六十話
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「俊宗…………ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに自ら命を絶たせてしまうなんて」
悔しさと罪悪感で、俊宗が立っていた場所を見つめていることしかできなかった。
信太師匠は私の肩に手をおいて、質問をしてきた。
「鈴鹿御殿はワタシも入ることができないのかな?」
「いいえ、信太師匠なら壁を感じることもなく入れるはずです」
信太師匠ならば、生命力や肉体的強度も申し分ない。
妖狐は入れないという私の知らない鈴鹿御殿の仕様などがなければ入れるはずだ。
俊宗以外の人物を鈴鹿御殿に入れたことがないから未知数な事柄ではある。
「なら、一度入口を通らせてくれないかな? そうすれば対策も考えようがあるさ」
私はいくら信太師匠でも今度ばかりは解決できないと諦めながらも、二人に触れて鈴鹿御殿の前へと神足通で転移してみた。
鈴鹿御殿の入口を解放すると幸いにも信太師匠は中に入ることができたようだった。
信太師匠は入口を跨いでは、戻りを繰り返しては「ふむ」と呟いて考えこんでいた。
「どうでしょうか? 何かわかりましたか?」
「キミの言う通り、この入口を通るには命としての相当な強度が必要らしいね。だから、雨宮サンが強引に通って耐えることができるような結界をワタシが作れば、いいだけの話ではないかな?」
「まさか……いくらなんでもそんなことができるのですか?」
頭の片隅で同じようなことを考えていたが、できないことだと思い込んでしまっていた。でも、信太師匠のことだ。現地を調査した結果で言っているのなら本当にやり遂げてしまうかもしれない。
「どんな場面にも柔軟に対応できるのが結界術の良いところだ。雨宮サンも興味あったら言ってくれたまえ。結界術を学びたい人はいつでも大歓迎さ」
千鶴は目を輝かせて信太師匠に熱い視線を向けていた。
あそこまで自信満々に宣言されてしまうと、本当にできてしまうのではないかと期待してしまう。
「成功する確証はどの程度ありますか?」
「雨宮サンの通行を保障するには、生成する結界の五行配分を詳細に計算しなくてはいけないみたいだね。だけど配分さえ導き出せたら雨宮サンは御殿の中に入れることができると断言させてもらおうか」
信太師匠は自信に満ちた表情でにこやかだった。
「なんだい? そんなに心配かい? 絶対に失敗しないと保証するよ。そうだね、ワタシの両親……玉藻と時貞の名に懸けて誓おう」
今、さらっと伝説の大妖怪の名前が出た気がしたが、深堀している場合ではない。




