第9話
一応、何度も確認したのでないと思うのですが、話の中で
矛盾点等ありましたら、報告していただけると幸いです。
第九話〜ハプニング〜
僚也はセリーとシオリとサーシャと一緒にティロスに移転した『ホーム』に戻ってきた。
「さて、ティロスについたところで二人に説明しておくとするか。セリー、セレーネを探してきておくれ。」
「はい、分かりました。じゃ、見かけたらノドカさんも呼びかけてきますね。」
「よろしく頼むよ〜」
そう言って俺はセリーを送り出したあと、改めて二人に向き合った。
「さっきも詳しいことはあとで話すって言ったけど、その説明からするから二人共、家の中に入っておいで。」
俺は二人にそう促して家に入るとお茶を人数分用意して、ブリーフィングルームに向かった。
シオリとサーシャは僚也のあとを黙ってついて歩いていたが、内心とても不安だった。
……外から見た印象と内装がかけ離れていれば初見の人は誰だってそうなるだろうが……
「じゃ、二人共座って〜」
「「はい」」
「改めて自己紹介するね。俺は『ルーナ』の店主の蓮城僚也。二人を買った理由はこのティロスに新たなギルドを個人で開くときのメンバーが欲しかったからなんだ。
もちろん、強制でギルドに入れとは言わない。それにメンバーにならなくても奴隷印は消して開放するから安心して。ちゃんと解放した後の支援もするから。えっと、ここまでで質問はある?」
2~3分程の間を置いてからサーシャが疑問を口にした。
「あの……新たなギルドって何をするギルドなんですか?」
「あぁ、説明し忘れてたね。『蒼紅』っていうギルドを作るんだけど、一般的なギルドとはちょっと違ってね。
目標はこのティロスに国家を作ることなんだ。未開の土地が多いからティロスを調査して、街を作って、建物を作って、
都市を作って、国家を作る。国家ができたあとは、ティロスの安全を管理する。そんなギルドだよ。
もちろん、所属するからには活躍に応じて報酬も用意するし、毎日の食事や居住地も保証するよ。他に質問ある?」
またしてもサーシャが質問する。
「えっと……いまのところの人員はどれぐらいなんですか?」
「メンバーは俺と、もうひとりの店主の寧香と、ハイエルフのセレーネと、さっき一緒にいたのセリーだよ。」
今まで黙っていたシオリが初めて口をはさんだ。
「………報酬はどれぐらいもらえるの?」
「そうだねぇ……活躍によるけど、最低でも月に銀貨1枚は渡すと思うよ」
「「!?」」
「二人共どうしたの?鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」
「……銀貨1枚だなんて」
「そうですぅ〜いくらなんでも気前が良すぎますぅ〜何やらとってもアブナイことをするのかと勘繰ってしまいそうですよぉ~」
「そうか?これでもかなり抑えたんだけど………議論の段階では銀貨10枚って案もあったぐらいだし……」
「「!?」」
「それで、このあと奴隷印を消して開放するけど、結局二人は『蒼紅』に所属する?」
「はい、もちろんさせてもらいますぅ〜」
「………わたしも」
「そう。よかった。それじゃ今ここで開放するね〜」
そう言って俺は奴隷印のある手の甲に指をそっと置き、魔力を流して奴隷印を消した。
「はい、消したよ〜。これで二人共奴隷から解放されて一般人になったからね〜。一応ステータスを確認しておいてね。」
そう言ってステータスを確認している二人をよそに、俺はお茶を飲み干してから外に出た。
すると空から寧香が酷くやられた姿をして降ってきた。
………もちろん俺は寧香を受け止めましたよ。えぇ、受け止めましたとも。………ちゃんとお姫様抱っこで。
「うぅ〜……。あ、トモ君………ありがと。」
「どうしたの?のんちゃんがこんなんになって帰ってくるなんて何かあったって事だよね」
「うん………あのね?たくさんやってきたドレインゴーストを調教してトモ君にプレゼントしようと戦ってたんだけど……」
「ドレインゴースト!?また厄介なのがいたね……そいつにやられたの?」
「違うの………ドレインゴーストを調教しようと躍起になっていたところを飛んでいたフェニックスに気付かれて、フェニクスの『紅蓮』を正面からまともに受けちゃったの……」
「そうか……無防備で受ければのんちゃんや俺でもきついからなぁ〜。それで怪我は光魔法で治したけど服とかはボロボロってところかな?」
