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男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~  作者: シエスタさん
お騒がせな奴ら

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26話 お出かけをしよう

 開拓都市に戻る事数日。

 いつも通り、ダンジョンに潜っては戦利品を換金し、休息を挟む。

 実に一般的な冒険者稼業に僕たちは精を出していた。


「えーっと、こっちがリリちゃん。そっちがルルちゃん、これがナズナに渡す分で……こっちはプールする分ね」


 そんな日常の休日、僕は宿の自室でお金の勘定をしている。

 基本的にはパーティーでプールする資金以外は順当に分配している一般的なパーティーのあるべき形だ。

 最初はただ後方で見ているだけの僕が同額貰うのも……と減額を進言したが、全員総出で止められた。


「いやいやいやいや!おにーさんがいるからやっていけてるんだから!」

「同意。そこまで卑下するのはむしろ良くない。黙って受け取るべき」

「言っておくッスけどアウリィさんがいないとこのパーティー成り立たないッスからね……そこら辺の自覚はして欲しいッス」


 と、全力で、あるいは呆れるかのように、否定されて以降は自分も受け取るようにしている。

 それにしても——。


「わぁ……。結構な金額だなぁ」

 

 最近の収入には目を見張るものがある。

 それもそのはず。ナズナもパーティーに加わり、加速度的に三人の実力が向上を続けているからだ。

 

 リリのお得意の精神魔法は有機生命体を模したモンスターだけに留まらず、洞窟や遺跡に出現するゴーレムや防衛ドローンにすら効果を示しているほど強力になってきているし、一般的なメイジの修める属性魔法の習熟もハイペース。正直メイジとして隙が無い。

 

 ルルも中々に理不尽な動きが板についてきた。単純な拳と蹴りの暴力だけではなく、投げ技や関節技も駆使する姿はまさにグラップラー。二倍ほどの体格差のあるストーンゴーレム相手に関節技を決め、流れるようにスープレックスに移行。強烈なローキックでコアを粉砕したりと一人でハチャメチャやっていたりする。

 

 ナズナはリリが妨害と攻撃の使い手だとすれば、意外にも支援特化。

「こんなもん適当でいいッスよ」

 と面倒くさそうに拵えたややギザついた人型の紙や少し崩れた字体の文字の書きこまれた札を駆使して戦う。

 一方で僕が後方で待機する場所には念入りに印を結び、お札を四方に貼り、念入りに保護してくれる。

 出会った頃よりもその技術は遥かに洗練されているように見える。

 死角から僕に飛び掛かってきたモンスターが結界に触れた途端、爆発四散したのには驚いた。

 ちなみに後方で作っていた料理名を当ててくるのにも驚いた。……あのヒトガタ、監視カメラ機能無いよね?


 

 「よし、こんなものかな」


 事前に用意しておいた各々のデフォルメした顔の刺繍入り巾着袋に金貨銀貨を入れていく。

 取り分に差はないけど、こういうのって可愛いからね。気分の問題だよ。ちなみに僕の分は無地。

 一時期のナルシストも最近は収まってきたし、自分の顔をわざわざ刺繍する気にはなれない。

 受け取る皆はデフォルメされた自分の顔と僕の顔を交互に見て複雑そうな表情をするけれど……。

 金勘定を一任した以上、文句は受け付けないよ。



 「準備完了。たまにはまた皆を誘って都市を散策してみようかな」


 巾着袋を渡すついでだ。 今日は三人をついでに誘おう。

 何せ、前々からやりたくてウズウズしていた事があるから——。



「おにーさん、デートありがとー!」

「四人で都市ぶらするのをデートと言っていいのか。ルルは訝しんだ。あ、お兄さんお誘い感謝」

「おぇっぷ……。昨日吞み過ぎて頭痛いッス……。でもあっしだけ休んでる訳には……うっぷ……」


 一緒に出掛けない?そう誘うと三人は快諾し、晴れて四人でのお出かけとなった。

 本日は晴天で正にお出かけ日和。

 しかし、リリとルルのハイテンションとは裏腹にナズナはグロッキー。

 粗相があった場合は速やかに連れ帰ろう。

 

 

「それで本日のご予定は?」

 

 真昼間でありながら眠たげな眼でそうルルが水を向けてくる。

 そこは大丈夫。何せ今日は明確な予定があるのだ。

 

