**第7話 魔王様と妹分、照れながら奪い合う**
講義が終わった瞬間、教室は一気にざわついた。
銀髪ツインテールのセラが、俺の机に両手をついて身を乗り出してくる。
「ねえ、悠真くん。リリス姉様が毎日部屋に侵入してるって本当?
どんなことされてるの? 教えてよ〜」
無邪気な笑顔なのに、目が本気でキラキラしてる。
見た目は中学生くらいだけど、魔王候補だけあってオーラが半端ない。
リリスが即座に俺の腕をぎゅっと掴んだ。
「セラ! お前は黙ってろ!
悠真に近づくな! ……べ、別に嫉妬してるわけじゃないからな!」
「えー? 姉様こそ、顔真っ赤だよ? 可愛い〜」
セラはくすくす笑いながら、俺のもう片方の腕に自分の腕を絡めてきた。
「悠真くん、私もお隣さんになりたいな。
壁、ぶち破って毎日遊びに行っちゃおうかな?」
「待て待て待て! 二人ともやめろ!
俺の部屋はボロアパートだぞ! 壁二つも壊されたら大家さんに殺される!」
俺はダメ人間全開で両腕を振りほどこうとしたが、魔王候補二人の力が強すぎてビクともしない。
リリスがセラを睨みつける。
「セラ、お前は魔界に帰れ!
悠真は……わ、私のものじゃ! 毎日侵入してるのは私だけだぞ!」
「ずるいよ姉様ばっかり!
私だって悠真くんと一緒にいたいもん。
ねえ悠真くん、私とゲームしよ? 姉様より上手く遊んであげるよ」
セラは俺の腕を自分の胸に押しつけるようにして、上目遣いで見つめてくる。
小柄なのに、意外と……柔らかい。
俺の頭が真っ白になった。
(やべえ……魔王二人に挟まれてる……心臓やばい……しかもセラの胸が……)
リリスが慌ててセラを押し退ける。
「こ、この小娘! 悠真にくっつきすぎだ!
……べ、別に私もくっつきたいわけじゃないけど……!」
「姉様こそくっつきすぎ! 悠真くんはまだ私のこと何も知らないんだから、公平にしようよ」
二人が俺を挟んで言い争いを始める。
周りの学生がスマホを向け始めている。
「マジで何この状況……三角関係?」
「高見沢、羨ましすぎるだろ……」
俺は椅子に座ったまま頭を抱えた。
「はあ……今日の講義、完全に聞いてねえ。
単位どうすんだよ……しかもこの二人、帰り道どうすんだ」
リリスが俺の肩に頭を乗せてくる。
「悠真。帰りは私が送ってやる。
……べ、別に心配してるわけじゃないからな!」
セラが反対側から俺の腕を抱きしめる。
「私も送る! 悠真くん、今日は私の部屋にも来てよ。
魔界のお菓子、たくさんあるよ?」
「二人とも勝手に決めんな!
俺はただ家に帰って寝たいだけなんだよ……」
そのとき、リリスが急に真顔になった。
「……セラ。お前、本気で悠真を狙ってるのか?」
「うん。本気だよ。姉様が本気みたいだから、私も本気」
セラの笑顔が、少しだけ魔王らしい鋭さを帯びる。
リリスは俺の腕を強く引き寄せて、ツンとした顔で宣言した。
「悠真は私のものだ。
毎日壁をぶち破って侵入してるのも、私だけだからな!
……お前には、渡さないぞ」
声が少し震えていて、照れ隠しのツンデレが限界まで来てるのがわかった。
セラはにやりと笑う。
「じゃあ、勝負だね。
どっちが悠真くんの心を先に掴むか」
俺は天を仰いだ。
「……はあ。今日も平和じゃねえ。
壁の穴二つ分、修理代どうすんだよ……」
大学からの帰り道、俺は魔王様とその妹分に両側から腕を掴まれながら歩いていた。
リリスは右側で「べ、別に嬉しいとかじゃないからな!」とブツブツ言い、
セラは左側で「悠真くん、もっとくっついていいよ?」と無邪気に笑う。
俺のダメな日常は、完全に二人の魔王候補に占領され始めていた。




