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序章 2人の少女
ドン、水に落ちる鋭い感覚に少女は息を呑んだ。だが、開いた口から入ってきたのは大量の水で、空気を得る事は出来なかった。声を上げる事さえ出来ず、体を動かすことさえままならない。
水を吸った衣服は酷く重く、まるでコンクリートに固められてしまったかのようにも感じる。
少女の上に、もう一人の少女も落ちてくる。殆ど意識が無いはずなのに片割れは少女に手を伸ばす。まるで少女を少しでも引っ張り上げようとするかのように。
少女もまた、願う。自分は無理でもいい。この、人の事ばかりを大切にしている片割れだけでも生きて欲しい、と。生きて、生きて幸せになってほしいと、心から願う。
少女の手と片割れの手が触れた。それはなんとなくそんな気もする、と言う程度の感覚だったが、水の圧力に意識を失いそうになっていた少女にとってはたった一つの光のような気がした。
息も出来ず、沈むしかなかった少女の意識が暗転していく。その暗闇の中に青くて透明感のある綺麗な光がはじけたような、そんな気がした。