**第9話 魔王様と妹分、照れながら夜のベッドで争奪戦**
狭いシングルベッドに、三人で無理やり寝転がる。
俺は真ん中。
右側にリリス、左側にセラ。
二人とも俺のシャツをパジャマ代わりに着ていて、裾が短くて太ももが丸見え。
しかも二人とも俺にぴったりくっついてくるから、動くスペースがほとんどない。
「……はあ。マジで寝れねえ」
俺がぼそっと呟くと、リリスが俺の胸に顔を押しつけてくる。
「うるさい。魔王の体温で癒されろ。
……べ、別にくっつきたいわけじゃないからな! ただ、魔力共有のためじゃ!」
セラは反対側から俺の腕に自分の頰をすり寄せてくる。
「悠真くん、私のほうが柔らかいよ?
姉様より気持ちいいでしょ? ねえ、どっちがいい?」
「二人とも黙って寝ろ……」
俺はダメ人間らしく、目を閉じて現実逃避を試みる。
でも、右からも左からも柔らかい感触が伝わってきて、眠気どころか心拍数が上がる一方だ。
リリスが小さな声で呟く。
「……悠真。セラに……取られるの、嫌だぞ」
声が少し震えてる。いつものツンツンした態度が、完全に崩れかけてる。
セラがくすくす笑いながら、俺の耳元で囁く。
「姉様、珍しく弱気だね。
悠真くん、私のほうが可愛いよね? 毎日優しくしてあげるよ」
リリスが即座に反応。
「うるさい! セラ、お前こそ悠真にベタベタくっつきすぎじゃ!
……悠真は私の……私の伴侶候補なんだからな!」
リリスは俺のシャツをぎゅっと掴んで、俺の胸に顔を埋めた。
耳が真っ赤で、角が少し震えてる。
俺はもう諦めて、天井を仰いだ。
「……二人とも、明日大学あるんだぞ。
このままじゃ寝不足で死ぬわ。
壁の穴も三つ目になりそうで怖いし……」
セラが俺の首筋に息を吹きかけてくる。
「じゃあ、どっちか一人を選んで?
私と寝る? それとも姉様?」
リリスが慌てて俺の体を抱きしめる。
「選ぶな! 悠真は私を選ぶに決まってる!
毎日侵入してきてるのは私なんだから……!
……べ、別に必死になってるわけじゃないけど……!」
セラは楽しそうに笑いながら、俺の反対側の腕を自分の胸に押しつける。
「悠真くん、私のほうが小さい分、ぴったりくっつけるよ?
試してみて?」
柔らかい感触が直撃して、俺の理性が危うくなる。
(やべえ……魔王二人に挟まれてる……
これもう夢だろ……いや現実だ……心臓持たねえ……)
俺はヘタレ全開で、ぼそっと言った。
「……二人とも、ちょっと離れてくれ。
暑いし、息苦しいし……」
リリスとセラが同時に「え?」と顔を上げる。
リリスがツンとした顔で、
「ふん。暑いなら我が離れてやる。
……べ、別に寂しくなんかないからな!」
セラが上目遣いで、
「悠真くん、私がいなくなったら寂しいでしょ?」
俺はため息をついて、二人を軽く押し返した。
「……とりあえず、今日は普通に寝ようぜ。
明日の朝、誰が一番先に起きて朝ごはん作るかで勝負とかどうだ?
負けた方は、今日の夜は床で寝る」
リリスとセラが同時に目を輝かせた。
「ふん、いいぞ。我が勝つに決まってる!」
「やった! 私、絶対勝つよ! 悠真くんのために超美味しいの作るもん!」
俺は心の中で思った。
(はあ……これで少しは静かになるか……?
いや、絶対に朝から大騒ぎになるだろ……)
結局、その夜は三人でぎゅうぎゅうにくっついたまま眠りについた。
リリスは俺の右腕を枕に、セラは左腕を抱きしめて。
二人の甘い香りと体温に包まれながら、俺はぼんやりと思った。
(魔王様たちのツンデレ同棲争奪戦……
俺のダメ人間生活、もう完全に終わったな)
壁の穴の向こうから、微かな風が吹き込んでくる。
明日もきっと、平和とは程遠い一日が待っている。




