**第12話 儀式中、照れながらの魔界乱入者**
魔法陣の光が柔らかく俺とリリスを包み込む。
リリスは俺の正面に立ち、両手を俺の胸に置いて、真紅の瞳をまっすぐに見つめてくる。
「悠真……目を逸らすな。
魔力共有の儀式だから……ちゃんと、私を感じろ」
声が少し震えてる。
耳まで真っ赤で、角がピクピク動いている。
普段の高飛車な魔王様が、こんなに照れながら近づいてくるなんて……ヤバい。
俺はダメ人間らしく、喉を鳴らした。
「……リ、リリス。近いって……」
「うるさい! べ、別に私が近づきたいわけじゃないからな!
ただ、父上の前で……ちゃんとやらなきゃ……!」
リリスの体がさらに近づき、胸が俺の胸に軽く触れる。
甘い香りと熱い魔力が、俺の体をじわじわと溶かすように流れてくる。
セラが後ろで「きゃー、姉様大胆!」と小さく囁き、
母上が「ふふ、可愛いわね」と微笑み、
魔王は玉座から腕を組んで見守っている。
リリスの唇が俺の耳元に近づき、囁く。
「……悠真の……心臓、うるさいぞ。
私の魔力が……伝わってる……?」
柔らかい唇が耳たぶに触れそうになった瞬間――
ドゴォォォン!!
魔法陣の外側から、盛大な爆音が響いた。
広間の扉が吹き飛び、煙が舞う中、一人の少女が飛び込んできた。
長い銀髪をなびかせ、赤い瞳に小さな角。
セラに似てるけど、もっと幼くて、フリフリの黒ドレスを着てる。
「リ、リリス姉様ぁぁぁ!!
セラ姉様もぉぉぉ!!
私も混ぜてぇぇぇ!!」
少女は魔法陣に突っ込んでくる勢いで、俺とリリスの間に割り込んだ。
リリスが慌てて後ずさる。
「ミ、ミリア!? お前、なんでここに!?
お前はまだ魔王候補にもなってないガキじゃ!」
ミリア(らしい少女)は俺の腕に抱きついてくる。
「だってぇ! お姉様たちが人間の男の子とイチャイチャしてるって聞いて……!
私も悠真お兄ちゃんに会いたかったのぉ!」
セラが目を丸くする。
「ミリア!? お母様、ミリアも連れてきたの!?」
母上がくすくす笑う。
「ふふ、ミリアったら……我慢できなかったみたいね。
末っ子は甘えん坊だから」
魔王がため息をつく。
「……まったく、娘どもが多すぎる。
人間よ、お前はよく耐えているな」
ミリアは俺の胸に顔を埋めて、甘えるようにすり寄ってくる。
「悠真お兄ちゃん、私も儀式したい!
お姉様たちみたいに……くっつきたいよぉ」
リリスが顔を真っ赤にしてミリアを引き剥がそうとする。
「こ、このガキ! 離れなさい!
悠真は……わ、私の……!
べ、別に順番待ちしてるわけじゃないけど……!」
セラがミリアの頭を軽く叩く。
「ミリア、儀式は順番だから待ちなさい!
でも……可愛いから許しちゃうかも?」
母上が俺の肩に手を置き、妖艶に微笑む。
「ふふ、悠真くん。
娘が四人も相手じゃ……大変ね。
でも、魔王一家の愛情は重いわよ?」
俺は魔法陣の真ん中で、四方から囲まれて頭を抱えた。
「……はあ。今日も平和じゃねえ。
今度は末っ子まで乱入かよ……
儀式って……これ、もう儀式じゃなくて家族総出の囲い込みじゃねえか」
ミリアが俺の首に腕を回して、甘えた声で囁く。
「悠真お兄ちゃん、私の魔力も感じて?
ちっちゃいけど……いっぱいあるよ?」
リリスが俺の左腕を引っ張り、
セラが右腕を、
母上が背後から肩を抱き、
ミリアが正面から抱きつく。
魔王は玉座で静かに見守りながら、ぼそっと言った。
「……人間よ。
これが魔王一家の『親密儀式』だ。
耐えきったら……お前を正式に婿に迎えてもいいぞ」
俺のダメ人間人生は、
魔界の四姉妹(+母上)に完全に包囲され、
逃げ場のない甘い地獄へと突入した。




