僕の幼馴染のお姉さんがエロ過ぎて、ヤバイ。
「結局なんやかんやで、夜中の四時に帰りだよ・・・。三時間しか寝てないとか・・・・」
僕は、そんな事を、幼馴染の寺鳴美鈴に食堂で言う。
「あんたも大変ね。そーだ。母さんがアンタ達を食事に誘ってみなさいって」
「へー。それはありがたいね。三人で押しかけてもいいの?」
「別にいーと思うわよ。・・・もっと多くなってもね」
電話が鳴ってるよ!電話が鳴ってるよ!
「電話だ。ごめん。出るよ」
「アンタ、まだ、魔法少女た~~るにゃんの着メロ使ってんの?だっさ」
「ほっといてよ。・・・・・もしもし」
「もしもし~~?アッキー?」
「晃弘ですけど、アッキーって言い方は初めてですよね」
電話の相手は、寺鳴真理音さんからだ。僕は過去一度、真理音さんに、振られている。かなり複雑、かくかくしかじかでは、言い表せない程複雑に入り組んだ顛末の末だったが。故に、嫌いだ。はっきり言おう。大嫌いだ。しかし、凄まじく美人なので、非常に、非常に困っている。現在、僕は彼女のおもちゃ状態だ。
「アッキーって呼び方の方が、親しいって感じでしょ?」
「ええ・・。まぁ。そうですけど・・・・」
「ひょっとして、まだ根に持ってるの?」
「・・・終わった話は止めてください」
僕が姉さんに告白したのは、かくかくしかじかでは語れない話なのだ。正直に言おう。根に持っている。はっきり言おう。女って怖い事を、僕は身を以って知った。
「まーいーじゃないの。それで、今晩の食事、あなたと、佐織ちゃんと、アリスちゃんで一緒に食べにきなさいよ。良かったら、あなたのとこの女中さんもいらして結構よ」
「メイドって言ってくださいよ。昭和の響きですよ」
「私の愛読書に江戸川乱歩があるの。そこには、メイドのメの字も書かれて無いわ」
ニンテンドー3DSの怪人二十面相には、メイドで表記されている事を、僕は黙っている事にした。
「それで・・・どう?私の事、恋しい?」
「恋しくないですし、連絡すら欲しくなかったです」
「えー・・それじゃ、ここで、あの時録音した愛の告白を流しましょうか?」
「ごめんなさい。すっごい恋しかったです」
僕は、権力と肩書き、そして弱みに弱い事を、最近知った。
「素直で宜しい。それじゃ、今日の晩御飯でね。オバー」
僕は電話を切って、ため息を吐いた。
「あんたって、いっつも、そんな感じよね」
「言わないでよ。自覚してるんだから」
僕はうな垂れる。そして、美鈴と別れると、食器返済口に食器を突っ込んだ。
「女難の相が出とるよ」
びっくりした。この前は、魔法使い四人との戦闘で、死にそうになったし。カテゴリーXの長帽子との戦闘で、僕は死にそうになったことがある。その時も、このおばちゃんに、イキナリ言われたのだ。死神の相がでとるよ。と。
「あの、いつもなんなんですか?」
僕が答えると、食堂の三角巾を被ったおばちゃん、さっと食べ終わった食器の入ったトレーを取って、奥へ引っ込んでいった。・・・この前も同じ事があった気がするけど、気にしない。
「ごちそうさまでした」
前もこんな事を言った。
学校の後に、山火事を一件片付けて、僕達は寺鳴家へと、お邪魔した。
「・・・・片付いている」
ハイテク都市八町島が誇る、マンションに住んでいる一家だが、彼らは、割と、掃除をしなかった。それが、今では、掃除されていた。冷蔵庫の中なんて特にだ。一番の驚きは、缶ビールが転がっていないのにびっくりした。約一名アルコール中毒の患者がいる。美人過ぎるのが、僕には気に食わないけど。
