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76.別の時間魔法使い


 カソリゾイと別れた後、帝都の下町で情報整理をしようという話になった。下町には貴族街と違って夜間警備隊はほとんどいない。だが、静謐とした貴族街と異なり、下町は深夜といえど活発に動いていた。


 イヴィアナは正体が露見されないよう身を隠し、人通りの少ない路地裏で腰を下ろした。少し歩けばまた深夜の喧騒が広がっている。


 早速イヴィアナは「はあ」と、辟易と悲壮の籠った溜息を吐いた。そして不貞腐れた態度で話し出す。


「やっと話せる……」イヴィアナは俺の肩に寄りかかった。「私たちのやり直しが"時間"の支配って言われてからずっと話したくて仕方なかったんだから」


「それは俺も同じ」

「"刹那のウルリクアクア"――"時間"と言ったらあいつしかいない」

 

「うん」と、俺は単調に返す。恐怖と混乱で頭の整理がついていなかった。


「だけど、おかしな話だよね?私たちは伝説のパーティーに嵌められて何度も破滅してる。ずっと伝説のパーティーが勝ってるっていうのに、戻す必要あるの?」


 ――その通りだ。


 俺もイヴィアナと同じ疑問を抱えていた。


 前回はまだしも、イヴィアナのやり直しを合わせたら、俺たちは伝説のパーティーの思惑通り3度も魔王を討伐している。そして、その後の襲撃で命を落としている。


 魔王の討伐、そして恐らく邪魔な俺たち勇者パーティーの排除に成功している例が3回もあると言うのに、なぜやり直す必要があるか。


「もはや時間を戻しすぎて俺たちがその魔法に巻き込まれるっていう変異が起きてるんだろ?益々伝説のパーティーの目的……?――の雲行きが怪しくなってる気もするけどな」

「きっと問題があるとしたら、私たちが魔王討伐した後のその先にある障壁なんじゃない?魔王を討伐をさせることは"目的"の途上だと思うし」


 "その先にある障壁"――規格外の実力を持つ伝説のパーティーがぶつかる障壁とは一体どれほど堅牢なのだろうか。魔王討伐後の話は俺たちには知り得ない話だ。可能性は高い。


「それと、私たちってその"やり直し"に巻き込まれたわけじゃないと思わない?」


 イヴィアナは俺の肩に寄りかかりつつ、俺と目を合わせる。イヴィアナのせいで腕を動かして頭をかけない。

 

「え?なんでだ?意図的に俺達も戻してるのか?それって、刹那のウルリクアクアに利点ってある?」

「ウルリクアクアに利点は一切ないと思う。私たちが殺されるって言うのを知られてしまうきっかけになるからね」


 ――それじゃあイヴィアナの推論はますます荒唐無稽じゃないか?


「でも、毎回毎回私とリアトだけ巻き込まれるって絶対におかしい。グレイやシェル、エリィだって1度くらいは巻き込まれても良いはずだよ」


 俺は黙考して頭を整理した。確かに俺とイヴィアナ"だけ"というのも不可解な話だ。だが、やはり向こう側の利点がひとつも思いつかない。


「いやぁ……」と否定し始めようとしたが、イヴィアナに口を閉じられた。彼女は俺の肩から顔を起こして真摯に俺を見つめる。

 

「言いたいことはわかるの!私たちを戻すことは伝説のパーティーにとって――ウルリクアクアにとって何の利点もない。むしろ目的の途上で必要な魔王討伐を私たちが忌避することになる。だから……」


 イヴィアナは言葉に詰まって体を揺らし始めた。確信のない推察を口にするのを憚っているようだ。自信を無さそうに俺の口から手を離した。


 俺は容赦なく「だから?」と言って発言を促す。


 ――だって気になっちゃうから。


「"別の時間魔法の使い手"の可能性はあるかなって……思った」

「別?」


 イヴィアナは俯いて「うう~ん」と唸った。


 時間魔法は炎魔法や水魔法のように普遍的な魔法なのだろうか。


 ――そんなわけが無い!


 時間を操れるというチート級の魔法を数多くの魔道士が使えてたまるものか。世界の均衡が崩れてしまう。


「私の妄言だと思ってもらって構わないんだけど、私がマルシュを殺した時、ホワステルはウルリクアクアに"戻してよ"って頼んでたでしょ?」


 イヴィアナは顎に手を添えて真剣に話し出した。


 あの憎悪の炎は未だに脳裏に焼き付いている。イヴィアナのあんな過激な魔法は初めて見たのだ。


 イヴィアナの言うホワステルの発言の後、ウルリクアクアは確か――『ホワステル、わかってるよね……?実態がないと"それは"できないよ……』と言った。


 "それは"――というのは時間を戻すことだろう。マルシュの花死病を戻せていたのは、マルシュという"実態があるから"できていたのだろうか。


「……そうだ!ウルリクアクアの"実態がないからできない"って言うのはおかしい。この世界ごと時間を戻せるなら、あの時マルシュがイヴィアナに焼かれる前に戻して助ければよかったんじゃないか?」

 

「そう!」とイヴィアナは俺の太ももを叩いた。「あの時ホワステルも納得してたし、打つ手なしって感じだった。ウルリクアクアにはマルシュを助ける手段がなかったってことになる」


 最強の白魔法でも打つ手がなくなったホワステルの焦燥ぶりは記憶に焼き付いている。ウルリクアクアも確かに狼狽えていた。


「つまり、ウルリクアクアは"まともに時間を巻き戻せない"」


 俺は呆然と呟いた。


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