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六十九話

毎日三話更新

 私はかつてない勢いで握り飯をばくばくと口に運んでいき、他の三人は唖然として顔を見合わせえていたが気にしなかった。


 地割れの発生や海からの五行を収集など、大規模な五行操作を立て続けに行って猛烈に空腹だったのだ。


 俊宗は思い出したように「そういえば」と前置きをすると信太師匠に尋ねた。


「鈴鹿は信太師匠の弟子として江戸の防衛を務める予定でしたが、聞いての通り天狗の所へ勉学に行くとのこと……。鈴鹿の代わりに私が江戸の防衛を務めたいのです」


 責任感の強い俊宗らしい発言だ。京の次は、江戸を守るつもりのようだ。


「それはありがたいけれど、俊宗クンの生きていた時代と比べると現れる妖怪の量も質も大したことはないんだ。今の江戸を防衛するのに平安の大英雄を投入するのは過剰戦力さ。何も考えずに、鈴鹿サンとの人生を謳歌してくれたまえ」


 俊宗は「そうですか」と納得しかけたが、私の顔を見て


「一ついいですか? 長生きしている信太師匠に聞きたいのですが、現状の私が勝てない存在はどれくらいいますか?」


 俊宗の問いに信太師匠は「あれはどうだろう?」「あいつは?」「うーん」などと思考を巡らせて納得したようだ。


「力勝負のできる相手なら、負けない。搦め手を使う相手だと勝てないというのがワタシの予想かな。どうしてそんなことを聞くんだい?」


「大嶽丸の次に誰かが立ちはだかるとしたら、負けられませんからね。でも……搦め手を使う相手とは誰を想定しているんでしょうか?」


「私の祖母である始まりの妖狐、妲己だね。あのひとは視界に入った生物に憑依して操ってしまうから見られた時点で負けだからね。もちろん本気を出したワタシにも勝てないだろうさ。結界術なんていうのは搦め手の極致みたいなものだからね。はっはっは」


 信太師匠は茶化したが以前に逃げているという敵の正体がわかった気がする。


 おそらくは今、名前を挙げた妲己という妖狐がそうなのだろう。


「……そんな信太師匠が味方でいてくれるだけでありがたいです。俊宗は自信を持ってください。ねっ」


 私は俊宗の肩をぽんぽんと叩いた。


「いやぁ。その通りだ、本物の俊宗クンはヤバイよ。長く生きてきたワタシが保証する。キミは人間が到達できた力の頂点さ」


「伸びしろがあるといいのですが……これからも大嶽丸のような脅威がないとは言い切れません。信太師匠、修行で何か心当たりはないでしょうか?」


 俊宗の上昇志向はとどまることを知らない。世のため、人のためならば、人間であることすらもやめてしまいそうな青天井な志だ。


「無いことはないが……」


 向上心の強い俊宗らしい発言だったが、今聞くのは少し嫌だった。私は信太師匠の言葉を隣にいた俊宗の袖を引っ張り、遮った。


「俊宗は私の近くにいてください。離れるのはもう嫌です」


「わっわかった。離れないぞ。近くにいる」


 俊宗は隣にいた私の手を握ると「うん」と頷いた。


 なんだか人前で手を握られるなんて少し気恥ずかしくて顔を背けてしまった。


 私を見ていた千鶴が信太師匠と顔を合わせるとこちらを見ながらニヤニヤしていた。

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