六十七話
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「信太師匠って意外と刀とか好きですよね」
「何言ってるんだい。男の子はいくつになっても刀を振って斬り合ってこそだろう!」
あまりの熱弁っぷりに私と千鶴は目が合って笑いあってしまった。
「それで信太師匠はあんなに近接戦闘が強かったんですね……」
俊宗は式神の状態ではまったく歯が立たずにぼろ負けしたことを思い出しているのか、悔しそうに呟いた。
「なぁ鈴鹿……寝すぎたみたいだし、今の内に体を慣らしておきたい。私の相手になってくれるか?」
「えぇ、もちろん。信太師匠! 結界の棒をくれますか?」
信太師匠は指を二度振ると私と俊宗の手元に結界の棒が生成された。
鈴鹿御殿の庭に私と俊宗は向き合っていた。
俊宗は腿上げをしたり、屈伸をしたりして、筋を伸ばして準備が整ったようだった。
「さぁ、千年ぶりの手合わせ始めようかっ」
「いきますよ! 俊宗」
神足通で私は間合いを詰めて棒を振るが、俊宗は棒で受けることすらせずに、足捌きだけで全て躱されてしまう。
私は一振りごとに神足通で転移しながらの攻撃していたが、俊宗の方は時々、避けきれないものを棒で受けている程度で余裕の表情だ。
(そうこの感じだ……。式神の時とは比べ物にもならない、無駄のない動き。……綺麗)
俊宗の持っている棒に触れて神足通で離れたところに転移させ、無防備になった体に棒を振り切った。
しかし俊宗に白刃取りされて押しても、引いても、びくともしなくなってしまった。
「はぁ……式神の時のようにはいきませんね。まったく嬉しい限りです。ここまでにしましょうか」
「そうだな。しかし……式神の時は本当に無様な姿を晒した。信太師匠にはもう一度ぜひとも手合わせして欲しいところだな」
「信太師匠、式神の時の俊宗のことを『拍子抜け』などと言っていましたよ」
「なんだって! それは私の名誉に関わる!」
「あぁ、鈴鹿サン! 余計なこと言わないでくれ。本物の俊宗クンが強いのはわかってるから。見ただけでわかるから!」
信太師匠が慌てる姿など、後にも先にも貴重な気がする……。
「ふふ、冗談ですよ。ね、俊宗」
「えぇ冗談です。でも信太師匠とまた、手合わせして欲しいのは本当のことです。いつか時間のある時にでもお願いします」
「ははは、ワタシとしては遠慮したいなー」
「信太師匠、逃げられませんよ。俊宗は負けず嫌いですから」
「くそう……。あたしの周りの力量が跳ね上がりすぎて話についていけねぇ」
雨宮さんの様子を見るに太白博士様は流石に人の枠に収まる技量だったのだろう。
信太師匠並みの人間がいたら、それはそれで恐ろしいのだけど。
「戻りましょうか江戸に……」
そうして千年ぶりの手合わせを終えると、私と俊宗、信太師匠に千鶴の四人は江戸の夜行寮へと神足通で戻ったのだった。




