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僕のメイドさんが、ガチ過ぎてヤバイ。

僕の登下校はスポーツカーで行われる。理由はセキュリティ上の名目と、僕の祖父が世界的多国籍企業の社長であり、彼の娘の一人息子だからだ。


「お疲れ様でございます。ご主人様」


運転席に乗っている女中さんは、数あるメイドさんのそれとは一線を画す存在だ。メイド服でもないし、一般のメイドのイメージのように可愛らしいキャラではない。軍隊上がりの魔術師だ。彫りの深い目に整った顔のライン、鍛え上げられ、研ぎ澄まされた肉体。祖父への絶対的忠誠心から来る彼女の独断は、僕の行動範囲はかなり制限されている。どうやら放蕩息子で種をあちらこちらにばら撒く人間だと思われているようだ。


「ありがとうございます。た~~るにゃん」


ただし、制服は祖父の趣味で伝説のギャルゲー、た~~るにゃんのコスチュームだ。コードネームも同じく。


「最近パソコンでの使用履歴は前の使用頻度に比べて減少しておりますが、どうされたんですか?」


「最近は忙しいんだよ・・・。特事の案件が急に来るからね・・」


特事というのは、特殊事象警戒室の略だ。政府が超常現象を鎮圧、解決するために組織した組織だったが、今ではミカミコーポレーションが国の請け負いという形で一手に引き受けている。


「そうですか。触手、肉便器、蟲姦等の掲示板閲覧履歴がございませんが、性欲の処理は大丈夫でございますでしょうか」


僕がエロゲーをプレイするのは、純愛物や魔法少女ものオンリーだが、CGの閲覧のみなら、触手、肉便器、蟲姦等の掲示板を閲覧し、使用していたのだ。しかし。


「・・・・・ちなみに、いつから、僕のパソコンの履歴を確認していたの?」


「ご主人様がパソコンを購入されインターネットに繋がれた時からです」


「・・・・・・」


「さらに言わせて頂けるなら、その日から、全てのCPU使用をチェックしておりました。DVD鑑賞を含めて」


「・・・・・・・・・・・・」


「もし、最近溜まっておられるなら、例の一件を真剣にご考慮くださいませ」


例の一件とは、僕のクラスメイトである高遠真理音の事だ。彼女は放課後、六時から九時まで、メイドとして僕の住んでいるミカミタワーでバイトしている。た~~るにゃんの申し出とは、高遠さんの終身雇用を条件に、僕の性欲処理としてのいわゆる『割り切った関係』を打診するという事だった。彼女曰く、高遠さんの家は困窮している、経済的理由からと、彼女の初の失恋からの心の傷を利用するという事だった。


「考えるに値しないよ。もう一回言ったら怒るよ」


た~~るにゃんは、高遠さんに打診すれば、即時OKするという算段がついているらしいが、僕は絶対にそんな事をしない。僕は、確かにパソコン上の履歴から見ると、ド変態の性欲魔王かもしれないが、現実世界では紳士だ。僕以上の紳士はちょっとやっとでは見つからないと自負しているほどなのだ。


「そうですか。高遠が気に入りませんか?」


「・・・・そういう問題じゃないよ」


「そうですか。かしこまりました。それでも、万一我慢できない、欲望の火が炊きついた場合は、いつでも私にご一報くださいませ。責任をもってた~~るが処理させて頂きます」


「・・・・・・」


ガチ過ぎるのだ。もし、僕が違う人格で、エロゲーの抜きゲーの鬼畜野朗だったなら、彼女は僕にあらん限りの奉仕活動をガチでやってのけるだろう。しかし。


「・・・・・・・」


僕が好きなのは、あくまで、『二次元』なのだ。三次元の蟲姦やら肉便器やらのDVDを売っているアブノーマルなショップへと一度出向いた事があったが、入店してから五秒でギブアップだった。パッケージの表面を見た瞬間、胃液が込み上がってきた。今では、その記憶は封印している。僕が愛しているのは、あくまで、二次元なのだ。三次元なんて、冗談ではない。


「何かお飲み物を飲まれますか?」


「いいよ。そのまま帰っちゃって。た~~るにゃんが喉渇いてるとか、疲れてるとかだったら、その辺で休憩してもいいよ」


「そうですか。ではそうさせて頂きます」


スポーツカーは自販機の横にピタリと止まった。かなり急ブレーキだ。元々かなりの速度で運転しているが、慣れているとはいえ、こういうのは困る。


「少々お待ちくださいませ」


ドアを開けて、自販機の前で缶を買うと、つかつかと車まで戻って、入ってくる。


「どうぞ。私の奢りです」


缶を車中で渡された時、僕は彼女の胸元に驚いた。丁度胸元が強調されるような姿勢で渡されたのだ。二つのマシュマロがはちきれそうな、苦しそうな感じで、寄せ合っていたのを見てしまう。思わず、生唾を飲む。


「あ、ありがとうございます」


深呼吸をして、粒入りコーンポタージュを飲む。僕が好きなのだ。


「コレ好きなんですよね・・・」


「そうだと思いました。監視しているとき、自販機でよく購入されてるのを見てましたから」


ちなみに、彼女の仕事は僕の護衛と保護だ。しかし、彼女はその仕事内容を、監視と盗聴だと考えいるような気がする。ちなみに、僕のスマフォはた~~るにゃんの組んだスパイウェアが入っている。全て筒抜けだ。僕がこの前買った『スマフォで出来る!エロゲー!』のアプリを購入している事は、すでにバレているだろう。自室のリビングと通路にも防犯上との名目だが、僕を監視するため設置しているとしか思えない。


「・・・・ありがとうございます。・・ごくごく。・・・美味しいんですよね。これ」


「それはよろしゅうございました。・・・私は嫌いですが」


「・・・・・・・・・・」


車はびゅんびゅん飛ばしている。あっ。また一台追い抜いた。そして、僕らの住んでいるミカミタワーへと到着する。

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