第15話
入院や手術、葬式等イロイロとドタバタで更新できず、申し訳ありません。
まだまだ忙しい状態が続きそうなので、更新速度が遅くなりそうです。
第十五話 ~新たな同郷人と過去、そしてこの世界では~
セリーが愛奈美を看始めてからちょうど2時間経った頃、愛奈美が目を覚ました。
「あれ・・・・私は・・・・・・一体・・・・・」
突然意識が戻るといった様子を見せる愛奈美に気づいたセリーが光魔法で俺と寧香に連絡を送ってくれた。連絡をもらった俺と寧香は七割程完成している基礎の土台建造を一旦やめ、愛奈美とセリーがいる所へ風魔法で飛んで向かうことにした。
にわかに信じがたい事をこれから愛奈美に話さなければならないという事実から目を背けて現実逃避したくなるが、セリーに話を始めてもらうよう光魔法で連絡を取る。
連絡を受け取ったセリーは早速、現状を上手く飲み込めずにオロオロしている彼女に声をかけた。
「おはようございます。体調は如何ですか?」
「あ…………おはようございます………ところでここは?」
現状を飲み込めていない割には落ち着いて受け答えできている様子なので、セリーは俺たちの到着を待つように言った。
「あぁ、安全なところですよ。では暫くそのまま安静にしてくださいね?もう暫くすると、あなたと同郷の人がやってきますから……」
「………同郷の人?」
と、愛奈美は見るからに疑問を抱えている様子でセリーをじっと見つめるが、セリーは俺たちがもうすぐ到着することを『遠見VIII』のスキルと風魔法の『探知』で感じ取っていたため
「もうすぐですよ。」
と言うだけで取り合わなかった。
その言葉を聞いただけでは疑問が解決するはずもなく、頭にクエスチョンマークを浮かべながら仕方なく同郷の人と呼ばれた人が来るのを愛奈美は待つことにした。
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俺と寧香がセリーたちが待つ場所へ合流したはいいが…………愛奈美さんを見るとすぐに驚いた様な表情で俺たちを愛奈美さんは見ている。
そんな中、俺と寧香はそろって一礼し、セリーからどんな状況かを説明してもらってから取り敢えず話をしても問題ない環境を整えることにした。
そして開口一番で寧香は………
「さて…………トモ君。どうしよっか…………」
と俺に丸投げしてきた。
「どうしよっかって…………とりあえず話ができる環境を整えたから、自己紹介から始めようよ。わかりやすくさ。」
そう言って俺は寧香と共に話ができる空間を結界で作り上げたため盗聴の恐れがなくなり、元いた世界の話をしても問題は一切発生しなくなっているので自己紹介から簡単な経緯まで話をする算段を立てた。
「それじゃ私から……私は蓮月寧香、トモ君の彼女兼パートナーね~」
「俺は蓮城僚也。寧香の彼氏兼パートナーで、この世界で始めた『蒼紅』のリーダーかな……一応。まぁ細かい話は後からとして、よろしくね。」
「私はセリー。トモヤさんに雇われて『蒼紅』の経理を担当してます。よろしく」
俺たちの自己紹介が終わったあたりから疑問は少し解消されたのだろう、多少だが愛奈美の顔色が良くなっているように見える。
多少時間がかかってはいたが、愛奈美も俺たちに続いて自己紹介……とは言っても名前だけだが……をし始めた。
「はぁ……よろしくお願いします…………私は、愛奈美です。……………………………………あの、ホントにおじさんが言ってた通りなんですか?」
そんな愛奈美の問いかけに俺と寧香はお互いを見やってアイコンタクトで二人が同じ人物(?)を思い浮かべたことを確認すると寧香がすぐに答え始めた。
「おじさんが誰なのかは………………何となく創造神オメシワトルだと思うけど、とりあえず愛奈美さんの話を聞かせて欲しいから、話をしてもらってもいいかな?」
「はい…………私はいつものようにトモヤさんとノドカさんというピアニストとシンガーソングライターが共演した時の曲を聴いてから『AnotherPlanet』というVRMMOゲームをやろうと思ってログインしたんですが、本来ログインしたあとに出る世界ではなく真っ白な空間に飛ばされたようで、そこで変なおじさんがやってきて………………」
そう言って長々と説明を始めた…………
~~~説明中~~~~
「………………ということなんですが」
随分と詳しく、そして長い説明が終わり、俺たちと若干この世界に来る理由は違うが、おそらくそのおじさんが愛奈美さんをこっちの世界に飛ばすために踏んできたプロセスは俺たちの時のものと大体同じであろうと思いながら今まで出てきた情報を自らの記憶とオメシワトルとの会話と照らし合わせると…………
「「やっぱり創造神オメシワトルだ、そのおじさん。」」
と、俺と同じ結論に至ったのか寧香と声がそろってしまった。しかも、一言一句違わずに…………
