現実離れしているのだが、パニックに陥っても状況は好転しない。少なくとも40年生きて来た経験から断言出来る。


「みんな大きくなったね」


 抱き付いている子供たち3人の目をしっかりと見て、声を掛ける。

 失敗した・・・・・

 余計な期待を持たすべきでは無かった。

 全員の瞳が喜びに染まってしまった。

 

「でも、すまないが、ボクは君たちの母親では無い。いや、正確に言うとチリさんの記憶を持った他人なんだ」


 3人の子供たちの表情が、理解出来ないという表情に一瞬にして変わった。



 いや、申し訳ないが、ボクにも今の状況が理解出来ないんだ・・・・・・・



如何でしたでしょうか?


 今後もエッセイ【mrtkの「キャリアを活かした『なろう』投稿作品創作メモ」】で設定を考えた後に、小説にする形になる筈・・・・・ 多分(^^;)

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