目覚めは草、戦いは狼。
「ここは…………。」
目が覚めると上には緑の草が。
起き上がると俺はしばらく周りを見渡す。
そしてようやく現状を理解した。
「…………いやいや、何なんだよコレ。聞いてねーぞ。そう言えばあの変な穴に落ちた後、意識失う前に喋ってた奴居るよな………。あの話から察するにココは異世界って奴か。」
取りあえず今は街を探そう。いや、村でもいい。
そう思いつつ改めて辺りを見渡す。
草。草。草。俺の腰辺りまである草が一面に生えていた。
「ん?そう言えば、アイツらはどこ行ったんだ?みた感じ近くには居ないし、別の場所に落ちたのか?…………多分そうだろうな。」
三メートルほど離れた草がガサガサと不自然な位に揺れる。何事かと目を細めていると、何か黒い物体が飛び出す。
慌てて反射的に俺は避けることに成功。
その黒い物体が着地した辺りを見ると、黒い狼のような犬のような動物がいた。と同時に一斉に周りからも同じような音。まさかと思い辺りを見渡すと同じような奴が何匹も俺を取り囲んでいた。
避ける。避ける。避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避けるかする避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避けるかする避けるかする避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避けるかする避ける避ける避ける避けるかする避ける避ける避ける避ける避ける避ける避けるかする避けるかする避ける避けるかする………………………………。
順繰りに飛びかかってくる狼たち。
決して避けられない訳ではない。
しかし、ドコから来るか分からないということ、
そしてコチラに休憩の時間を取らせないギリギリの時間で攻撃してくる。そのことにガリガリと体力と精神が削られて行くように感じた。
「はぁ、はぁ……。コレはまじぃ……っな!よっ、ふっ、はっ!」
もう何度避ければいいのか?
相手の体力が尽きるまでか?
それとも俺の体力が尽きてやられるのが先か?
明らかに後者。俺の方が体力が先についてしまう。
どうするっ………………。
ここは、賭に出るしか無い。
俺一人で勝てるわけが無い。
このままではジリ貧。
そう、逃げるのだ。
そうと決まれば早い。
さぁ、来るっ!
その瞬間、俺は走り出す。
この時俺は、疲れていたのだと思う。
だから逃げるなんていう、敵に背を向けるということをやってしまった。
ドンッ!
「え?」
背中に衝撃を感じ、転がる俺。
呆然と上を見上げれば、狼。
「っ!……ガッ!」
俺の喉笛に噛みついてきた狼の牙ギリギリで避ける。
しかし、肩に噛みつかれてしまった。
焼けるような痛み。
「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁ!!!!!」
思わず悲鳴をあげる。
死にたくない。その思いだけで頭を埋める。
どうすればいい?
このまま死ぬのか?
こんな訳の分からないところにいきなり落とされて?
イヤだ。絶対に死にたくない。
腹の下の方から体が熱くなってくる。狼に噛みつかれている肩の傷も気にならない。
群がって来た狼達を一瞬で弾き飛ばす。
困惑する狼達。ざまぁみろ。
そして無事な方の右手を振りかぶり、思いっきり殴り飛ばす。それだけで何メートルも吹き飛び、動かなくなる。
全ての狼を倒し、上を見上げた。
「あぁ、キレイな青空だ。」
そしてそのままぶっ倒れ、意識は闇にまた落ちていった。
「悲鳴が聞こえたから来て見れば、なんでこんなとこに武器、いや防具すらつけてない奴が倒れてんだよ、ったく。まぁ、助けてやっか。」