47.厄介な精神魔法
指揮者シェフドルは衝撃的な事を告白した。彼は災禍の四柱ではなく、今の魔王の側近──?
ならば、彼が言っていた2人は不可知のユーペスと魔王城の番人ネベルブリーヤのことを言っていたのか。
口をあんぐりと開けていたアイユイユは、唐突に正気に戻って首を振った。そして色つきサングラスを付け、襟をと息を整えていた。
「そ、それだとワタクシの研究は今までなんだったんですかぁ!!」
癇癪を起こすアイユイユに、シェフドルは眉を顰める。
「確かに僕も400年前結構やらしてもらったけど、そもそもあの時子供だったからな?貴方たちが殺した耄碌ジジイと同じように、執達吏は結構歳くってる奴らだぞ?」
「ええ……困りますそういうの!」
アイユイユは子供さながら感情に身を乗せて話していた。呆れた宮廷魔導師だ。
指揮者シェフドルが今の魔王側近なら、この襲撃もその魔王の命によるただの防衛手段か?
いや違う──私たちが八斬りのシュラクペを殺害した事実を知っているのはおかしい。益々頭が混乱する。
今の魔王派閥である魔王城の番人ネベルブリーヤ、不可知のユーペス、指揮者シェフドル。
400年前の魔王派閥である災禍の四柱──八斬りのシュラクペ、万物凌駕のミレ、刹那のウルリクアクア。
この2つの派閥は敵対していなければおかしい。
なぜなら、災禍の四柱は伝説のパーティーと気脈であり、今の魔王を討伐する目的がある。
この目的がある限り、今の魔王の派閥にいる側近3名と災禍の四柱は相容れない関係のはずだ。
それなのにシェフドルは八斬りシュラクペの死亡を知っている。つまり、伝説のパーティーと──災禍の四柱と繋がりがあるのだ。
シェフドルは今の魔王を殺したいのか?
「あんた、なんで私たちを見つけられたの?私たち隠れてたんだけど」
2人の歓談に割入って、話しかけた。
「それを分からない貴方たちは本当に面白いな?」
シェフドルが手で口を隠してケタケタと嘲笑う。私を見つめる漆黒と群青の瞳にも、嘲笑が含まれているように見えた。何が言いたいんだ。
「僕は執達吏に憧れてるただの少年だよ?アイユイユともう少し話したかったけど、これ以上の無駄話は不要だな?」
シェフドルは指揮棒を構えた。魔法が詠唱される。
『火炎放射』
『それを操れ』
「さぁ、もう少し激しく奏でて?」
彼が詠唱する前に魔法を放つが、やはりそこに実態はなかった。指揮者シェフドルという存在が曖昧模糊だ。
アイユイユに実態が認識できるならば、この空間に実態がいることは確かだ。だが、いくら口頭で指示されても場所を明確に教えられる手段はない。正確に当てられるかも分からない。
どう戦えば──と思索を巡らせていた時、真横で剣戟の音が響いた。
驚愕で固まったまま尻目に捉えたのは、私に斬りかかるグレアムの攻撃をエリィが防いでる様子だった。
「グレイ…?」
「イヴィアナ逃げろ。グレアムの一撃は俺には跳ね返せない」
エリィの警告に従い、急いで逃げた。その後グレアムの一撃は振り下ろされ、エリィもなんとか躱していた。
「精神魔法なのである程度予想はしていましたが、ここまで億劫な精神魔法とは……フェリシィラ嬢を操りワタクシたちを襲ったのも貴方ですね?」
「ご名答だよ?」
アイユイユの質問にシェフドルは含み笑いで即答する。
アイユイユの言う通り、グレアムはシェフドルの魔法によって操られている。よりにもよって1番手強いグレアムを手駒にされるとは最悪だ。
「全員を操るのは面白くないからな。僕は芸術を嗜む柄なんだ」眼前のシェフドルが再び指揮棒を上げようとした瞬間、表情が変化した。「ほう……貴方がラフアンさんの契約者か?なら僕の呪いは無理か?」
エリィは狂王ラフアンの加護か呪いか、シェフドルの精神魔法が効かないようだ。エリィには加勢して欲しいところだったが、グレアムの対応で手一杯だろう。
今も尚、グレアムとエリィは白熱した剣戟戦を繰り広げている。
「イヴィアナ!そんな持たない。早めにどうにかしてくれ」
「分かった」
エリィも本気で妖刀を振るっている。狂王ラフアンの呪縛がかかった妖刀で傷を与えれば、グレアムが死んでしまうこともお構い無しに本気で戦っていた。そうしなければエリィがやられてしまう。
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