閑話『零日記』
タイトル通りですね。
これ以上はありません。
霧島零ver
〇月〇日
今日から日記を付ける事となった。
この身体と心を全て零様に捧げると決めてから早数ヶ月、最高のお方に出会えた私の日々は実に充実している。
しいて不満があるなら、零様が私に対して余り頼み事をしないくらいだ。
『大概の事は自分でやるから余り気張るな……と言いたいが、多分この先、お前には無茶なお願いをしてしまうかもしれない。その時はよろしくたのむよ』
と、罰が悪そうなお顔をしながらおっしゃってくださった零様……あぁ、やはり前の主とは雲泥の差だ。
前の主は私と、私と同年代のメイドに破廉恥な事ばかりを強要させていたからな……私は全力で拒否したが。まぁ、零様が相手なら嫌がる処か喜んでお相手になりたいと思う。
あぁ……零様。
※フィルター解除
『命令て……別に何も無いんだけどなぁ。まっ、何かあったら頼むわ』
〇月☆日
今日は学校も店も休みだったので、零様が遊びに行こうと誘ってくださった。
場所は隣街の中々に栄えている繁華街だ。
最後まで零様に……
『頼むからそのメイド服姿は止めてくんない?』
と言われたのだが、私はこの格好で無ければ生きていけません、と返したらお許しをくれた。
やはり何だかんだ言っても零様はお優しい……。
隣街はやはり人が多く、初めて“げーむせんたー”というものに入ってみたが、凄いなげーむせんたーというものは……名前の通り色々なゲームがあるし、中が薄暗い割に機械が明るく発光していたので目がチカチカしてしまった。
それを見ていた零様が軽く笑っていたので恥ずかしかった……。
しかし、あの“ゆーふぉーきゃっちゃー”というものは面白かったな。
百円を入れるだけでぬいぐるみが手に入るゲームとは恐れ入った。
私がそれをやっている最中、零様や他の連中が信じられない顔をしながら私を見て来たのが疑問だが。
※百パーセントの確率で景品を取ってた為。時には二個取りや三個取りもやっていた……無自覚で。
それと、これは関係無い事なのだが、繁華街の大通りを歩いている時に、周りの人間からの視線を感じたのは何故だろうか?
しかも周りの視線を感じる度に零様のお機嫌が悪くなっていったし、かと思えば急に私の手を握ってくださったり……今日の零様は今まで一番分からなかったな。
私もまだまだ修業が足りないみたいである、精進せねば。それにしても、零様に手を握られていた時は胸の鼓動が激しくなった……いや、決して不愉快では無く寧ろ心地良かった。また機会があったら、私の手を握って欲しいと思う。
ああ、零さまぁ……。
△月〇〇日
今日の零様の寝顔も可愛い……。
もはや朝になったら零様を起こすのが楽しみで仕方なく思える。
携帯の外部メモリは零様を隠し撮りしたお写真で一杯だが、一つ一つが私の宝物……その中でも最高のショットはパネルにして自分の部屋に飾っているが、フム……何時見ても飽きが来ないな……流石零様だ。
◎月◆日
今日の昼休み、零様と私が通っている高校の男子生徒と思われる人間が、突然零様に襲い掛かった。
私が直ぐ近くに居たので当然の如く廃除してやったが……何故当然零様を襲ったのだろうか?それまでは普通に食堂で昼食を取っていただけなので、零様を恨む要素なぞ皆無なんだが……。
ふむ、確か体育の時に零様が自身の利き腕を怪我されて、自分でお食べになるのが辛そうだったから私が零様に食べさせてあげたのだが、その瞬間にその男子生徒が襲い掛かって来たんだったな……何か関係があるのだろうか?
