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男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~  作者: シエスタさん


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17話 歓迎会を開こう

「申し訳なかったッス!この通りッス~!」

 

 ナズナの謝罪行脚。

 方々で見事なまでの土下座を決めて見せるナズナ。

 ルルにぶん殴られた際に拵えた青タンやみすぼらしい容姿が悲壮感を誘ったのか、彼女の独特な雰囲気が功を奏したのか。

 反応は割と穏当なものばかりだった。

 農村ではさっさと野菜泥棒がいなくなってくれればそれでいいというような反応。


「泥棒を、しかも亜人を許すだなんて!なんて懐の広い!ところで今夜は是非うちに……」

 

 弁償金や見舞金を払う事でむしろパーティー、というより僕の深い慈愛を褒め称える声が挙がる程だった。

 これなら村に遺恨の残る事はないだろう。

 ちなみにだが村長のおもてなしは、ナズナの手続きがあるからと丁重に辞退させて頂いた。

 恨めしそうなあの眼光を忘れるのは暫くかかるだろう。




「泥棒の保護観察と引き取りだぁ?んまぁいいけどよ……」


「深く!深く反省してるッス!この通りっス!」


 ここでも鮮やかに炸裂する土下座。


「本当かねぇ。目は離すんじゃねえぞ」

 

 胡乱な目でナズナを見る受付のおじさん。

 ギルドでの反応は概ねこんな感じ。

 変則的な制度の利用ではあるが、制度は制度。

 指しゃぶ事件さえ僕の心に仕舞い込んでおけばそれほど大事にはならないのだ。

 これも全てはナズナの握る情報の為。




「「「「かんぱーい!」」」」

 

 交流を兼ねたギルド併設の酒場での歓迎会。

 と言っても普段からリリとルルの三人で頻繁に食事を摂るのだが――。

 今日は四人でテーブルを囲んでいた。

 改めて互いの自己紹介を済ませ、少し豪勢な食事を楽しんでいく。


 

「あのてれび?とか、れいぞうこって奴ッスか?あの裏切り者の人間達と潜ったダンジョンで見かけたッス。全部朽ちたガラクタも同然だったッスけどね。ご丁寧に名称を書いたメモが転がっていたから覚えてたッス」


 食事の傍ら、リリとルルがリブステーキの奪い合いを開始したのを確認し、ナズナに件の話を尋ねる。

 何故この世界には存在しない家電の名称を知っているのか?だ。


「ダンジョンの奥にボロボロのテレビ……?」


「割れていたり明確に壊れていたッス。ただ、中級冒険者あっしや、同格の連中達でもそこそこ苦戦する場所でしたからね。壊れたガラクタに用事は無いしさっさと奥に進んだッス」


 まあその後こっぴどく裏切られて最終的には野菜泥棒に落ちぶれたんスけどね。と力なく笑うナズナ。

 どうやら嘘は言っていないようだ。

 しかしこれでは情報が足りない。


「うーん、実際に行ってみたい所だけど……」


「アウリィさん。それはやめといた方がいいッス。リリやルルに後れを取ったのは二人がルーキーとは思えない実力者だったから、というのは否定しないッス。でもあっしは装備が無かったんスよ?」


 皿の上のソテーを突きながらナズナが口を尖らせる。

 案外負けた事でプライドが傷ついているらしい。

 

「ふーん?つまり?リリ達がナズナの格下って事?」


「む、ちょっと不快。お仕置きタイム?」


 いつの間にやら目の前の皿を空っぽにした二人が身を乗り出してくる。

 血の気が多いのはうちのパーティーでは御法度にしたいのだが。


「ち、違うッス。そういう意味じゃないッスよ!装備が万全だった中級者のあっしらですらそこそこ苦戦する場所だったから今すぐってのは危ないって善意の警告ッスよ~。コレホント」