「それじゃ・・・料理手伝って」
そんな一言で、アリスと佐織は、システムキッチンに向かう。
~~~~♪
「第九」が鳴っている。僕は嫌々ケータイに出た。
「もしもし」
「もしもーーっし。お姉さんだよ。やったね!」
一瞬電源を切ろうかと本気で考えたけど、弱みを握られている状態での危険な行為は慎むべきだと考えた。
「何の用ですか?」
「あのねー。今駐車場に居るんだけどねー。食材買いすぎて、重くて運べないの。どなたか心優しい騎士様はおられないかしら」
正直、それ以上、会話したくなかった。
「・・・今、行きます」
それだけ伝えると、姉さんの言葉を遮り、電話を切った。どうせ、また、僕をおもちゃにする気なのだ。小悪魔というのは、こういうのだろう。冗談じゃない。半ば、本気で、全力で、告白したため、僕の心は今でも、ちくちく痛むんだ。なんたって、ガラスハート。目指すは、ライオンハート。
「今、僕、うまい事言っちゃったかなぁ?」
にやついていると、制服のネクタイを誰かに引っ張られた。駐車場でだ。僕は、車の後部座席に、拉致られた。
「ニヤニヤしちゃって。おねーさんの、あまーいキスの味を思い出しちゃったのかしら?」
胃が痛くなってきた。
「そんなんじゃないです、なんでもないですよ。それで、さっさと運びましょう」
「この感覚、どこかでデジャビュを感じないかしら?」
「ええ。姉さんの部屋で、拉致られて、騙されました」
「はぁ・・・ピュアのボーイを騙しちゃうと、やっぱりこんなへそ曲がりになっちゃうのね」
そう言って、姉さんは、僕の口の中に、指を突っ込んだ。
「ぶは!何やってんですか!?」
「こういうシチュエーション、嫌いじゃないでしょ?」
「大ッ嫌いですよ!」
だいっきらいだ、ばーか!という叫びは押える。
「そう。ねぇ。最近想像するの」
いきなりトーンダウンした、シリアスの気分になる。原因は分かった。BGMをそういうのにしたのだ。指で車のMDを操作している。
「あの時、私達、付き合ってたらどうなってたのかなぁって」
「そういう想像しないに限ります」
「じゃあ、今やってみよう」
「・・・・・・嫌です」
「えーーーー。それじゃあ、お姉ちゃんがやってみようかなぁ」
姉さんは、その言葉を繋げながらも、僕を後部座席に寝かせて、その僕の身体を椅子代わりに座っていた。
「普通、付き合ったら、キスをするんだってぇ!私びっくり!」
小学生か、中学生のような、喋り方をする。きっと誰かにされたんだろう。ちなみに彼女は大学生だ。
「そうですか」
「それでね、もっとすっごいこともするんだってぇ!」
「へー。どんなことをするんですか?」
「あのね。お母さんとお父さんに内緒にしないといけない事よ」
僕は、なぜか分からないが、勃起していた。そして、丁度その場所に、彼女は座っていた。はっきり言おう。僕は、この時点で、涙目になっていた。おそらく、鏡には赤い目をした高校生が映っているだろう。
彼女の目が、綺麗だ。
およそ十秒、実は一分だったかもしれない。そんな間、姉さんは喋らない。僕も喋らなかった。こんなシーンでさえ、僕の胸は痛む。
「私、お酒辞めたんだ」
唐突に言われた。僕は義父さん『禁煙したんだよ』と言われて、『そうなんですかー』と、軽く流したのを思い出した。気の利いた台詞を言うべきだろうか。それとも、言えるだろうか。
「・・・・食堂でも昼からビールを飲む姉さんが・・・・」
「なんかね。ある人を振ったら、どうでも良くなってきちゃったんだ。とっても嬉しくってね」
「そうなんですか・・」
