あ~っと!! 霧生選手、開始早々に霧島選手から受けた右ストレートでダウンだぁぁぁ!! (七話)
夏休み? ……フッ、そんなもんはもう無いさ……(遠い目)
てな訳で嫌味な程に仕事量が増えて休みの日は寝ているだけな作者でごわす。
久々にコチラに手を付けたのですが……まぁ、ヒッデェ内容ですので“覚悟!!”と見知らぬ侍に斬られる直前の悪代官の気分になりながらどうぞ。
日曜日まで臨時休業な為、土曜日である今日はアルバイトが無い。
こればかりは流石の零様も困ったらしく、暇を持て余しているご様子だ。 うむ、此処は私が零様を退屈させないように頑張なければならんな。
start
本日は生憎の雨でアルバイトもお休み。
何時もなら、この時間になるとアルバイトバイト先である喫茶店へと零様とご一緒に向かうのだが、臨時休業でお休みの為、朝から零様はこれまで見た事の無い番組をご覧になっている。
番組の内容はどうやらアニメらしいが……。
《地球の平和を乱す悪は、このボク、魔女っ娘ミータンが許さない!!》
「……」
う……むぅ……。そういった事と無縁だった私でも分かる、零様がご覧になっているあの番組はどうひいき目で見ても“女児向けのアニメ”ではないだろうか。
《今よタミちゃん! パワーストーンの力を使いなさい!》
「……」
それを零様は、割と真剣な表情で……はっ! まさか零様はああいった体型の女が好きなのか!?
(……。朝っぱらからやってるテレビはあんまし見た事が無かったから適当に映ってたこの番組を見てみたが……恐ろしくつまんねーなオイ。『たまたま素質があったから魔法が使えるようになりました』って……ワンパターンすぎんだろ。どうせなら『両親が目の前で惨殺されて、そのトラウマで覚醒した』ってな方がワクワクするんだがなぁ)
《パワーストーンNo1 帝王の名の下に、貴方を封印します!》
「……」
お、おのれぇ! 画面の中だけしか存在出来ない分際で零様をたぶかしおってからに! ユルサナイ……番組制作会社を襲撃してやろうか。
「……はぁ」
番組事態を潰してやろうかと考えていた矢先、零様がため息を付きながらテレビのチャンネルを変える。
あ、あれ? まさか私の考えが零様に感づかれてしまったのか? という思考に走りかけた時、けだるいと言わんばかりな表情と共に零様の口が開く。
「あんまりにもアレだったから見てみたが……所詮はお子様向けだったな……俺には理解出来ない番組だったよ」
「へ?」
私の方を向きながらそうおっしゃった零様。
思わず間抜けな声を出してしまったが、零様は続ける。
「いや、土曜って基本朝からバイトじゃん? だからどんなテレビがやってんのか気になるから端から色々な番組を見てみたんだけど……うん、つまんねーワイドショーか今みたいな餓鬼向けアニメとやらしかやっちょらんわ」
『あ゛ー』と声と共に背筋を伸ばしながら言う零様。
という事は何だ……零様はああいったのが好きだから見ていたのでは無かったのか?
「えと、零様?零様はああいった番組がお好きだから見ていた訳では無いと?」
確認の為に、今の今まで思っていた事をそのまま質問に変えて聞いてみると、零様は苦笑いをする。
「嫌いじゃないが」
嫌いではない……だと? その言葉を聞いた瞬間、思わず絶望しそうになるが。
「小2までは理解の範疇にあったけど、今はもうわかんねーよ。まぁ、それほど俺も成長したっつーこったな」
ハハハ、と軽く笑いながら話す零様に、一瞬の安堵を感じたが此処で更なる疑問というか聞きたい事が出来た。
「それでは零様は今テレビに出ていた女の子が好きでは無いと?」
「は?」
一瞬何を言われたのか分からないというお顔をされる零様だったが、何を聞かれたのか理解したらしく、軽くショックを受けた表情になる。
対して私は割と真剣になった顔を崩ずに零様を見詰める。
これは重要な話だ、だって、もし零様がああいった寸胴体型が好みだったら全てが終わってしまう。
私にはこの邪魔な脂肪の塊があるのだから……。
「え~? 俺ってそんな風に見られて訳?」
「はい、先程の真剣な表情になってテレビを御覧になっていた零様を見ていると……」
「いやいやいやいや、勘弁してよ。何で画面の中にしか存在出来ないような奴相手にそんな感情を抱かなきゃなんねーんだ。誤解だ誤解、さっきも言ったが、ありゃ暇だったから見てただけだ、第一、仮にそういったのが好きだったとしてもあんな餓鬼みたいな体型した絵なんざ好きになる要素がねぇよ」
「……」
「え、えぇ? 何その目? いやマジだっつーに、俺が好きなタイプは現実に存在するナイスバディな娘だし……(要約:零)」
「……まぁ、そういう事にしといてあげますよ」
本気で嫌そうな顔をしている辺り、今言っていた事は全て本音なのだろう。
しかし、零様の好みのタイプはナイスバディな女……そんな女、近くに居ただろうか?
