第13話
少々予定が立て込んでしまって遅れました。
第十三話 ~神からの提案~
Side~僚也~
オメシワトルとマクイルショチトル、ミクトランテクートリの待っているところに俺たちは戻ってきた。
「いやぁ…………どうもありがとうございます。おかげで事前に話をしておくことができました。」
そう言いながら若干纏っている雰囲気が違うことに気づいたのであろう、オメシワトルの表情が若干緩んだのを俺は見逃さなかった。
【そうか………………それでは、本題に入りたいんだがいいじゃろうか?】
「はい、もちろん」
【『earth』の創造神と話をしてお主らを戻すことができるようになったので呼び出したんじゃが……………… お主らはどうする?戻るか?それともこのまま『planeta』に残るか?】
予想通りの内容だったので、その問いかけに全く答えずに別のお願いをしてみた。
「………………お願いがあります。俺の創造魔術で楽器を作れるようにしてくれませんか?」
【ふむ……まぁその程度ならいいじゃろう。しばし待て………………】
よし、叶えてもらえそうだ。これで懸念していた娯楽面の不安も解消されるかもしれない。
「はい。ありがとうございます。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~暫し、お待ちを~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ほい、できるようになったぞ…………それにしても何故今なんじゃ?】
俺たちが出した答えなど見透かしているだろうに…………そう思いつつもしっかりと答えることにした。
「そりゃ、二人共『planeta』に残るからですよ。そこでせめて楽器があれば心が休まるので……ね?」
【ふぅ………こちらとしてもその選択は嬉しいんじゃが………我からもお願いしてもいいだろうか……………】
そう言われて一瞬何か他の面倒なことに巻き込まれるのではないかという懸念が生まれたが、とにかく聞いてみなければ始まらないので聞いてみることにした。
「なんでしょう?」
【また、あの曲をここで弾いてはくれんか?】
そんな簡単なお願いに少々驚いたが、快く引き受けろと隣から目線で訴えている愛しの彼女がいるのでその通りにしよう。
「あぁ…………いいですよ。ピアノは……あぁ、自分で作れるんだった…………」
そう言ってピアノを出現させたあと、は心を鎮めて弾き始めた。
今までの思いとこれからの決意のもと、美しく、荘厳に演奏を終えたと同時に周りから拍手喝采がおこった
【いやぁ〜。やはり君の演奏は素晴らしい…………】
「ふふ・・トモ君ってば私の目の前でこんな演奏をするなんて…………また惚れちゃうでしょ?」
その言葉を聞いて、俺は寧香を見るが………………
顔を真っ赤にさせながら小さくうずくまるという、とても可愛い反応を繰り広げ、俺の心に大きな衝撃を与える寧香に対して
なんで、そんなすっごい可愛い反応するかなぁ…………ドキドキしちゃうじゃんかぁ…………
などと思わせていることを本人はまだ知らない。
少し自分が落ち着いていないことを一瞬で理解し、しばしの間集中してからオメシワトルに向きあう。
「えっと…………それでオメシワトル。これだけの用ではないのでしょう?」
【ふぅ…………流石じゃな…………最初にお主らに説明した内容の補填から話そうかの。
お主らの世界に飛んでいった重罪の殺人鬼の裏には『邪神』や『悪魔』が関わっておってな、最悪の事態を想定して我の系譜の神々は対応しておる。】
「「最悪の事態?」」
【そうじゃ。最悪の事態は数多の邪神、序列第一位から第七位、第一級、第二級悪魔たちと我の系列を含む神々の闘争じゃ。
それよりも若干被害が少ないのが今回関わった邪神や悪魔と我の系譜の神々との代理戦争かのぅ…………代理戦争の場合はおそらく『planeta』で行われることになってしまうじゃろうなぁ………………既に第三階級の悪魔を『planeta』の各地で確認しておる。
そこで、下界の大陸を統治しておる王族、皇族たちは魔王が復活するだの、邪神が降臨するだのと大騒ぎじゃ。その騒ぎに乗せて一部の権力者が前回お主らと一緒に転移させた者たちの一部を勇者と呼び悪魔たちの相手をさせようとしたり、大国を討ち滅ぼし自国の利益を上げようと画策しておるものも多く出てきておる。中にはクーデターまで計画しておるものもいるようじゃ。】