結局、『そうなんですか』で、終わってしまう。
「まだ、私の事、好き?」
まただ。幼少の頃から、僕と遊んでくれたお姉さんは、どうやら、僕の小さい頃から、僕をそういう目で見ていたらしいのだ。またあの、お風呂場での、洗いっこを思い出す。当時の僕は、爆笑しながら、絶叫し、『やめてよー!くすぐったいよー!!』なんて言った事を覚えているのだ。おそらく、一生覚えているだろう。
「・・・・嫌いじゃ、ないです」
そんな言葉を口から出した後に、姉さんの舌が入ってきた。目を開けると、姉さんは、目を瞑っている。こういう場では、目を瞑るのがマナーなのだろうか。しかし、僕は、好きでもない、付き合っているわけでもない女性とキスをして、冗談のような抵抗で、『ヤメテヨー』なんて言う主人公ではないのだ。全力で、抵抗する。
「・・・・・!!!!??」
ダメでしたー。彼女は高校時代にレスリングを習っていたのだ。すでに、関節技を決められていた。才女らしく、おそらく、このシチュエーションを兼ねてから考えていたのだろう。ガッチリ固められている。
「んっ!んんーーー!!」
頭をがしがし、腕をぐりぐり、足をばたばたさせていたら、姉さんが、僕の舌を甘噛みしてきた。変な味がする。おそらく、血が出てる。冗談じゃない。端っこを切るなんて酷すぎるッ!!僕は目を開けた。
「・・・・・」
目が据わっている。怖い。僕は固まってしまった。その瞬間だ。僕の右腕が、現実世界では珍しいEカップ(美鈴談)の二つの柔らかいマシュマロをてのひらにあててしまった。・・・・・いや。違う。あてられていたのだ。
僕は、姉さんの背中をパンパンと軽く叩いた。タップだ。降参だ。僕に勝機は無い。サレンダーだ。投了だ。
「・・んっ?んんーー!!」
姉さんはあろうことか、サディスティックな勝利に歪んだ笑みを浮かべて、僕の鼻を摘んだ。こ、呼吸ができない。送られてくるのは、姉さんの口から排出されるCO2を多く含んだ酸素だった。リズミカルに吸引と共に、排出される甘い息の交換に、僕のジャガージャッカーはさらに雄雄しく勃起してしまう。ズボンに当たって、痛いほどだ。多分、僕は今、軽く泣いてるだろう。
「んんーーっっ・・・ぶはぁ!!」
解放された。お互いががはぁはぁという荒い息遣いをしている。妙な気分だ。本当に妙な気分だ。
「はぁはぁ・・・・最高。これ週に一回はこれからやらない?」
「はぁはぁ・・・・あのですね。・・・・・だめです・・・」
まずい。本気でジャガージャッカーが痛い。ちょっと折れていると思う。なんかパンツが湿ってきてるとさえ思う。いや、僕のパンツだろう。
「ねえ。あの時は、お互い意地になっちゃったね」
「・・・・そうですね」
「やっぱり、男は、尽くしてくれるタイプよね」
「・・・・」
「・・・・またしよっか?」
「やりません」
僕は恋愛ゲームみたいに、優しい言葉や嬉しい贈り物なんかで、ほいほいついていく攻略簡単なキャラではないのだ。僕は硬派だ。男は生涯で知るのは、一人の女性のみなのだ。
「ま。いいけどね。そういうトコロ。結構好きよ。あーあ。この作戦、私の後輩から百発百中で落とせるテクだって聞いたのになぁ・・・」
「・・・・・」
何もいえない。何かをいえる立場ではないのだ。
「お腹減っちゃったね。続きは、ご飯食べてからにしちゃう?」
「・・・・・やりません」
その後、僕は、美鈴のお母さんのスキヤキをはふはふ言いながら食べた。美鈴のお父さんに肩揉みを15分やって、それから帰った。
「・・・・舌・・・まだちょっと痛むや」