それを霧島選手は余裕の表情で捌く!(五話)
仕事中だが暇なのでGO!
それと、感想で誤字報告してくれた蒼井宗仁さんありがとうございます!
一応この話を投稿したら修正さして頂きます。
ある財政破綻した財閥の会長が所有する屋敷の中に、ある一人のメイドがいた。
物心が付いた時からその屋敷で働かせる運命にあったその少女は、何の疑問も持たずにその屋敷で働いていた。
だが、少女が勤めるその屋敷の主が経営していた会社が全て倒産……当然屋敷なんか所有する余裕すら無く、ましてやメイドを雇う事すら出来なくなったその主はそれまで雇っていたお手伝いさんを大量に解雇する。
少女もその中に含まれている。
生まれた時から両親という存在が無かった少女は勿論路頭に迷う事になるが。
「チッ、こんなクソみてぇな大雨の中、テメェみてーなのが傘差さずにいられるとこっちが陰気な気分になるわ……オラ、これくれてやるからさっさと帰りやがれ」
ある大雨の中……口の悪いある少年と出会う。
最初で最後の“幸運”だと、後に彼女は言った。
start
「すぅ……すぅ……」
「……」
おかしい……。
「ま、まいったな……。れーくんったらふて寝しちゃったかも……」
「オーナーさんがからかい過ぎたからですか?」
「多分……うう、優ちゃんに知れたら怒られちゃうよ……」
零様が寝ている後ろで、一緒に働く事になった小山さんと霧生オーナーが何やら言っているが、おそらく違う。
零様は一度からかわれた程度で気分を悪くされる様な小さい人間では無い。寧ろ10倍にして返す様なお方だ。
「ま、まぁ、れーくんは寝ているし邪魔しちゃイケないから僕達はあっちに行こうか?」
「あ、はい……」
ふむ、霧生オーナーが空気を読んでくれたか……。
それならその間に、零様が何故こうなったかを考えねばならないな。
確か最初は何時の通りに『俺はお前を下に見たつもりはない』とおっしゃっていたな。
うむむ……だがこれは何時もの事だから関係無い筈だし……それに私はこのお方に一生付いて行く気だからな。
口では嫌だとは言っては居るが、零様も分かって頂けてるみたいだし、何より……。
「すぅ……すぅ……」
「……」
ぐっ……。相変わらず寝顔が可愛い。
普段はやる気が無さそうな顔、だが仕事中は凛とした表情になる零様も良いが、やはりご就寝なさっている時に見せる無防備な顔も捨てがたい……お陰で携帯の外部メモリのデータは全て零様のお写真で一杯になってしまったが後悔は全くしていない。
しいて言うならこの携帯の画素数が200万画素を切っているという位か……今度からは2000万画素のデジタルカメラから携帯に送るようにしようか。
「う……ん……」
くぅぅっ!! 目の前に獲物があるのに罠があって踏み込む事が出来ないこのもどかしさ!! 貴様達には分かるまい。
食えるものなら今直ぐにでも――
「れ……い……」
プチン――
「ぜろさまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
確実に寝言ではあるが、私の名前を呼んでくれた……その瞬間、私の中で何かが爆発し、気が付いたら横になっている零様に飛び掛かっていた。
「ガホッ!?」
急に飛び掛かられた事に驚かれたのだろう、意識を取り戻した零様が何やらおっしゃっているが、私の耳には入らない。
「な、何!? 何が一体どうなって――」
「零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様零様!!」
「ちょっ!? 零だよな!? やめっ――お前の胸のせいで息が……」
「はぁ……零様……。一生付いてまいりますっ!!」
戸惑いっぱなしの零様の首に手を回し、零様のお顔を私の胸に抱き寄せ……抑えられない衝動をいっぺんに放出しながら抱き着く力をついつい強めてしまう。
それがイケなかったのだろう……。
ボキッ!
という何かが折れた音が私の耳にハッキリと入る。
そして次の瞬間……。
「あんぎゃぁぁぁぁぁ!?!!??!?!」
今まで聞いた事の無い零様の叫び声が、今は閉めていて静かな店の中全体に響き渡った。
終了
~前の話の後書きの答え~
零は零を決して健全な目では見てい無かった。