六十一話
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「千鶴……あとは必要なのは、あなたの同意だけです」
「鈴……あんたの師匠はやりとげられると思うか?」
「信太師匠は私よりすごい人、いや……妖狐です。空位零尾という九尾のその先に到達した偉大な妖狐なのです。千鶴が命を預ける相手として信頼できる方です。私が実力を保証します」
信太師匠は「はっはっは」と照れて笑いながらすでに結界を生成し始めていた。
千鶴は覚悟を決めたようで、私のことを真っすぐ見つめていた。
「ただ者ではないと思っていたが、九尾のその先だと……。そんな超存在、聞いたことねえ。でも、鈴が言うのなら信じるしかねぇ。お願いします」
「任せてくれたまえ。雨宮サンを必ず鈴鹿御殿に入れるようにしてみせるさ」
私はふと、懸念するべき点を思い浮かべた。それは俊宗の二の舞を踏まないために必要なことで、おそらく信太師匠にしか対策は行えない。
「そうでした。大嶽丸は俊宗の時のように、千鶴の式神を作る可能性があります。遮断力の強い結界で千鶴のことを保護してくれませんか? 千鶴の式神など出されてしまったら私はまた迷ってしまうかもしれません」
俊宗の時は近づき札を使用していたことから、縁を持つ人物の式神を作成するのは容易ではなさそうだが念のため備えておいた方がいいはずだ。
「あぁ、わかった。三明剣を使ったキミの本気なら絶対に勝てる。行ってきたまえ。そろそろ大嶽丸の奴、動き出すみたいだ」
「あたしたちのことは気にせず、しっかり勝ってこい」
私はなんて幸せ者なのだろう。
頼もしい師匠と友人に恵まれ、悲願を成就の一歩手前まできている。
何一つ欠けては、ここまで辿り着けなかっただろう。
どの世界でも私の友人でいてくれた千鶴。あなたがいなければ、私は孤独だった。
私を正しく導いてくれた信太師匠。あなたがいなければ、私は無力だった。
そして何よりも京の英雄となり、自分すら遠慮なく殺した俊宗。あなたがいなければ、私は生きる意味がなかった。
数万、数億の『わたし』の無念を晴らす。
私自身の俊宗に再会したいという願いに全てを懸ける。
二十五歳の壁を私が越えるのだ。
「ありがとうございます。信太師匠、千鶴。私……必ず勝ってきます」
二人に肩を叩かれて激励を受けて、私は神足通で大嶽丸の元へと転移した。