あぁこんなことを平然とやってのけてしまうからセリーに普通じゃないだとか否常識だとか次元が違うだとか言われるのだろうなぁ、と思いつつも俺は話を進めることにした。
「それじゃ、俺の考えが寧香と揃ったことだし、ほぼ間違いなさそうだから次はこっちの話をしようかね。
先に結論を言ってしまえば………………オメシワトルの言ったことは事実だし、全てそのとおり起こっている。
そして、ここにいる寧香や俺も愛奈美さんと同じように地球…………まぁオメシワトルから言えば『Earth』なんだろうけど…………地球から来たんだよ。
同じ並列世界から来たかは定かではないが、オメシワトルが同郷と言いながら実は違う世界からでしたなんてそんな単純なミスをするとは思えないから、まぁその意味では先輩ってことになるのかな。それと自己紹介の時に名前が上がったピアニストとシンガーソングライターってのは正真正銘俺たちだよ。今となっては元の世界には存在しないけどねぇ。一応オメシワトルから地球から新たに仲間がこの世界にやってくると聞いていて、オメシワトルとか神々が存在する天界で一度やってくる人たちに会わせてもらったんだ。その時にオメシワトルが言っていたけど……愛奈美さんは望んでこの世界に来たそうだね。この世界のことについて何か聞いたかい?」
「えっと…………人種と能力、世界観は」
「そっか。それなら大体わかると思うけど、『AnotherPlanet』の能力がそのまま本来の個人が保有する能力に加算という形で受け継がれてるんだよね。
まぁ………肉体の感覚は以前と同じかどうかまでは流石に保証できないけど……後で確認しておくといいよ。」
「うん、わかった。それで、私は一応この世界で自由なんだよね?」
「そうだ。何もかも自由で、全ての行動の責任は自分に戻って来るから覚悟さえあれば何だってできるよ。」
「へぇ…………じゃあの能力の範囲でやりたい放題できるんだ。………………それで、ここは何処なの?」
その質問をするのは2度目だと愛奈美はしきりに目で訴えてきた。
俺はこの質問に対してどう答えるのが最良であるかを考えたが、ありのままを伝える事が愛奈美の求めている答えのような気がして、今までの経緯も踏まえて全てを話すことにした。
「うん、その疑問は最もだね。一言で答えるならティロス大陸。でもそれだけが聞きたいわけじゃないでしょ?」
そう言って愛奈美の表情、仕草、心理を探り、自分の考えていた事が間違いではなかったと感知し、寧香とアイコンタクトでこれから何をするのかを伝え、これから話す内容に必要な場を整える。
「俺と寧香が何故元いた世界を離れて今いる世界で生活しているのかっていう今までの経緯も含めて話をしようと思う。ちょうどいい機会だからセリーも愛奈美さんと一緒に話を聴いてほしい。」
その言葉がキーワードだったかのように俺と寧香は即座に尚且自然に、まるで元から魔法で防音結界があったかの如く結界を形成した。その上で、二人の意思確認をすると、二人は首を縦に振り、これから話されるであろう内容を一つも漏らさないようにという意思が見え隠れする姿勢で俺たちを見つめている。
その場の雰囲気が少しだけ張り詰めたモノになったが、それはある種仕方のないことだと割り切って俺たちは話を始める。
「一応この結果内の音は外に聞こえないよう防音結界をはったから情報の安全面に関しては問題ない。これから説明することは俺たちがどういった経緯でこの世界に渡り、何故このティロス大陸で生きることにしたのかを話そうと思う。詳しく話をしたいから、創造神オメシワトルかその系譜の神をを呼ぶね」
俺は創造魔術に新しく加えてもらった通信機能をさっそく使ってオメシワトルを呼び出した。
「やぁ、創造神オメシワトル。俺たちがこの世界に来た説明するのに必要だからさ、ササッと降りてきてくれないかな?」
【お主らは優秀ではなかったのか!?アホか!?アホなのか!?下界に下るのはそれなりに力が必要なんじゃぞ!?そうそう簡単にはできんわい!!】
「まぁまぁ、そんな冷たいこと言わずに…………ただの冗談なのに…………まぁ冗談はさておき、ショチトルを呼んで欲しい。ショチトルも説明出来るだろうし、何よりこれから下界で生きてく事に関する、場合によっては『邪神』も関わってくる重要な話なんだ。」
【ふむ…………なれば、ショチトルを向かわせるとしよう。我らの系譜はいち早く『邪神』に関する情報を手に入れ対策をする事が出来るが、ほかの系譜の神々はまだ確信をもってはいないようなのでな、下界で話す故に神々による盗聴を避けるよう準備はしておいておくれよ?どこかに『邪神』と関わりをもっている神々がいても可笑しくない状況なのでな。】
そう言った途端に通信は途絶え、マクイルショチトルが俺たちの目の前に姿を現した。
そして辺りを見渡し、高精度な防音結界が既に用意されていることを一瞬で理解し、俺と寧香に対してほんの一瞬ではあるが微笑み、自ら名乗った。
【どうも、みなさん。創造神オメシワトルの系列の音楽と踊りの神、マクイルショチトルです。僚也様の演奏を聴かせてくれるんだって?】