「今日はどうしても行きたい場所があるんだ。悪いけど付き合ってね」


 受付のおじさんに書いてもらった簡易的な地図を見ながら目的地を目指す。

 亜人の余り立ち入らないメインストリートを避けたチョイスを黙ってしてくれる。

 こういう所に気を回してくれている辺り、おじさんが同性として気にかけてくれているのを感じる。今度何か差し入れしようっと。

 流石にお店というだけあって人間も亜人も利用客の多い場所だが——。前回の轍は流石に踏まないだろう。流石にね。

 


「えーっと、地図では大通りに一旦出て、あっちを右に曲がるらしくて……ん?」

 

 ふと向かいに大きな建物が目に入るのが見える。

 液体を象った看板に清潔感のある見通しの良い入り口。

 入口には厳つい人間の女性兵士が二名立っている。

 目を引いたのはそれだけではない。

 入っていくのがあまり都市でも見ない男性ばかりなのだ。

 中には人目を気にするようにきょろきょろと辺りを窺いつつ入ったり、うな垂れながらも兵士に連行されている男性もいる。

 


「ねえ。あの建物って……何?男の人ばかり入っていくよ。珍しいね」


 つい気になって三人に尋ねる。

 こういう所からしっかり常識について学ぶ必要があるし、いい機会だよね。

 ほら、あっちとばかりに指で示す。

 

「え?どこどこ?……って、あっ」

「おーう、あれは……不味ッ」

「うえっぷ……。なんスかぁ、アウリィさ~ん。あの建物がどうかしたッスかぁ?」


 建物を一瞥したリリとルルは慌てて視線を逸らすが、ナズナはぼんやりと入り口を見つめ続けている。

 足を止めて建物を見ていたのはほんのひとときであったが、それに気づいた警備の兵士が両方ともこちらを鋭く睨みつけてくる。

 あまりに険しいその表情に思わず身体が強張った。


「わわっ!やっば!おにーさん、行こ行こ!」

「ナズナ、さっさと移動。ほらこっち」

 

「うっ……ぐぇ……!出る出る……!逆流しちゃうッス……!」


 背を押され、リリに促されるまま移動し、次の角を曲がる。

 ナズナの鈍い悲鳴が聞こえるが、まだ持ちこたえているようだ。

 流石に建物を離れてまでは追ってこないらしい。


「ちょっとびっくりした……。ごめんね二人とも」


 あまりじろじろ見てはいけない場所だったのだろうか。

 こういう時、無知だと困る。今回も三人に迷惑をかけてしまったのだろうか。


「ううん。別に大丈夫なんだけどね……あそこってほら、その……」


「…………あそこは精子バンクセンター。何をする場所かと言われれば……名前の通り」


 精子バンクセンター。

 名前を聞いてギョッとしてしまう。

 それは二人が言い淀むはずだし、そんな場所をマジマジと立ち止まって見つめていたのか、自分は。

 ついつい顔から火が出そうになる。……ポーカーフェイスは顔色にすら対応しているが。


「それは、ごめんね。何も知らなかったから……精子バンクも名前だけこの前聞いたっきりで……」


 ちょっとこれはこの場で女性に尋ねるにはハードルが高い。

 後で恥を忍んで受付のおじさんにでも聞いてみようか。

 また呆れたような表情をするおじさんの顔が脳裏に浮かぶ。


「はれぇ?アウリィさん精子バンク、センター知らないんれすかぁ?」

 

 切り替えて地図を開こうとしたその時、ナズナが声を上げる。


「なら教えてあげますよお~。この!あっしが!精子!バンク!センターぁぁぁ……について!……うぷっ」

 

 ちらりとリリとルルを見やる。


「リリはノーコメント……話だけは聞いてもいいんじゃない?リリ達よりナズナ詳しそうだし」


「驚愕。コイツ、無敵か……?とりあえず吐くまでは情報吐かせていいと思う」


 なら決まりだ。いつも通り割と物知りナズナからのお勉強タイムといこう。


「ならお言葉に甘えて……。聞かせて貰っても良いかな、ナズナ」


 道端での酔いどれによる勉強会が唐突に幕を開けた。

 ……そういえばいつ目的地に着けるのかな。

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