そう聞いた瞬間、自分たちが選んだ大陸は正解だったと心底思ったが、それもいつまで続くかわからないと直感が告げている。
隣を見ると寧香も同じことを考えていたようで、不安そうに俺を見つめている。
「それで、その大陸間同士のアホらしい闘争は置いておくとして、邪神って何ですか?」
【邪神とは元々神だったものが堕落した者や狂った者のことじゃ。いくら狂っているからといって、堕落したからといって元は神じゃ。侮れん力をもっておる。
その力が全て振るわれてしまえば数多くの星が消滅してしまう。そのような事態は避けなければならない。じゃからこそ邪神たちを打ちのめしたいが…………どこにおるのかさっぱりわからぬ。】
「………………面倒なことになってきているのですね……俺たちは当面のあいだはティロスの強化と悪魔をできるだけ打つって目標で動いておけと?」
【いや、それほど悪魔に注意を払わずともよい。第二階級の悪魔ならば話は別だが第三階級程度の悪魔ならばお主らも討ち滅ぼすことは可能じゃろうて。
じゃから、今は何も難しいことは考えなくてよい。代理戦争も起きないよう我ら神が対応する。じゃが、もし万が一対応できんかった時には代理戦争で我らの側に付いてくれぬか?我が知っている限りお主ら二人のコンビがこの世界で最も強いのでな。タフじゃし……代理戦争は柘榴石・紫水晶・藍玉・水晶・翠玉・真珠・紅玉・橄欖石・青玉・蛋白石・黄玉・瑠璃石の12日ある一週間のうち紫水晶・藍玉・水晶・真珠・紅玉・青玉・黄玉の日に行われ、数年にわたることがあるのでのぅ…………お主らぐらいのスタミナがなければあっという間に負けてしまうのでな】
寧香と目を合わせてからその頼みを素直に承諾する。
「「わかった、その時になったら協力する」」
【有難う、感謝する。それともう一つお主らにはあまり関係ないかもしれぬが忠告しておこうと思ってな。お主らと同じように転移させられた者の中には元の世界に戻る者もいるじゃろうが、そうでないものもおる。そして、転移させられた者たちは意外と強い。じゃからこそ良からぬ事を企んでおる者もいるようじゃ。気をつけるのじゃぞ。】
「あぁ、心得た。………………それで、今回の用事はこれで全部か?」
流石にもう要件はないだろうと予想してそういったのだが、その予想は裏切られた。
【実はもう一つあっての。『earth』の創造神アトゥムとの相談でお主ら二人以外にもここ『planeta』に人を火、水、風、土、光、闇の6ヶ月の最初の日に飛ばすことが決まったんじゃ。はじめは一年周期、つまり360日ごとに送る話があったんじゃがそうしてしまうと一度に数多くの人を転移させることになり負担が大きいんじゃ。じゃから6ヶ月ある季節の始めの日になったんじゃ。
そこで…………今回は記念すべき第一回のお友達を君たちに紹介しておこうと思ってのぅ~。それと……僚也たち二人で我の後を継がぬか?現人神として地上に戻り、研鑽を積み、然るべき時期が来たとき、再び我が其方らを呼び寄せ、我の後継になってもらいたいんじゃが…………】
それを聞いた俺たち二人はそろって同じ表情をして
「「………………え~」」
と不満をあらわにしたが、重ね重ねの説得を続けられることになるとは、この段階では二人とも気づいていない。
【さて、ミクトがそろそろ連れてくる頃だと思うんじゃが…………】
そう言ったときミクトランテクートリが姿を現した。
【おい、オメシワトル。連れてきたぞ】
そう聞いた瞬間、また前回のように何人も宙に投げ出された人を受け止めなければならないのかと身構えたが、今回はその必要がなかったようだ。
【おぉ、連れてきてくれたか…………って、また皆気絶しておるのか…………】
俺たちと同じように全裸で数人が寝かされている。
中には女性もいたので、俺はさっと目線を寧香の方に移す。
「あはは…………俺らも最初はあんな感じだったねぇ…………」
「そうだったねぇ〜。」
「あの時は俺と寧香は自力で起きたからねぇ〜。でもそのあと『planeta』の下界に落とされてからは寧香の意識戻ってなかったよね」
そんな俺の台詞を聞いてオメシワトルたちは驚いている。