「うん。あぁ、フェニックスは一応追い払っておいたよ。倒せてはいないけどね・・・」
「わかった。あとで俺も空を注意しておく。じゃぁ、のんちゃんはゆっくり休んでいてよ。」
「や~……トモ君が立てた計画を私が壊したくないよぉ……」
「そんなこと言わんでも……元いた世界みたいに計画を失敗したら即命に関わる状況じゃないんだからゆっくり休んでてよ。その方が俺も安心するし。」
「………そうだね………じゃ、大人しくしてるよ……ねぇ、お願いしてもいいかな?」
「なんだい?」
「そっと優しくキスして……私が寝るまでずっと隣で抱きしめてて?」
「いいよ~じゃ楽にしててね。」
俺は微笑みながらそう言って寧香に口づけをし、お姫様抱っこのまま寧香を家に運び込んだあと、セリーがセレーネを連れて来たのでブリーフィングルームで待っていてほしいと伝え寧香の部屋がある3階へむかった。
寧香の部屋に入ろうとしたが、地下2階にある倉庫と同じ防犯機能が備わっているので魔力を流し込まなければならないが、流し込むだけの正確な魔力コントロールが必要となるため急遽俺の部屋に寝かせることにした。
部屋に入ってから寧香を着替えさせ、薄着であまり負担にならない格好にしてからベッドに寝かせた。
寧香はベッドに入ると少々顔を赤くしてはにかんでいる。
俺が約束の添い寝をするために寧香の隣に這入ると、寧香は俺の耳元で
「着替えさせてくれてありがと。ホントは自分で着替えたかったけど、あまり身体が言うことを聞いてくれないの……それと、私が復活するまでやられちゃダメだからね?
後は……よろしく。元いた世界の価値観だとか考え方に囚われすぎてたみたい……エース級エージェントだったのにね、この程度で判断が鈍ってるようじゃまだまだだったね。」
と囁いてきた。少々思うこともあってそのままの状態でゆっくりと労わるように心を込めてゆっくりと寧香を撫でつつ、話を続ける。
「いい機会だから一緒に元いた世界のことも踏まえつつお話ししよっか。勿論、寧香に無理のない範囲でだけどね。」
とは言ったものの、実際元いた世界で作戦行動を常に共にしていた愛しい俺のパートナーはこの程度なら一日じっとしていれば翌日には普段と変わらない状態になってるだろうと予想される。
それ故に、一度軽く睡眠を取るのもいいかもしれないと思い、全ての判断を寧香に任せたのだ。
そのことを機敏に察知した寧香は
「じゃぁ、先に私のことを他の皆に伝えてきて?伝えてから今夜二人っきりでお話ししよ?」
と即決したので、俺は「わかった。じゃちょっとの間だけおやすみぃ」と言ってブリーフィングルームのある2階へ向かった。
に集まって経緯を皆に説明した。
「そうですか・・・・御嬢が・・・それにしてもフェニックスはいいとして、ドレインゴーストですか・・・・」
「うん、厄介だね・・・・全滅させるのは簡単じゃないからなぁ・・・・それで、木材はどうだい?」
「御主人、問題なさそうですよ。別当地を用意すれば問題ないようです。なので、とても貴重なものや成長しやすいものを例の空間に移植しようと思うのですが、よろしいですよね?」
「もちろんだ。よくやったセレーネ」
「ありがとうございます。」
ちなみにシオリとサーシャは部屋の隅っこで縮こまっている。
「えぇっと、トモヤさん?あのお二人は大丈夫なんですか?」
「まぁ、じきになれるでしょ。今はこのメンツだけでも怖いだろうけど・・・」
「それじゃ、午後の予定はセレーネは移植ね。幻夢の屋敷を出現させる指輪のレプリカは昨日のうちに渡してあるから問題ないよね。それでセリーは俺と一緒に調査ね。
それと・・・・シオリとサーシャは基礎訓練をしておいて。じゃ、皆元気出していこ〜」
そう言ってそれぞれの場所に移動する。
俺は調査の前に幻夢の屋敷を出現させてからセリーを連れて家を出た。
「セリーはドレインゴーストについてどれだけ知ってる?基本的なことは大丈夫だよね?」
「もちろんです。ランクAだからちょっと油断するだけでお終いですけど。」
「ん~……まぁ一般的にはそうだね。あいつらは上手く利用すると良い素材を作れるから出来れば『調教』を使って契約したんだよねぇ〜」
「あぁ〜サーシャももそんなこと言ってました。それでも、トモヤさんなら簡単に調教するのでは?」
「そんなに俺らは規格外じゃないんだけどなぁ……俺だって簡単には出来ないよ。調教師じゃないし……まぁ多少早いってだけで………」
