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42.既視感のある瞳


 あの現場から離れ、ベンチで仰向けに寝転がった。マリオネの糸魔法による治療を受けている。


 麻酔のない手術のようなものなので激痛は伴うが、シェリロルが契約している憩泉の精霊(ユーチー)でもこの弾丸を消滅させることは不可能だろう。夜間警備隊の銃器は全て鍛冶屋の魔法によって作られた魔道具で、弾丸も特殊なものだ。


「ていうか、なんでマリオネが私を助けに?」

「何年もかけて王都に防衛網を張り巡らせてんだ。どこで誰が何しようがオレにバレバレってことよ」

「あんた間違いなく天才だね……」


「ったりまえよ!」と暇そうな左手が親指を立てた。「ま、さすがに盗み聞きとかは出来ないけど〜、何をしてるかってのはわかる。あとオレも人間だから細けーのは気づかない。激しい動きされたら嫌でも気づく。あの帝国の夜間警備隊が戦闘態勢に入ったのを感じ取ったってとこかな」


 なるほど。だからマルシュとホワステルが忌憚(きたん)なく色々話していたのか。余裕綽々(しゃくしゃく)とした行動かと思ったが、監視の目から華麗に避けている。


「ねえマリオネ、あの夜間警備隊知り合い?」

「ハア?違うよ。知らない」

「どっかで見たことあるような目してたんだよね……」

「目?」


 あの深海さながらの瞳は間違いなく既視感があるのに、中々脳内から引っ張り出せない。


「あの忌々しい軍帽のせいでよく見えなかったし、見たくねー」


 マリオネは私とグレアムへの友好的な態度が珍しいだけで、ヘズ帝国のことを敵対視し嫌悪している。繊細な魔法をかけながら「帝国の匂いが着いた」とか「オレの糸が汚れた」とかいう愚痴を零していた。


「終わったー」


 30分ほどで弾丸は摘出され、内蔵の傷の修復をもこなしてくれた。最後は糸で傷口を縫い合わせてくれた。糸魔法って想像以上に汎用性が高いな。


「何してたのか知らないし、イヴィアナなら別に気にすることもないけどさ。くれぐれも気をつけろよ」


 私が不可解に話を転換した事に気がついていたようだ。マリオネは私の決まりの悪い表情を見てから、目を(すが)めて話を続けた。


「あの夜間警備隊(皇帝の犬)、"ここでは何もしない"って言ってた。王都(ラヴィンタ)を離れたら危ないぞイヴィアナ」


 虎視眈々と様子を伺うつもりだったが、憎悪の感情が暴走して踏み込みすぎてしまったのは反省だ。伝説のパーティーも"目的"はあれど、秘密を知られた人間は抹殺するだろう。


 今回の魔王討伐に向かう時、ハルヴィンや他の伝説のパーティーと戦いを交えるかもしれない。


「オレは王都を防衛する任務があるし……ってまぁ、イヴィアナを心配するなんて烏滸(おこ)がましいか。じゃ、グレアムによろしくな」

「ありがとう、マリオネ」


 マリオネは「どういたしま」と言って颯爽と闇夜に消えた。


 宿屋に帰宅すると今日もグレアム、リアト、エリィ、シェリロルの4人で晩食をとっていた。


「ただいま」と言うと、「おかえりなさい」だの「おかえり」だの返ってくる。みんな愛しい私の仲間だ。


「ご飯いらないの?イヴィ」


 グレアムの一声に、腹を摩った。腹部を怪我したばかりでお腹に何かを入れようとは思わない。ん?──傷は癒えたけど服に血液が染みている。


「イヴィ、何があったの?」


 平素を装って帰宅したからか、グレアムは静かに(いきどお)っていた。マリオネのやつ、私が仲間に隠匿(いんとく)したいことを知っておきながらなぜこの致命的な証拠を指摘してくれなかったんだ。


「大変です!今すぐ治療しましょう!」


 シェリロルは席を飛び立ち、私に向かって走ってくる。


「大丈夫大丈夫シェル!落ち着いて!」


 危なかった。シェリロルが私の目前で急停止してくれたおかげで衝突を免れた。衝突されたら傷に響いていた。


「何やってんだよシェリロル。イヴィアナがもっと怪我するだろ」

「エリィさんの言う通りです……すみません……」


「シェルの優しいとこは分かってるから平気だよ」


 シェリロルの癖毛のふわふわな髪を撫でる。彼女はいつでも純真無垢で可愛げがある。私より8歳も上の24歳である、という事実は目をつぶっておく。


「ねえイヴィ、僕ちょっと怒ってるけど?」


 リアトは眉を下げて憂慮してくれているが、1番面倒なグレアムが見逃してはくれなかった。


 せっかくの機会だし、伝説のパーティーに関する全てを打ち明け、魔王討伐までの道のりを皆で相談しよう。


 アイユイユとマリオネを救ったことで運命は大きく傾き出している。


 じきに魔王討伐に赴く必要があるが、ホワステルやマルシュら伝説のパーティーを殺してからでないと、魔王討伐できない。魔王を討伐して世界の平和を守る前に、私たちを死に至らしめる諸悪の根源を打ち消さなければ。


 伝説のパーティーの話は、近いうちに話さなければならなかった。そう考えると、私の大胆不敵な行動のおかげでみんなに話す時宜(じぎ)を得たのかもしれない。


「みんなに話したいことがある。……でもとりあえず、今日は安静に寝てもいい?」


 エリィとリアト、シェリロルは眉をひそめながらも頷いてくれた。グレアムはらしくない舌打ちをして「わかった」と言い放った。


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