**第15話 人間界に戻る、照れながらの新生活スタート**
魔王城の広間から空間転移の光が収まると、
俺たちはいつものボロアパートの部屋に戻っていた。
壁の穴は……奇跡的に修復されていた。
魔王の魔力で一瞬で元通りになったらしい。
大家さんが気づく前に済んでよかった。
「ふう……やっと帰ってきた」
俺はベッドにへたり込み、深いため息をついた。
リリスが俺の隣に座り、ツンとした顔で腕を組む。
「ふん。魔王城のほうが広くて豪華だったのに……
こんな狭い部屋で満足するなんて、悠真は本当に人間らしいな」
セラが俺の反対側にぴったり寄り添って、笑う。
「でもここが悠真くんの匂いがするから、好きだよ!
毎日一緒にいられるしね」
ミリアが俺の膝に飛び乗ってきて、甘える。
「悠真お兄ちゃん! 魔王城よりここがいい!
お兄ちゃんのベッドで一緒に寝れるもん!」
母上が部屋の隅で優雅に微笑みながら、
「ふふ、魔界と人間界を行き来する生活も悪くないわね。
あなたたちの『日常』を、私も少し味わってみたくて」
魔王は……どうやら魔界に残って執務中らしい。
「人間界のことは娘たちに任せた」と言って、空間転移で送り返してくれた。
俺は四人に囲まれて、頭を抱えた。
「……はあ。今日から大学通うのに、
魔王一家全員が俺の部屋に住むって……
マジでどうすんだよこれ」
リリスが顔を赤くして、俺の肩を軽く叩く。
「うるさい! 私たちは……お前の伴侶候補なんだから当然じゃ!
べ、別に毎日くっつきたいとか、そんなんじゃないからな!
ただ……魔力共有のために、近くにいる必要があるだけ……!」
セラが俺の腕に絡みつきながら、
「そうだよ! 大学も一緒に通うんだから、
朝起きたらみんなでご飯食べて、
夜はみんなでベッドで……えへへ」
ミリアが俺の胸に顔を埋めて、
「私も学校行きたい!
悠真お兄ちゃんの隣の席がいいよぉ」
母上が俺の耳元で囁くように、
「ふふ、私もたまには人間界の『デート』に付き合ってあげようかしら。
あなたみたいな可愛い人間と……楽しみね」
俺は天井を仰いで、ぼそっと呟いた。
「……大学、明日からサボりたくなるレベルだわ。
しかもこの四人に毎日囲まれてたら、
課題とか講義とか集中できねえ……」
リリスが俺の頰を両手で挟んで、真っ直ぐに見つめてくる。
「悠真……ちゃんと大学行け。
私が……見張っててやるからな。
……べ、別に心配してるわけじゃないけど……
お前がダメ人間のままだと、私の伴侶として恥ずかしいから……!」
セラが俺の首に腕を回して、
「私も見張るよ! 一緒に勉強しようね」
ミリアが俺の膝の上で跳ねて、
「私も勉強する! 悠真お兄ちゃんに褒めてもらいたい!」
母上が優しく俺の髪を撫でて、
「みんなで支えてあげるわ。
人間界の生活も、魔王一家で楽しんでみましょう?」
俺はもう諦めて、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。
「……はあ。今日も……いや、もう毎日が平和じゃねえ。
魔王一家と人間界で同棲生活かよ……
壁の穴は直ったけど、心の穴は埋まらねえな」
夜が更け、アパートの部屋に四人の甘い体温と香りが満ちていく。
リリスは俺の右腕を枕に、
セラは左腕を抱きしめ、
ミリアは俺の胸に頭を乗せ、
母上はベッドの端で優雅に寄り添う。
明日からは、
大学に魔王一家が(変装して)通う日常が始まる。
俺のダメ人間人生は、
完全に甘くて重い魔王一家に飲み込まれ、
新しい章を迎えていた。