「……それって十分規格外だと思うのですが?トモヤさんの早いって一般的には一瞬の単位じゃ?」
「………ソ、ソンナコトアリマセンヨ」
「なんでどもってるのです?私もトモヤさんと一緒に行動するようになってから能力値が不自然な程上がったので、出来ないとは思えないんですよねぇ~」
「そうだねぇ〜。あとは経験を積めば出来るようになるよ〜。あぁそうそう、寧香の話だと大体ティロスの形はわかったけど、中央部の山と臨海部がまだ把握できてないらしい。」
「うん?なんて言った?大体は計測し終えたの?」
「そうだよ。それとセリー、敬語すっ飛んでる 。そのままでいこうね~」
「……私の反応で遊ばないでくださいよぉ。トモヤさんと二人っきりなら敬語にしないよう努力します。」
「あはは……よろしく頼むよ。てことで、早速だけど飛行術使いたいんだけどいいかな?」
「あぁ〜、その前にフェニックスを捕まえましょうね〜。出来れば上位種がいたら『調教』使ってくださいよ?」
「わかった。………はぁ〜、探すまでもなかったみたいだよ?上にいる……」
「⁉︎……………トモヤさん、早くやっちゃってください。」
歩きながら会話しているうちに森を抜けて山に向かおうとしていたところでフェニックスを三羽見かけてしまった俺たちだが、
あっさりと俺がフェニックスを秒殺してしまい戦闘と言える事態は起きなかった。
「さて、素材も集めたところだし、一羽いたランク測定不能のフェニックスと契約したことだし、空飛ぶか。」
「ちょっと待って。それ一言で片付けるような内容じゃないですよね?」
「えぇ〜だって一方的な戦闘を描写したってつまらんでしょ〜。それよりこのフェニックスなんて名前にしよう?」
とてもどうでもよさそうに、俺はコメントを残して話題転換をかけた。
「まぁ、トモヤさんだし……名前ねぇ〜……クーなんてどう?」
「うぅん………ストークは?」
「それじゃ、コウノトリじゃんか。クーにしようよ〜」
「ユウはどう?」
「うぅん……じゃ、ジャンケンで勝った方が決めよう。いいよね。じゃ〜んけ〜ん、ぽん」
セリー→グー
俺→チョキ
「負けたぁ〜じゃぁクーできまりね。」
「そうだね。それじゃ、クー。俺たちを乗せて山の頂上まで飛んでおくれ。」
「キュー」
そう言ってユウは俺たちを乗せて空高く飛んだ。
空から見るティロスの全貌は………とても美しかった。
余談だが調査が終わってからクーはルーナの庭で飼われることになった。
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所変わってブリーフィングルームではサーシャとシオリが基礎の確認をしていた。
「うぅん………やはり難しいですぅ〜。トモヤさんのようになめらかに魔法が発動できないですぅ〜」
「………まだまだ動きに無駄が多い。もっと頑張らないと……」
「そうですねぇ〜。一緒に頑張りましょぅ〜」
「……うん」
「あぁ、二人共。そこそこ動けるようですね。御主人の期待に応えてくださね。」
「はぃ〜。セレーネさん。がんばりますぅ〜」
「………頑張る」
「ふふふ。少し教えてましょうか?」
「いいんですかぁ?お願いしますぅ〜」
「……私もお願い」
「そうねぇ……まずは身体の軸を固定してください。そして………」
そう言ってセレーネによる基礎の指導によって二人はレベル以上の実力を備えた稀有な存在になっていくことに
二人はまだ気づいていない
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「そうそう、その感じです。後は状況判断と魔力制御を徹底すれば自分のレベルの倍ぐらいの敵ならば倒せますよ」
「えぇ〜そうなんですかぁ!?」
「……ビックリ」
「そうですよ〜。最近の人たちは基礎がおろそかにされるのでレベルよりも低い能力しか発揮できない方が多く
私が御主人と御嬢にお伝えしたところ、連れて来た人には基礎を徹底するよう申されました。」
「……そうなのですか」
「知らなかったですぅ……」
「それでは今までの復習と魔力制御の精度を上げてくださいね。それでは私はこれで」
「はぁい。ありがとうございましたぁ」
「………有難うございます」
二人の成長と、さらなる飛躍の可能性を感じ取ったセレーネは自分の仕事を終わらせるために幻夢の扉を開け、移植をし始めた。
この作品を読んでいただきありがとうございます。
毎度のことですが、誤字脱字等ありましたら報告していただけると幸いです。