六十四話
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でも、勝てば会える。あと少しなのだ。それなのにあまりにも壁が分厚い。
大通連か小通連のどちらかで一太刀入れればいいのだ。
相変わらず大嶽丸は顕明連を警戒せずに左腕で受けて、いくつもの浅い傷を作りながらも大通連と小通連の警戒をしていた。
その様子に私は一つの策を思いつき大嶽丸から距離をとった。
「どうした? 攻めきれずに諦めたのか?」
「…………」
「そんなわけはないだろう。鈴鹿御前、お前はしたたかな女だ。田村丸俊宗だって俺のことを殺すために利用していたんだろう? あらゆる手段で俺を殺しにくる。全てをねじ伏せて俺は勝利を証明するッ」
「えぇ、したたかでも許してください。力で負けているのですから。でも、そうですね……やはり搦め手しか思いつきません」
私は思い切り嫌味な笑顔を作りながら、地面に手を触れて意識を地中にある『土』の気に集中させた。
『土』の気を分断して、大嶽丸の足元に地割れを発生させて地中へと飲み込んだ。
大した深さではないが最速で動かせて、頭まで埋まる程度の穴でさえあればよかった。
再び『土』の気を結合すると地割れは閉じて、大嶽丸は地中に生き埋めとなった。
これで倒せるとは思っていない。一時的に視界を奪う必要があったのだ。
私は顕明連を投擲すると近くの木に突き刺した。
そして大通連を顕明連の姿に変えて手に握った。
「ウウォーーーーォ!」
大嶽丸は大声とともに岩盤をめくりあげて地面から出てきて、私は即座に神足通で間合いを詰めた。
顕明連に姿を変えた大通連と小通連で同時に攻撃を仕掛けた。
大嶽丸は小通連を刀で受けて、顕明連の姿になっている大通連を左腕で受けた。
「獲ったッ!」
「なにッ!」
左腕につけた僅かな切り傷から大通連は木の根になり一気に大嶽丸の体内に根を張っていった。
だが、大嶽丸もすぐに私の策に気付いて左腕を斬り落とし、左肩から先はなくなり鮮血が流れ落ちた。
斬り落とされた大嶽丸の左腕からは木の根が無数に突き出て無残な姿になっていた。
本当なら全身があのような姿にして仕留めるつもりだったが、大嶽丸も勘が良い。
だが、左腕を奪っただけでも大幅に有利になっただろう。
「くッ……はぁ、はぁ、大通連は通力自在の刀……姿すらも変える。顕明連に姿を変えるとは考えたな」
「今ので獲ったと思ったのですけど……流石ですね、大嶽丸。これからはあなたに二択を迫ることにしますよ」
私は木に突き刺してあった本物の顕明連を神足通で取りに戻ると、両手に顕明連を持った状態を作り上げた。
「さぁ、どっちが大通連でしょう」
私はついに大嶽丸を追い詰めた。
両手には顕明連と大通連を握り、どちらが本物か駆け引きを大嶽丸に強いている。
背後には小通連が浮いた状態で追従して、こちらで傷を受けても木の根による体内浸食を受ける。
大嶽丸は空を見上げて、呟いた。




