**第14話 魔王の過去、照れながら明かされる秘密**
魔王城の広間での「本気試験」が終わった後、
俺は魔王一家に囲まれながら、玉座の横にある小さな応接室に連れて行かれた。
重厚な扉が閉まり、部屋には柔らかい赤い照明だけが灯っている。
魔王が俺の前に座り、リリス、セラ、母上、ミリアが俺の周りに並ぶ。
魔王は深いため息をついて、ゆっくりと口を開いた。
「……人間よ。お前を婿として認めた以上、
魔王一家の『本当の過去』を話しておく必要があるな」
俺はダメ人間らしく、背筋を伸ばして座り直した。
「……過去って……魔王様の?」
魔王は頷き、赤い瞳を遠くに向けた。
「我は……元々、人間だった」
部屋に静寂が落ちる。
リリスが小さく息を飲む。
セラとミリアも目を丸くする。
母上だけは静かに微笑んでいる。
魔王は続ける。
「数百年前……我はただの人間の王族だった。
戦争に負け、魔界に追放された。
そこで、魔界の古い魔王の血を継ぐ娘――今の妻と出会った」
母上が優しく魔王の肩に手を置く。
「あなたは……私を救ってくれたわよね。
魔界の争いに巻き込まれて、死にかけていた私を」
魔王は苦笑する。
「救ったつもりはなかった。ただ……
お前があまりに美しくて、放っておけなかっただけだ」
母上がくすくす笑う。
「ふふ、それで魔王の血を継ぎ、魔王となったのよ。
人間の心を残したまま、魔界を統べる存在に」
リリスがぼそっと呟く。
「……父上……そんな過去があったなんて……
いつも威張ってるくせに……」
魔王はリリスを軽く睨む。
「威張ってるのは、お前たちを守るためだ。
人間だった頃の弱さを、二度と見せたくない」
セラが俺の手を握って、
「お父様……だから、人間界に興味があったんだね。
悠真くんみたいな……普通の人間に」
ミリアが俺の膝に頭を乗せて、甘える。
「悠真お兄ちゃん……お父様みたいに、
私たちを大事にしてくれるよね?」
俺はみんなの視線に耐えきれず、頭をかいた。
「……はあ。俺はただのダメ人間ですよ。
魔王一家の過去とか、重すぎて心臓が持たねえ……」
魔王が俺をまっすぐ見て、言った。
「だからこそ、お前は面白い。
人間の弱さを隠さず、娘たちに受け入れられている。
我が昔のようにな……」
母上が俺の頰に指を這わせ、妖艶に微笑む。
「ふふ。だから、あなたを婿に迎えるの。
人間の温かさを、魔王一家に取り戻すために」
リリスが顔を赤くして、俺の腕をぎゅっと掴む。
「べ、別に……父上の過去に感動したわけじゃないからな!
ただ……悠真が……私たちの家族になるって……
まあ、悪くない……かも……」
セラが俺の肩に寄りかかり、
「悠真くん、私たちみんなで……幸せになろうね」
ミリアが俺の胸に顔を埋めて、
「ずっと……一緒にいてね……」
魔王は立ち上がり、俺に手を差し出した。
「高見沢悠真。
これからは、お前も魔王一家の一員だ。
人間界と魔界、両方を繋ぐ存在として……生きろ」
俺は震える手で魔王の手を握り返した。
「……わかりました。
でも……俺、大学とか課題とか、まだ残ってるんですけど……
魔王城から通学とか、無理じゃね?」
魔王一家全員が一瞬固まり、
次に爆笑した。
魔王が肩を震わせて笑う。
「ははは! 人間らしいな。
心配するな。空間転移で通わせてやる」
リリスがツンとして、
「ふん。悠真は……私の隣で勉強しなさい。
べ、別に一緒にいたいとか、そんなんじゃないからな!」
俺は天井を仰いで、深いため息をついた。
「……はあ。今日も……いや、もう一生平和じゃねえな。
魔王の過去まで知っちゃって……
完全に逃げられなくなった」
魔王城の夜は深まり、
魔王一家の甘い秘密と、
俺のダメ人間人生の新章が、静かに始まろうとしていた。




