僕の同僚がヤンデレ過ぎて、ヤバイ。
「おはよー!アッキー!ねっねっ!」
僕は毎週、一度はミカミタワーの地下35階にある、特殊事象警戒室に顔を出すようにしている。
「クッキー作ってきたの!食べるでしょ?ね?ね?」
僕は以前も同じシチュエーションを体験した事があった。その時は差し出された右手からめくれる手首に新しい傷が出来ていたのも覚えている。
「ハイ!アーン!」
「・・・・おはようございます。ちょっとお腹がいっぱいで、クッキーはお腹に入らないかなぁ・・・ありがとね」
「え?冗談がお上手ですね!だって、今、胃が空っぽじゃないですか。それに、アッキーは今日、食事をされてないですよー。やだなー。忘れちゃったんですかー?」
・・・・・・。
ちなみに、彼女も魔法使いだ。禁固3279年の、凶悪犯だ。魔力を暴走させ、クラスにいた全員を殺している。その後、特別刑務所で服役していた。自身の罪のために、発狂していたところを、僕の『ウィザード』を使って、治した。長い時間精神が崩壊し、粉みじんになっていたところを、僕の魔力で繋ぎ止めた。そのせいか、彼女は、僕に異常な執着を見せる。
「この前みたいに、鮮血入りのクッキーとか嫌だよ」
他にも、絶筆に尽くしがたい差し入れがあったが、僕は忘れてしまったため、思い出せない。生理の血入りだと美味しくなるんですよー。なんて言われた時は、僕の意識は、二秒ほどホワイトアウトした。
「大丈夫ですよー。今日は香苗さんと一緒に作ったんです。残念ながら、不純物は混じっていませんよー。どーぞー」
・・・・ぱくっ。もぐもぐ・・・・・。
「おいしい・・・・」
ハーゲンダッツをクッキーにしたような味だ。こんな美味しいクッキー食べた事無い。
「でしょでしょ!それが100個作った39個目の傑作なの。アッキーに喜んでもらって良かった。寝ないで作ったかいあったよ!」
ニッコリした顔で僕に微笑みかけてくれる。目の下にクマができている。顔は整っているけど、この性分をなんとかしないと、嫁の貰い手が無い事に、僕は心配している。もっとも、現在彼女は、刑務所がぶっ壊れたため、禁固3279年を、そのまま社会奉仕活動に変える処置を取った。現在、彼女は、ごく普通の女の子だ。
但し、書面上に限る。
「ところで、最近、佐織ちゃんや、お姉さんや、みず知らない女性三名、た~~るなんかが、アッキーの半径30cm以内に近づいたみたいだし、第一次接触を許してしまったようだけど、どうなってるんですか?」
一瞬でクマが消え、かなり明るい感じの笑顔になった。かわいいと思う。・・・・顔は。
「色々あったんだよ・・・」
「全部説明してください」
ニッコリと笑う。かわいいと思う。・・・・顔は。
「説明する義務なんて無いよ!そもそも僕らは同僚ってだけだよ!」
僕はこのやり取りにいい加減ぶち切れて叫ぶ。もう嫌だ。ここに来た途端にこんな仕打ちはあんまりだよ!身がもたないよ!こんなことってないよ!
「そうですか。それじゃ、私、死にますね」
「早苗さあアアアアあああああああああああああんんんんんん」
僕は大声でモニターをいじっている特事室長を呼ぶ。早苗さんは、首根っこを掴み、ずるずると説教部屋へと連れて行く。
「・・・・・・やっぱり二次元しか、僕の癒しは無いのか・・・」