「……………………あ~…………それは今度ね。俺たちがこれから愛奈美さんとセリーに今までの経緯を説明するから神々に関することを説明して欲しい。」
【分かりました。そうそう、オメシワトルから伝言があるのでそれも皆さんに話しますね~】
「わかった、ありがとう。それじゃ、役者も揃ったことだし説明し始めるね。」
そう言いて説明を始めた。
今俺たちがいる世界から重罪の殺人鬼が魂を俺たちが元いた世界に飛ばし、無差別に人間の身体を乗っ取るという禁忌が行われたこと。
それから逃れるために創造神オメシワトルとその系譜の神々が俺たちを助け、今いる世界に飛ばしたこと。
後から殺人鬼を消滅させ、黒幕には『邪神』や『悪魔』が関わっていたこと。
最悪の事態を考慮してオメシワトルの系譜の神々は対処していること。
この世界にも既に悪魔が現れていること
俺たち以外にもこの世界に飛ばされて生きている人たち、転移者がいること。
転移者は軒並み平均以上の実力があること。
この世界のヒューマンは特殊な病に侵される可能性があること。
俺たちは国家による支配を恐れティロス大陸に逃れ、ここで生活する基盤を築き上げるため『蒼紅』というギルドを設立したこと。
ティロスにも意外なことに貴族がいた事。
ティロスだけ、国家が存在しないため、悪魔の騒ぎに乗じて国や貴族に対するクーデター等の駒として利用されることがないこと。
『蒼紅』だけでなく『商人ギルド』にも加盟してること。
俺たちの生活は元いた世界の水準と遜色ないものであること。
俺たちの技術はこの世界に存在する国の技術をも凌駕する部分があること。
これはあくまでゲームではなく現実であること。
「あとは………………ゲームと似たようなシステムが存在する世界なんだよね。スキルや種族にレベル制があったりするからもちろん上限もある。」
そう言った時、ショチトルが正確に俺たちも知らない話ではあるが、訂正がはいった。
【いえ、オメシワトルの話ではレベル制は一部のみを残し、種族レベルの上限をなくしたと言っていましたが…………】
「「え!?」」
レベルの上限が無くなったとなると、この先まだまだ成長する可能性がある。それだけならばまだ驚かないが、全ての種族においてレベルの上限がなくなったとすると、上位個体の発生の仕方が謎に包まれているということになる。それに加え、上位個体の能力に限界が存在しなくなってしまい一部の種族に大きなアドバンテージが加わったのではないかという懸念もある。
そう考えている最中にもショチトルが補足説明を続けている。
【…………あまりにも能力に幅が出来てしまうので上位個体や能力の優れている種族には何らかの枷になるものが用意されたとのことです。最もわかりやすい例は能力のバランスが極端に偏ることなくまんべんなく能力が上昇しオールマイティー性を遺憾なく発揮することが可能なヒューマン族には魔力欠乏症という病がその枷に当てはまります。】
今の補足説明によって魔力欠乏症は根本治療が不可能であるということが分かってしまったが、そんなことよりもこの先俺と寧香の二人でも太刀打ちできない人物が現れても可笑しくない状況にあるという事実を真正面から受け止め、その為の対応を考えなければならない事も理解できる。
重大な内容を聞かされたため、俺たち4人は誰ひとりとして口を挟まず、ただ黙って現状を理解し、行動するために必要なことを頭で考えていた。
暫し重い沈黙が続いたが、永遠に続く訳もなくすぐに話が再開される。
「それと、個々の元いた世界での能力にゲームの能力が加算させるシステムだから元いた世界で使える特技だとかはこの世界でも通用する。俺や寧香も実際に使ってみたが問題は見られなかった。まぁ、話はこれで以上かな。ありがとう、ショチトル。」
【いえいえ、これぐらいのことでしたらまた呼んでくださいねぇ~。それと……次は僚也さんの演奏を聴かせてくださいね?】
「わかった。最高の演奏をすると誓うよ。」
そう返事を返すとショチトルはにっこり笑って【期待してますね】と一言残し、天界に一瞬で戻っていった。
あとに残った俺たちは今後の事について話をすることにした。
「まぁ話をした通り、この世界でどう生きても自由だ。所持金も愛奈美さんはある程度持っているだろうし、この世界での感覚の違いから動きが若干ぎこちないものになるかもしれないけれど、慣れればかなりの能力を発揮できる。これから生きていく上で助言が欲しいなら、まぁ俺たちも殆ど来たばかりで大した助言はできないかもしれないができるだけのことはするつもりだ。それを踏まえたうえで愛奈美さんに聞きたい。………………これからどうする?」
チラッと愛奈美の表情を盗み見るが、何やら強い決意をしたような雰囲気が感じ取れる。
ひょっとすると愛奈美さんは………………
毎度のことですが、誤字脱字等ありましたら報告していただけると幸いです。