しかし、食べさせられている時の零様はとてつも無く可愛いかったなぁ……思わず抱きしめたくなった。
あぁ、零様……大好きです、叶う事なら貴方様と…………。
霧生零ver
〇月〇日
福引きで醤油セットが当たったんだが、オマケとして日記帳を貰った。
なのでと言うか、折角なので暫く日記を付けてみる事にした。
……三日坊主ならず一日坊主にならない事を願いたいものだが……無理だろうなぁ。
〇月☆日
意外にも一週間目……続くもんだなぁと自分でもビックリだ。
それはそうと今日は久々に1日何も無い日だったので、零と一緒に中々栄えているとされている隣街に行った。
しかし、やはり零の格好は物凄く目立ったらしく、駅前の降り立った瞬間に周りに居た連中の視線を釘付けにしやがった。
まぁ、メイド服姿のもそうだったし、何より零自身の容姿も差別を彷彿とさせる位に整ってるから仕方ない。なので、中には零にナンパ目的で声を掛けてくる連中もチラホラ居た。
零自身は気が付いて居なかったが、アレは結構危険だったかもしれないな……いやだって、ナンパしてた男達の殆どが、どう見てもラ〇ホに連れ込もうとしてた目をした奴だったんだもん……中には『写真を一緒に!』とか言ってた野郎も居たりしたが、とにかく目を離したら危ない気がしたので、とりあえず零がナンパされている直ぐ後ろで、野郎にワザと見えるようにしながら指を鳴らしたり、ガン飛ばしまくったり、スチール缶を縦に潰したりとかして散らしてやった。
うん……零がちょっかい掛けられるのを見てたら無性に腹が立つんだよね……理由は不明だけれども。
△月〇〇日
最近、ますます自分が駄目人間になっていってる気がしてならない。
あれだけ『自分の事は極力自分でやる』とかほざいて置いて、現実は毎朝零に起こして貰うというていたらく……。
零本人は気にするなと言ってはくれたが……流石になぁ。
しかも最悪な事に男子特有である“朝の生理現象”見られた時は……ありゃあ肉親でも恥ずかしいと思えるのに、よりにもよって零に見られるとは……な。
経験が無いのか何なのかは不明だが、零はジーッと男の勲章を不思議そうに見てたし……ウワァァァ!! 思い出しただけで死にたくなる!!
終了
?月?日
俺は別に零を下に見たつもりは無い。
にも係わらずあの子は俺をご主人様呼ばわりして来る。
それが堪らなく嫌なので、止めろと咎めたが零は全く聞き入れてくれない……リアルに命令を無視されたのはこれで二度目だが、嫌なもんはやはり嫌なので、そこから喧嘩へと勃発しちまった。
まさかのタイマン勝負になったんだが、俺の辞書には『女を殴れません』なんていうお優しい精神は全く無い。
つーか寧ろ、中学時代は例え女でも売られた喧嘩は全力で買い、全力で叩き潰してやっていたりする。
うん、今にして思えば酷い話だと自分で思うが、酷いと思うだけで別にやると言ったら今でもやる。
そんな訳で、零とタイマン勝負になったんだが…………ハハッ! 初めて喧嘩に、しかも同年代の女に負けるとは、な。
脳天にゲンコツでも食らわせて気絶さしてやろうかと拳を振り上げた瞬間にカウンターアッパーが俺の顎に直撃して、逆に俺が意識をすっ飛ばす事になった訳だが、まさか3秒足らずで負けるとは……自己最短&この先破られることの無い記録だと思う。
しかし、意識をすっ飛ばす直前に見た時の零の顔……泣きそうな顔をしてっけ。
意識が戻ってからは只ひたすら零に謝られたが、お蔭様で俺の安いプライドは粉々にされたが、同時に俺は零が好きなのかも知れないとも思った。
嫌いならとっくに家から叩き出してやってるしな。
まっ、こんなしょうもない位情けない男なぞ、あの子はどうも思っちゃいないと思うケドね。
ハァ……せめて一つだけで良いから、あの子より勝る何かがあっても良かったと思う一日だったなぁ。