蛙男
久しぶりに書いてみたのでリハビリ感覚になってます
恋愛ものとは程遠いですねぇ……
「もう、あんたとは一緒になんていられない! 気持ち悪いのよ、この蛙男!」
そう彼女に言われたのが一か月前だ。
喧嘩の原因は些細なことだったが、前から彼女は私と別れたがっていたのだ。
彼女とは高校の頃から付き合っていたが、大学に入学した辺りから日増しに私の容姿は変化していき、醜い魚とも蛙ともとれるようになったのだ。
最初は私の変化も受け入れるなんて言っていた彼女だったが、それも半年を過ぎた頃から、何かと連絡が取りづらくなったのだ。携帯でメールを送っても電話を掛けても返事はすぐには返ってはこなかった。大学内で会っても予定があるなどの理由でろくに話をすることができなかった。
そんなことが続き、また半年経った頃に私は思い切って彼女を呼び出した。呼び出された彼女はばつが悪そうだったが、互いの気持ちを出しきった会話をすることで、また寄りを戻せたと思った。
だが、そう思ったのは私だけだった。
やはり、それからも彼女は私を避け続けた。私は何度も彼女に話をしようとしたが、上手くはいかなかった。
そして、別れを告げられたのが一か月前ということである。
ショックだった。
私は心から愛していたが、彼女は私の変化前の顔しか愛していなかった。
隠していたことだが、私の両親も私と同じような魚とも蛙ともとれる顔をしていたのだ。二人は既にこの世におらず、事故で海へと消えた。
私は残された財産だけを頼りに生きた。親戚と呼べる者がいなかったからだ。
そうして、なんとか生きてきたとき出会ったのが彼女だったが……いや、もう彼女のことを話すのは止めよう。
ここで話したとしても仕方のないことだ。
彼女に振られた私だったが、絶望はしなかった。
私の容姿に変化が始まった頃に同時に海への強い憧れにも似た気持ちが起きていたのだ。どう言葉にしたらいいのかわからないが、そのときは海が私を呼んでいると思えた。
そして、彼女に振られたこともあり、半ば自暴自棄となり私は海へと飛び込んだ。事故で海へと消えた両親が待っているかもしれないとさえ思った。
だが、驚きが私の身体を駆け巡った。
なんと、私の海の中でも呼吸ができるようになっていたのだ。
さらに驚きが続いた。深く、深く潜っているうちに私とよく似た魚とも蛙ともとれる顔の集団が私を迎え入れたのだ。
その中には海へと消えた両親もいた。
何が何だか理解できない私であったが、両親の話を聞いたところ、私たちは人間ではなかったのだ。
私たちは海の底で眠る神に仕える偉大な種族の末裔であり、神が眠りから覚めるまで、静かに待ち続けるとのことだった。
同胞として迎え入れられた私は最初こそ戸惑ったが、同胞たちは親切で陸上にいた頃よりも私の生活は充実していた。
それに陸上での傷心も同胞の中の一人の女性と出会うことで癒された。
そして、今ではその女性が新たな彼女となってくれたのだ。