「そうだよ、リリちゃん、ルルちゃん。落ち着いて。お行儀よく食べよう。デザート頼む?」


「うう……確かにリリたちには早いかもしれないけどさ……頼むぅ」


「お兄さんに何か目的があるのならルルはついていく。でも確かにあそこらへんの難易度が高いのも事実。デザートは食べる」


 確かに今の僕達ではまだ早いかもしれない。

 というよりも今までの成長速度が異常なのだ。

 あっという間に初心者の立ち入りが認められているエリアを突破し、その先を進むための依頼を斡旋される。

 装備不足とはいえ、中級冒険者であるナズナを打ち破ってみせた。

 

 どれもこれも、周囲の冒険者達と温度感が違う。

 明らかに異常な二人の成長ペース。

 

 「やっぱりリンゲージか……」


 リンゲージ。結んだ絆の強さを相手へのバフに昇華させるスキル。

 肝心のスキルの持ち主の戦闘力は変動しないし、発現させるだけでも一苦労だというじゃじゃ馬。

 しかし、リリとルルの間に発現してからは、直感的に絆の大きさ?太さ?そういったものがわかるようになった。

 そしてそれが日に日に大きくなっているのも。

 

「でもデザート頼むか聞いてあげるだけで上がるのは変じゃないかなぁ」


 戦闘終了後にお疲れ様、怪我はない?と声をかける。

 ダンジョンで手料理を振舞う。

 食事の席で気遣う。


 これらから毎日一歩一歩着実にリンゲージで感じる絆が太く、大きくなるのを感じる。


「やっぱりどこか歪な世界だ……」


 本当は異性に興味があるのに見向きもされないどころか、顔を見るだけで泣き叫ばれるほど嫌悪される亜人達。

 どれだけ恋焦がれたとしても、遠くから見る事すら叶わぬ社会。

 その中でたまたま結びついた二人が何を考えているのかまではわからない。

 ただ、大きな何かだけが容易なものではないと自分に教えてくる。


「どうしたの?おにーさん?食べないの?」


「食べないならその食べかけの骨付きチキン、貰ってあげてもいい」


「良いわけないッス!アウリィさ~ん。あっしもデザート、頼んでいいッスか?」


 三人の声を受け、散らかった思考の渦から引き戻される。

 折角の楽しい歓迎会なのによくないな。


「うん、勿論。ナズナの歓迎会だからね。注文していいよ」


「よっしゃッス!な・に・を・頼もうかな~」


 何はともあれ、方針は一つしかない。

 例のダンジョンに挑まないという選択肢は無いのだから。


「ちょっと良いかな。明日からは許可の下りた先までダンジョン攻略に挑もうと思う。当面の目標はナズナの言っていたダンジョンに見合う実力をつける事。これでいいかな?」


 正直、これは僕のわがままだ。

 それでも皆が付いてきてくれるという確信がある。

 そのためにも目標を共有すべく、そう宣言する。


「もっちろん!今日は無理だったとしても、明日明後日のリリたちはどんどん強くなるもんねっ!まっかせて!」


「ルルは最初からそのつもり。お兄さんが行きたいというのならついていく。ルルも成長の日々。任せて」


「あっしは~……、断る事なんて出来ねえですし、実力を付けてからって話ならやぶさかじゃないッス!」


「ありがとう、皆。これからも足を引っ張らないように努力しつつ、後ろで何か出来ないか常に考えるよ」


 本当に、有難い。嬉しい。

 日々生きていくだけなら、それなりの稼ぎを得るだけなら。

 わざわざ僕のわがままに付き合う必要もないのに、二つ返事が返ってくる事実に胸が熱くなる。


「そういえば、なんでアウリィさんだけそんな戦闘力低いんッスか?」


 デザートスプーンを咥えながら、ナズナがふとした疑問を口に出す。


「あっ。そういえば説明してなかった」


「忘れてたわ……」「盲点」


 その後、ナズナに僕がリンゲージスキル持ちである事。

 リリとルル二人を相手にスキルが発現し、強力なバフが掛かっている事。

 そのおかげで毎日が目に見える程の成長の連続だという事を説明した。


 リリが、「一週間後にはナズナを超えてるかもね」なんて茶化すわ、ルルはただただ勝ち誇った笑みを向けるわ。

 最終的にはずるいずるいとギャン泣きするナズナを宥めるのに苦労する羽目になったのだった。

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