La Moitie Sirene
日本は、ここ1,000年程でめまぐるしいほどの変化を遂げた。
西暦2138年 日本経済の破綻
日本は災害大国といわれるだけあり、様々な災害に見舞われる。その度に国は借金をし、人々の救済にあてた。その上、育児金やら、他にも様々な資金が必要となり、その度に借金は増えていく。
結果、政治は安定せず、国会や総理大臣はころころと入れ替わる。その度に国民からの信頼は失われていき、人々は国に税金を納める事さえしなくなっていった。
ごまかしながら動かしてきた国が破綻し、国会が消えてしまったのは当然の成り行きといえる。
西暦2138年~2261年 暗黒時代
国会が破綻すると同時に、後の人々が《暗黒時代》と呼ぶ時代が幕を上げた。国が破綻する、というのは町が破綻するのとは訳が違う。誰も助けてくれない。
国が動かしていた組織は全て停止し、無法地帯となった日本に立ち入る者はいなくなった。犯罪が横行し、殺人や泥棒は当たり前。それを咎める人も、規制する法律もその時の日本には存在しない。一歩外に出れば人の遺体が転がっていた。
食べる物がある人々は隠れて生活をするようになり、何も持たない人々はその人たちを探し、食べ物を奪い、時に命さえも奪った。
外国人はそんな日本に足を踏み入れる事さえない。例外は、罪を犯し、追われた人だけ。日本に入れば追いかけて来ない。日本に逃げ切れれば無罪というのは犯罪者の間での暗黙の了解となっていた。
それは、「日本」という国が滅ぶまでのカウントダウンのような時だった。
西暦2161年 新生日本の誕生
そんな地獄の時は突如終わりをとげる。
2161年、9人の人間が立ちあがった。彼等が束ねる9つの家の人々は、表に出るなり瞬く間に国を立て直す。国会の代わりを9つの家が行い、警察組織を作り、自治体を作り、落ちぶれ、苦しんでいる人々を残らず拾い上げた。
食べ物を与え、仕事を与え、家を与えた。そして、完全に途絶えていた外国との国交を回復させる。もちろん日本に潜伏していた犯罪者を全員探し出し、母国に強制送還させた。その大仕事を、彼等はたったの10年という短い時間でやり遂げた。それはまるで神のような早業である。
人々は、9つの家を神家として崇め、彼等に9つの数字のつく家名を与えた。
一条、二宮、三神、四葉、五藤、六峰、七尾、八夜、九我。そして、その9つの名を他の家が名乗る事を禁じた。
民主主義として栄え、滅んだ日本は、神家を中心とする国家へと生まれ変わった。
これは、そんな日本の再生から、約800年が過ぎた、西暦3012年の日本の物語。