【なんと………………意識が戻らなかっただと…………それは不味い……こちらの不手際だ。すまんかった】
「まぁ、あの時はアンって人(幽霊)に助けられて問題なかったから…………結果的には」
【そうか…………すまなかった。ショチトルよ、何か二人にできることはないか?】
【そうですねぇ……加護を付けるのは当然として…………何か特典でもつけましょうか…………それとも希望するものを用意しましょうか…………とにかく僚也様の要望を聞くのがいいかと…………それと、後継は早めに決めていただかないと、情報処理や指示系統等が滞るのですが…………」
そこでマクイルショチトルが珍しいことを言ったようでミクトランテクートリが口をはさんだ。
【ショチトル…………なんで、『様』なんてつけてるんだ?お前はオメシワトルにしか付けてなかったじゃないか】
若干顔を赤くしながらマクイルショチトルはスラスラとこたえた。
【ミクト、それは…………だって、あんな素晴らしい演奏をしていただいたんですよ!感動するなって方が無理です!】
そんな表情を見て、ミクトランテクートリは心底呆れたようにため息をついた。
【…………そういえば、マクイルは音楽と踊りの神だったなぁ…………それなら仕方ないのか……はぁ、また俺にとばっちりくるなぁ】
そんなやりとりを見ていたオメシワトルは満足そうな笑みを浮かべながらマクイルショチトルに話しかけた。
【ほほぉ〜。ショチトルも僚也を気に入ったか】
【はい!それはとって〜も】
【ほほぅ〜…………楽器を作れるようにさせたのは正解だったかもしれないな……このとおりショチトルも其方を気に入っておるのだ。素直に後継になってくれぬか?】
これ幸いと後継にならないかと説得してくるが、そんなつもりは一切ないのでバッサリと頼みを切り捨てる。そんなあまりにも無駄な議論をしているオメシワトルをミクトランテクートリが会話の軌道修正をする。
【オメシワトル…………それは後にして、こいつらについて紹介しろよ?】
【あぁ、そうだなミクト。話さなければな…………説明しておくと、今回連れてきたのは『AnotherPlanet』をやっていた人たちだ。もちろん、こちらに来る意思のあるものしか連れてきていないからのう…………ふぉふぉ、どいつもこいつも非現実を求めておったからの〜】
などと、自ら話を脱線させつつあった。
【オメシワトルよ…………そうではなくて人の紹介……】
そう言ってミクトランテクートリはオメシワトルを急かす。
【わかっている、ミクト。さてと、順番に紹介していくか…………
まずは、愛奈美、調薬師で純度はVだ。この女は僚也、お主の演奏を聴いて以来お主の虜になっているのだ。我が呼びかけたとき、お主はいるかどうかが一番気になっていたようだったので連れてきたんだ。その隣の女が躄佳奈、侍で純度はIVだ。次の男は紅沢義彰。こいつはミクトのお気に入りだ。因みにお主らは我のお気に入りだが………………まぁそれはさておき次だ。御厨雅哉、一応ゲームではプレーヤーキラーをしていて、ミクトも少し興味を持っているようだった。次、蟹谷有紗。この女はプレーヤーキラーで、ふむ、胸も大きいのぅ…………】
オメシワトルの好みだったのか少々興味を示していたが、ミクトランテクートリが脱線しそうなところを修正した。
【おい、オメシワトル。今はそれ関係ないだろ・・・】
【あぁ、すまんミクトよ。 今回はこれで全員だ。】
それを聞いて疑問に思った俺は質問した。
「それで今回もこいつらの意識は戻らないのか?」
【いや、それはない。今回はメツトリに下界まで安全に連れて行かせる。】
そこで人手不足を少し解消するために何人か引き取れないか交渉してみることにした。
「そうか…………ところでオメシワトル、そいつらはどこに連れて行くんだい?」
【ふむ……とりあえず王都に連れて行くつもりだったが…………僚也はそれだと都合が悪いか?】
「ん〜何人か俺のとこに連れて行きたいんだが…………ダメか?」
【ふむ…………まぁ問題ないが。それで、僚也たちの要望とはそのことなのか?】
「いや、『闘気』について詳しく教えてくれ。それと後継の件を諦めてくれ。」
【ほぉ…………モンスターしか使えない『闘気』をどこで知った?それと、後継の件は諦めんぞ。】
「アンという人物(幽霊)から渡された記憶に存在したのでね…………俺らも使えるんだろ?」