「むむむ……」
駄目だ、該当する人物が浮かばない。
まさか私……な訳は無いだろうし。くそ、もしそんな人物が零様の前に現れてしまったら、私はそいつを全力で捻りつぶさなければならないな。 バレないように裏でこっそり、な。
(……。さりげなく零の事を言ったつもりだったんだが、気付いちゃいねぇな……ハハハハ……はぁ)
★☆
昼になっても雨は止まず、寧ろ大降りになってきた。
午前中に掃除を済ませてしまった私は、いよいよやる事が無くなってしまったので、裁縫をする……と見せ掛けて、ソファで横になりながら漫画を読んでいる零様を観察していた。
「ふわぁ~ぁ……」
上半身裸の状態でソファの上に横になり、漫画を読みながら欠伸をする零様……。
このお姿は私だけしか知らない、私だけが見る事が出来る、いや私以外には絶対見せない零様のあられもないお姿。
ああ、なんとかわいらしい……。
主に向かって抱く感情では無い事は分かっている、だが出来る事なら今すぐにでも零様を襲い――いや、飛び込みたい。
「暇だじぇ~ぃ」
既に読み終えた漫画をテーブルに置いた零様は、身体を伸ばしながらそう呟いた。
「零様」
「あ~?」
主がすぐ目の前で退屈を言っている……それを無視する事は出来ないので、何か話題を提示しようと零様に声を掛ける。
「な~に~?」
「いえ、今日は雨でしかも気温も幾らか低いので、上着をお召しになったほうが良いかと……」
これ以上は理性が保てそうになかったので、風邪をひいてしまうという建前の元、零様に服を着て頂く事にする。
幸い気温も低くかったので、私の言う事を素直に聞き入れてくださった……うむ、もう1分遅かったら本当に危なかったな、零様ったら妙な色気があるというか何というか……とにかく普段の何気ない動作一つ一つが私の理性を削っていくのだ。
「あ゛あ゛……。何もする事ねぇからもうひと寝入りすっかなぁ。零、頼める?」
そして、零様自身はこの事を知らないので、私の理性を鰹節削りのように削ってくる。
この時もそうだ……。
「は」
ソファの上で横になりながら手招きする零様の元へと近付く。
これは零様が自身のお部屋でお休みなさる時以外の場所で寝る時に何時も頼んでくる事なのだが……これがまた私の理性を崩壊寸前まで追い込む行為なのだ。
それは……。
「これで宜しいでしょうか?」
まずは、起き上がってソファに座る零様の隣に私が座る。
「おう。そいじゃあ、っと……」
そして座る私の膝の上に零様の頭が乗る。
俗に言えば“ひざ枕”という奴なのだが、零様の場合は少し違う。
「あー……やっぱし零の腹はあったかくて最高だわ……。今日は若干冷えるしね」
「ありがとうございます」
「怠くなったら勝手に振りほどいて良いからな?」
「はい、おやすみなさいませ、零様……」
「ん……」
一般のひざ枕と言えば、寝るほうは仰向けになるのが多数だが、零様の場合は俯せになり、そして腕で私の腰に手を回し、抱き着きながら寝るのだ。
うむ、正直言えばひざ枕では無いと私も思う。
以前にも霧生オーナーと優店長と向島様と会話をした時に何気なく言った時も……。
『それ……ひざ枕じゃ無くて抱きまくらじゃねぇかよっ!!』
と、向島様がそうおっしゃった後、零様の名前を叫びながら何処かへ行ってしまわれた。
零様はしきりにひざ枕と主張していたが、私も抱きまくらだと思う。
だが零様は。
『頭を膝に乗っけてる時点でひざ枕だ』
と、自信満々な表情でおっしゃる。
零様がそうおっしゃられるならそうなので私は何も言わない。
というより私としてはコチラのほうが色々とイイのでこれからも余計な事は一切言わないつもりだ。
「zzZ……」
む、もう寝てしまわれたか……。
「零様……」
寝付いて零様の頭を軽く撫でる。
フフ……このお姿も私以外の人間は知らない、恐らく零様の御両親ですら、な。
「零様……。零は何時までも貴方様のお傍に……」
寝ている零様に向かって静かに呟く。
あぁ……こんなに近くに居るのに何も出来ない。零様、私の胸の中は有刺鉄線で縛り付けられたと錯覚させられる位に苦しく……そして痛いです。
「zzZ……」
零様は誰にも渡さない……渡してなるものか、例え零様の両親が現れても……。
誰にも……この役目は私だけのもの、この寝顔を見るのも私。
毎朝起こすのも私、傍でお守りするのも私……私だ、私のモノだ他の誰にも邪魔はさせない、させてなるものか。
「フフ……。他は要りません、私は貴方様にさえ使えられるのなら……」
続く
明日も仕事が休み……つまりは二連休なので、忘れて無ければ投稿したいなぁと思いました! (作文)