【なるほど…………確かに使うことは出来るだろうが……まぁ要望というのであれば、我がお主ら二人に闘気が使えるようにしてやってもいいが…………後継を認めればしてやろう。それでいいか?】
「ん〜…………出来ればダンジョンを作るのでそのダンジョンについてあまり干渉しないでもらえるのならそれも追加で頼む。それと、後継は諦めろってば!」
【ダンジョンは我の管轄ではないからなぁ…………ショチトルの管轄だから干渉しないのは無理かもしれんが……後継は何としても其方らがいいのじゃ!】
「何故!?」
【そりゃ〜…………ショチトルが僚也を気に入ったからのぉ……優遇と我が儘が降りかかってくる可能性があるのぅ…………それと、闘気まで使えるのじゃからすぐにでも現人神になれるからじゃよ!】
「え〜……それはそれで困るんだけどなぁ…………後継の理由も建前とかいらんからサクッと本音プリーズ」
【ほぉ〜………………この仕事疲れたから、代わりにやっておくれ。】
「嫌だ!!……まったく…………」
この二人も大概似た者同士であるが、そのことをお互い頑として認めようとしなかった。
【よし、それでは今回の報酬でお主の創造魔術に通信機能を加えておこう。そうすれば代理戦争がもし起きたとしても通信を使っていち早く伝えられるのでな。他にも希望はあるかね?】
「代理戦争の通信って建前はいいから本音プリーズ。」
【通信できるならいつでも後継になりたい時に連絡をとってもらえるじゃろ?】
「はぁ…………まぁいいや、それは置いておくとして、出来れば『planeta』の海路を向上させて、ある程度好戦的にしてもらえれば十分だ」
【ほぉ〜。いいだろう。しかし何故好戦的に?】
「好戦的にすれば、向上心と競争心によって強くなるから魔物とかとも戦える人が増えるだろう?…………あ、ところで、そっちの男二人の純度は?このまま定期的に送るのなら種が限定されていかないか?」
【あぁ、問題ない。純度は最高でもIIIまでに調整するのでな…………お主もそうしようか?】
「いや、このままで結構だ。」
【それにしては、お主らの仲間とは避妊もせずにやっているではないか…………いいのか?】
そう聞かれると先程までウトウトしていた寧香と一緒に口をはさんだ。
「「いいの!!」」
【…………そうか。では、お主らの性欲を勝手に少しあげておくよ…………それと何人か連れて行くのなら選んでおくれ?】
「そうだねぇ…………ねぇ寧香。どうしようか…………」
「私は…………ん〜……トモ君に任せるけど……後でキスしてよ?」
「あはは…………いいよ。情熱的なのをね。」
「ふふ。トモ君が浮気をしないと知ってるけどさぁ…………ちょっと心配で……」
「…………そっか。大丈夫だよ、ずっと一緒にいるから……」
そう答えつつ俺と寧香は二人の世界に入ってしまい、オメシワトルら神々に【もう、おぬしらくっついちまえよ】などとツッコミを入れられたりしたが、二人はそんなことを気にもかけず二人だけの甘い世界を満喫し…………
といった具合に時間だけが淡々と過ぎていった。
………………が、流石に神々も暇ではないのでこちらの世界へ戻ってくるよう二人に促した。
「さてと、それじゃ連れて行くのは愛奈美を」
【ほほぉ〜…………やはり女なのだな】
「う…………そんなこと言っても、プレーヤーキラーを育てるのは嫌なんでね」
【…………そうか。それでは、連れて行ってやれ。その前にお主たちに闘気を扱えるように与えておくか。それと、報酬の件だが準備が必要な大掛かりなものはなるべく早めに決めておくれよ?】
「おぉ。了解です。必要になったら通信で伝えますよ。ありがとうございます。」
そう言ったあと二人の周りが緑色の光で包まれた。二人の頭の中に闘気の使い方が入り込んできた。
【さて、伝えたが、これで良いか?】
「「どうも」」
【さて、それではお主らを『planeta』に戻すがいいか?】
「「よろしくお願いします」」
【では………………また会おう】
オメシワトルがそう言ったあとマクイルショチトルが俺が選んだ愛奈美を含めた三人を連れてティロスに向かった。
毎度のことですが、誤字脱字等ありましたら報告していただけると幸いです。
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